第9回中小企業(SMB)ユーザー編|Dynamics 365+Copilot|Where we are ? ― Copilotが変える「仕事の時間」と「顧客への向き合い方」

こんばんは。室長こと、吉島良平(Microsoft MVP for Business ApplicationsMicrosoft Regional Director)です。

以前、ある中小企業を訪問したことがあります。

確か社員数は70-80名ほどでした。

営業担当者は、顧客から届いたメールを読みながら見積書を作っています。

経理担当者は、請求書を作成しながら入金状況を確認しています。

購買担当者は、在庫を見ながら発注のタイミングを考えています。

製造担当者は、必要な部材が揃っているかを確認しながら、生産計画と製造指図を見ています。

修理担当者は、受付中の修理案件を確認しながら、必要な部品や作業スケジュールを調整しています。

プロジェクト担当者は、進行中の案件を確認しながら、工数・原価・予算の消化状況を調整しています。

倉庫担当者は、出荷作業の合間に品目と数量を確認しています。

そして経営者は、売上、粗利、在庫、未回収債権、来月の資金繰りを見ています。

大企業のように、仕事ごとに専任担当者がいるわけではありません。

専任のIT部門も、システム管理者もいません。

一人が複数の役割を持ち、電話、メール、Excel、会計、販売、購買、在庫の間を行き来しています。

会社が成長すれば、見積も、受注も、請求も、問い合わせも増えます。

しかし、仕事が増えるたびに人を増やせるとは限りません。

ここで必要になるのは、単なる省力化ではありません。

限られた人数でも、顧客への回答を遅らせず、数字を正しくつなぎ、経営判断に必要な情報を見失わない仕組みです。

Dynamics 365 Business Centralは、財務・会計、販売、購買、製造、在庫、修理、プロジェクト、サービスなど、中小企業の業務を一つのERPとしてつなぎます。

CopilotとAgentは、その業務の中で、探す、入力する、照合する、分析する、下書きを作るといった時間を変え始めています。

ということで、第9回のテーマは、Dynamics 365 Business CentralにおけるCopilotと、これからのAgent活用です。


入力する時間を短く。考える時間を長く。

本シリーズは、本稿で第9回目です。

(正確にいうと、プロローグを含めると10回目です。)

第1回では、Marketingにおける顧客理解と、リード創出から顧客獲得へつながる流れを整理しました。

第2回では、Salesにおける案件管理と、商談創出から受注までの営業活動を整理しました。

第3回では、Customer Serviceにおける問い合わせ対応と、顧客満足度向上のための業務を整理しました。

第4回では、Field Serviceにおける訪問サービスと、顧客先での作業計画、スケジュール、リソース管理を整理しました。

第5回では、Project Operationsにおける人、時間、原価、収益のつながりを整理しました。

第6回では、Supply Chain ManagementとCommerceにおけるモノの流れと、在庫、調達、販売の判断を扱いました。

第7回では、それらの業務から生まれる数字をFinanceでどう締め、どう読むかを考えました。

第8回では、人事・総務における手続き、従業員体験、セキュリティとガバナンスを整理しました。

今回のBusiness Central編では、これらを中小企業という一つの会社の中で考えます。

見込み顧客を発掘し、顧客理解を深める
商談を育成し、見積から受注へつなげる
問い合わせへ対応し、顧客満足度を高める
訪問サービスや修理対応を計画する
人員、工数、原価、収益を管理する
商品、在庫、調達、物流を最適化する
売上、原価、債権、債務を会計へ反映する
売上、粗利、在庫、キャッシュフローを分析する
従業員情報、権限、セキュリティとガバナンスを維持する

中小企業では、これらの仕事を少人数で回します。

だからこそ、Copilotの価値は「人を置き換えること」ではありません。

画面を探し、情報を転記し、明細を照合し、最初の下書きを作る時間を短くすることです。

その上で、人は顧客への提案、価格判断、発注判断、与信、会計、承認、経営判断へ時間を使います。

このシリーズ「Dynamics 365+Copilot|Where we are?」は、各ロールごとにCopilot・Agentの現在地を整理する全12回のシリーズです。3層の全体像はプロローグにまとめています。

📅 本記事の情報は2026年8月17日時点のものです。GA・Previewの状態、地域、言語、ライセンス、管理者設定、利用条件は変更される可能性があります。最新状況はMicrosoft Learnおよび公式リリースノートでご確認ください。

📌 Finance and Operations(FO)との違いについて

今回扱うのは、Microsoftが中小企業向けに提供するクラウドERPであるDynamics 365 Business Centralです。財務、販売、購買、在庫、製造、サービス管理、プロジェクト管理など、中小企業の幅広い業務を一つの製品で支えるクラウドERPアプリケーションです。

エンタープライズ企業向けの製品、MicrosoftのDynamics 365 Finance and Operations appsも財務、調達、製造、倉庫、在庫、販売などを扱うクラウドERPですが、製品アーキテクチャ、導入モデル、対応する業務の複雑性、拡張方式、運用設計がBusiness Centralとは異なります。企業規模だけでなく、法人数、グローバル展開、製造・倉庫業務の複雑性、統制要件なども選択の観点となります。詳細は過去のBlogをご参照ください。

Dynamics 365 Business Central vs Finance & Operations
システム変更の下で起きていること

ERPとDataverseとの連携
帳票を制する(最終回):BC・FO・CRM アーキテクチャ総集編CRM・ERPと月次・年次決算クローズ

今回も、プロローグで提示した3層の枠組みで整理します。

※この3層は本シリーズ独自の整理であり、Microsoftが製品仕様として定義する正式な分類ではありません。

Business Centralにおける3層の枠組み
①標準Copilot
Chat with Copilot、Analysis assist、Summarize、Autofill、Sales line suggestions、Marketing text、Bank account reconciliation assistなど、Business Centralに組み込まれたAI支援機能です。人が業務を開始し、Copilotの提案、要約、分析、候補を確認して利用します。
②標準Agent
MicrosoftがBusiness Central向けに提供する業務特化型Agentです。本稿ではSales Order Agent、Payables Agent、Expense Agentを扱い、対象業務、提供状態、利用条件、人による監督を分けて確認します。
③カスタムAgent
AL、Business Central API、Copilot Studio、Power Platform、Dataverse、Microsoft 365、外部システムなどを組み合わせ、自社固有の見積フォロー、入金確認、補充レビュー、経営報告準備などをつなぐAgentです。
Business Central標準Copilot、Microsoft標準Agent、自社で設計するカスタムAgentを混同せず、提供状態、権限、データ、承認、監査を層ごとに確認します。
📖 本稿でいう「Copilot」「Agent」「製品」の整理
Copilot
人がBusiness Centralで業務を進める際のAI支援です。会話による検索、リスト分析、要約、入力候補、販売明細候補、マーケティング文、銀行照合など、利用者が開始し、提案を確認して仕事を進めます。
AI Agent
定められた目的、権限、ルール、データ、ツールに基づき、継続的に仕事を進めるAIの実行主体です。Business CentralにはSales Order Agent、Payables Agent、Expense Agentなどが案内されていますが、対象範囲、提供状態、地域、言語、設定、監督方法を機能ごとに確認します。

⚠️ CopilotとAgentの出力は、価格、在庫、納期、税、会計、承認、与信、顧客への正式回答を無条件に確定するものではありません。利用者が内容と根拠を確認し、会社のルールに従って処理します。

📌 本稿ではBusiness Central標準のCopilotとAgent、Microsoft 365側の関連ソリューション、ALやCopilot Studioで構築する拡張・カスタムAgentを分けて扱います。

📌 Business Centralは、経理担当者だけの製品ではない
営業・顧客対応

顧客、商品、価格、見積、受注、出荷、請求の流れを扱います。

購買・在庫・オペレーション

仕入先、発注、入荷、在庫、代替品、補充、原価を管理します。

財務・経営

債権、債務、銀行、元帳、予算、キャッシュフロー、経営分析を扱います。

製造・修理・プロジェクト

製造指図、部品表、生産計画、サービス管理、修理受付、プロジェクト原価、工数管理などを扱います。


Business Centralの業務フローで見る|CopilotとAgentはどこに入るか

Business Centralは、顧客からの依頼を販売、在庫、購買、出荷、請求、入金、会計へつなぐERPです。

CopilotとAgentの価値も、単独機能ではなく、この流れの中で見る必要があります。

中小企業の業務ライフサイクルとAI支援
① 問い合わせ・商品確認
Chat with Copilotで会社データのレコードを探し、Business Centralの項目や処理を確認します。品切れ時には代替品候補の提案も確認できます。
② 見積・受注
Sales line suggestionsは文章、会話、ファイルから販売明細候補を提示します。Sales Order Agentは顧客メールを起点に見積を作成し、人のレビューと顧客確認を経て受注へ進めます。
③ 調達・在庫
在庫、発注、入荷を確認し、必要な補充を判断します。代替品候補や需要予測は判断材料になりますが、発注量、納期、仕入先選定は人が確認します。
④ 出荷・請求・仕入請求
販売と購買の実績を処理します。Payables Agentは仕入先請求書の受信、抽出、発注・入荷との照合、例外の振り分け、承認準備を支援します。
⑤ 製造・修理・プロジェクト
製造指図、部品表、サービス管理、プロジェクトを確認し、人員、工数、部材、スケジュールを調整します。Copilotは情報検索や分析を支援し、進捗、原価、収益性の把握を効率化しますが、生産計画、修理判断、プロジェクト管理は人が確認します。
⑥ 入金・支払・経費・銀行・照合
売掛金、買掛金、経費、銀行取引を確認し、入金・支払処理を進めます。Bank account reconciliation assistは銀行明細と会計データの照合を支援し、未一致取引の候補を提示します。最終的な照合結果と会計処理は担当者が確認します。
⑦ 分析・経営判断
Analysis assistは自然言語からリストのグループ、ピボット、フィルター、合計を整えます。Summarizeはレコードの重要点を要約します。経営者は、その結果を材料に価格、在庫、投資、採用、資金繰りを判断します。
CopilotとAgentだけで正しい業務データが生まれるわけではない。正しいマスタ、伝票、権限、承認が、AI支援の土台になる。

前半:Business Centralの標準Copilot

画面を探す前に、会社のデータについて聞く

💬 Chat with CopilotPRP — 本番環境向けプレビュー

自然言語で会社データを検索し、対象レコードへのリンクを得たり、Business Centralの項目、ページ、処理、追加アプリについて質問したりできます。万能な経営分析や無条件の更新機能ではなく、会社データを見つけ、製品を理解し、次の操作へ進むための対話支援です。

こんな場面で:顧客、商品、伝票を探したいとき。設定や項目の意味を確認したいとき。

前提:Business Central online/Copilot & agent capabilitiesの状態/利用者の権限/地域・言語/検索対象データの品質

リストをExcelへ出す前に、分析の形を作る

📊 Analysis assistPRP — 本番環境向けプレビュー

自然言語を使い、Business Centralのリストをグループ、ピボット、フィルター、合計を持つ分析ビューへ変換します。データを別の場所へ移す前に、Business Central上で分析の切り口を作れます。

こんな場面で:顧客別売上、品目別数量、期限超過債権などを、業務担当者自身が確認したいとき。

前提:対象リストへのアクセス権/分析モードの権限/項目・日付・金額・ディメンションの品質/生成された分析条件の確認

販売明細を一行ずつ探す時間を短くする

🧾 Sales line suggestionsPRP — 本番環境向けプレビュー

短い文章、顧客との会話、アップロードしたファイルから、見積や受注へ追加する品目候補を特定します。候補をそのまま確定するのではなく、品目、数量、単位、価格、在庫、納期を確認して採用します。

こんな場面で:メールや依頼書を見ながら、見積明細を作成するとき。

【入力と採用のイメージ】 

プロンプトに「先月A社に納品した会議用チェア5脚と、それに合うデスク2台を追加」と曖昧に入力した場合でも、過去の取引履歴や品目属性を照合して適切な品番候補と単価を自動展開します。型番を完全に覚えていなくても、自然な言葉から明細の骨組みを素早く起こせます。

前提:品目マスタ、単位、価格、在庫、顧客条件の整備/候補明細を利用者が確認

レコードの重要事項を素早く把握する

📝 SummarizeGA — 正式リリース済み

顧客、仕入先、品目などのレコードに登録された情報を要約し、重要事項を短時間で把握できるよう支援します。利用者は詳細情報へ進む前に、必要なポイントを効率的に確認できます。

こんな場面で:顧客対応前に取引履歴を確認したいとき。担当者変更時に情報を短時間で引き継ぎたいとき。

前提:対象レコードへのアクセス権/元データの品質/生成結果の利用者確認

入力作業を減らし、登録時間を短くする

✍️ AutofillGA — 正式リリース済み

入力済み情報や文脈をもとに候補を提案し、登録作業を支援します。人が入力する時間を短縮しながら、一貫性のあるデータ登録を目指します。

こんな場面で:新規マスタ登録時や伝票入力時に、繰り返し入力を減らしたいとき。

前提:対象項目の設定/利用者権限/生成された候補の確認

商品説明を作る時間を短くする

📣 Marketing textGA — 正式リリース済み

品目マスタの情報をもとに、商品説明やマーケティングテキストの下書きを生成します。ECサイトやオンラインカタログ向けの商品紹介文作成を支援します。

こんな場面で:新商品登録時に商品説明文を作成したいとき。Shopifyなどと連携して商品情報を展開したいとき。 【1-0904da】

前提:品目マスタ情報の整備/生成結果のレビュー/公開前の内容確認

銀行明細と元帳を見比べる時間を短くする

🏦 Bank account reconciliation assistPreview

銀行明細取引と元帳エントリの一致候補を提示し、未一致明細には転記先候補を提案します。照合差異の理由、手数料、未記帳取引、重複、日付差などを人が確認して処理します。

こんな場面で:月次の銀行照合で、候補探しと未一致項目の整理に時間がかかるとき。

前提:銀行口座、明細、元帳、転記設定の品質/提案結果の会計担当者レビュー

代替品候補を探す時間を短くする

🔄 Item substitute suggestions
PRP — 本番環境向けプレビュー

品目説明、属性、カテゴリ、既存の品目情報をもとに、代替品として利用できる候補を提案します。在庫切れや商品入れ替え時に、類似商品を探す手間を減らしながら、利用者が最終的な代替品を判断できます。

こんな場面で:販売終了品や欠品商品の代替候補を探したいとき。類似品目を登録して、受注や購買での代替提案を行いたいとき。

前提:品目マスタ、属性、カテゴリ情報の整備/代替品候補の利用者確認/業務ルールに基づく最終判断


中盤:標準Agentは「メールからERPへ」の入口を変える

📌 2026 wave 1 / 最近のアップデート

以下のBlogをご参照ください。

Dynamics 365 Business Central 28.0
アーキテクチャ厳選アップデート

Business Central Launch Event

マイクロソフトビデオ

Sales Order Agent| Payable Agent | Expense Agent

Expense Agentと旅費法改定

リリースサイクルと最新アップデート(2026年8月)

📨 Sales Order AgentGA — 正式リリース済み

何をするか:顧客がメールで送った見積依頼を処理し、Business Centralの連絡先と依頼内容を特定し、販売見積を作成します。利用者がレビューして顧客へ送り、顧客が確認した後に見積を受注へ変換します。

重要な境界:Agentが顧客との商談、価格例外、信用判断、在庫確約、契約条件を独断で確定するものではありません。Agentの活動と作成された伝票を人が確認します。

処理フロー

① 顧客が見積依頼・注文メールを送信
② Agentがメール本文・添付ファイルを解析
③ Business Central内の取引先担当者を特定
④ 依頼された品目・数量と在庫・価格表を照合
⑤ 販売見積のドラフトを作成
⑥ 担当者が価格・納期・与信などを確認
⑦ 顧客へ返信し、確認後にSales Orderへ変換

前提:Business Central online/Agentのセットアップ/メールボックス/顧客・連絡先・品目・価格の品質/利用者権限/監督と例外処理

🧾 Payables AgentGA — 正式リリース済み

何をするか:会社のメールボックスへ届く仕入先請求書を監視し、内容を抽出し、発注書と入荷へ照合します。一致しない明細には勘定候補を提示し、例外を振り分け、承認へ向けた準備を支援します。

重要な境界:税務、会計期間、発注外請求、価格差、数量差、重複、仕入先変更などの例外は、組織の統制と承認に従って人が判断します。

処理フロー

① 仕入先または社員が請求書PDFを監視対象メールボックスへ送信・転送
② Agentがメールを検知し、受信電子ドキュメントを作成
③ PDFから請求書データを抽出
④ Business Central内の仕入先を照合・特定
⑤ 発注履歴・品目マッピング・勘定科目を参照
⑥ 購買伝票のドラフトを作成
⑦ 管理者が伝票内容・明細・金額を確認
⑧ Purchase Invoiceとして転記可能な状態へ進める

前提:Business Central online/Agentのセットアップ/仕入先・発注・入荷・勘定・税設定/承認/職務分掌/例外処理

【例外処理の挙動イメージ】

仕入先から届いたPDF請求書の金額が、BC上の発注単価と異なっていたり数量超過があった場合、Agentが勝手に処理を確定することはありません。「単価差異:+5%」といったアラートを付与した上で、担当者の確認待ちトレイへ振り分ける設計となっており、人の目による検収・承認のガバナンスを崩さずに処理を加速できます。

🧳 Expense AgentPRP — 本番環境向けプレビュー

何をするか:領収書から店舗、金額、日付、カテゴリを抽出し、会社方針を確認しながら経費報告を支援します。利用者はWebアプリ、メール、Copilotチャットなどから作業できる構成が案内されています。

重要な境界:証憑の真正性、課税区分、私費、例外承認、最終的な会計処理は会社の規程と担当者の確認が必要です。

処理フロー

① 従業員が専用Webアプリ、Outlook、Business Centralなどから領収書や経費情報を提出
② Agentがデジタル領収書、走行距離、日当などの経費情報を収集
③ 収集した情報を分類
④ 経費および経費報告のドラフトを準備
⑤ 従業員が内容を確認し、必要に応じて修正して提出
⑥ 承認者・経理担当者が会社の経費方針と承認プロセスに基づいて確認・承認

前提:利用可能地域・言語/Expense Agentの提供状態/利用チャネルの設定/経費カテゴリ・会社方針・承認フロー/利用者権限/監督と例外処理

提供状態(GA/PRP/Preview)の定義

ステータス 本番利用 意味 記事での扱い
GA 一般提供。正式リリース済み 本番利用を基本前提として説明。ただし、ロールアウト、ライセンス、容量、地域、言語、管理者設定、権限、接続など、各機能の追加条件は個別に確認
PRP Production-ready Preview。本番環境での利用を想定したプレビュー(GAではないため、変更・制限・追加条件を確認) GAと同義ではありません。仕様変更と追加使用条件を確認。本稿では、Microsoft Learnまたは公式リリース情報でPRPと確認できた機能にのみ表示
Preview 評価・検証段階 本番利用は原則慎重に判断。機能制限、Sandbox要件、地域・言語、変更可能性、追加使用条件を明記

提供状態は機能単位で確認します。同じBusiness Centralの中でも、Copilot機能とAgentでは提供状態、地域、言語、設定、権限、利用条件が異なるため、一括して同じ状態として扱いません。

各CopilotとAgentのステータスは、2026年8月23日時点のものです。提供状況は地域・バージョン・ロールアウト状況により変更される場合があります。

ここまでを一言でまとめると

Copilotは人が進める検索、入力、分析、照合を支援します。標準Agentは、メールや証憑、利用者からの入力などを起点に、定められた業務を継続的に進めます。ただし、価格、在庫、税、会計、承認、例外対応は、人の監督と会社の統制から切り離せません。


後半:Business CentralはDataverse製品ではない

Business CentralのAIをPower PlatformやCopilot Studioとつなぐ際、データの所在を正しく理解する必要があります。

⚠️ 「Business CentralのデータはDataverseにある」ではない

Business Central onlineの業務データはBusiness Central側で管理され、DataverseをコアデータストアとするCustomer Engagementアプリとは構造が異なります。Dataverseとの連携では、選択したデータを同期する方法と、Business Central APIを介して仮想テーブルとして参照・更新する方法があります。仮想テーブルではデータはDataverseへコピーされず、変更はBusiness Centralへ保存されます。Business Centralの裏側は、Azure SQL(マイクロソフト管理の為、直接アクセス負荷)です。

📌 「Business CentralとDataverse/CRMとの連携」

以下、2つの必読Blogをご紹介しておきます。

ERPとDataverseとの連携|ERPとDataverseのパスの繋ぎ方

ERPとCRMの連携|CRM×ERP×AI時代のデータ設計の原則

方式 データの扱い 設計上の注意
Business Central標準 販売、購買、在庫、財務などの業務データをBusiness Central側で管理 会社、環境、権限、拡張、API、監査をBusiness Centralの設計として確認
Dataverse同期 選択したテーブルと項目をBusiness CentralとDataverseの間で複製 方向、マッピング、結合、ジョブキュー、競合、遅延、System of Recordを決める
Dataverse仮想テーブル Business Central API経由でデータを表示・操作し、データ自体はBusiness Centralに保持 API、対応データ型、検索、添付、画像などの制限と性能を確認

Business Centralで考えやすいカスタムAgent

見積フォローAgent

期限を過ぎた見積、顧客からの返信、担当者の次アクションを整理し、人へ確認を依頼する設計例です。

入金確認Agent

期限超過債権、入金候補、顧客とのやり取りを確認し、督促対象と下書きを担当者へ提示する設計例です。

補充レビューAgent

在庫、需要、未入荷、リードタイムを確認し、発注判断が必要な品目と理由を購買担当者へ示す設計例です。

⚠️ 上記はMicrosoft標準Agentの名称ではなく、AL、Business Central API、Power Platform、Copilot Studioなどで検討するカスタム実装例です。実装可能性は、利用するデータ、API、仮想テーブル、同期、権限、ライセンス、容量、監査、承認、エラー処理によって異なります。


ライセンスと管理者設定の現実

【ライセンス・コスト面の留意点】

標準Copilot機能: 通常のBusiness Central(Essentials / Premium)クラウドライセンスの範囲内で利用可能です。

Copilot Studioによるカスタム拡張: 標準の枠を超えて独自のAgentや外部コネクタを組み込む場合は、Copilot Studio側のメッセージ消費や追加ライセンス要件が発生するため、PoC(概念実証)段階で利用頻度に応じたコスト試算を行っておくのが現実的です。

「Business Centralを契約すれば、すべてのCopilotとAgentが同じ条件で動く」ではありません

Business CentralのCopilot機能には、Business Central onlineのライセンスに含まれるものがあります。ただし、すべてのCopilot機能やAgentが同一条件で利用できるわけではありません。ただし、各機能の地域、言語、Preview、権限、追加設定、エージェント用メールボックス、データ移動、個別ライセンスや利用条件は、機能ごとに確認します。

Business Central Copilot・Agent利用条件の5つのレイヤー

Layer 1 Business Central onlineと基本ライセンス
CopilotとAgentはBusiness Central online向けです。on-premisesやprivate cloudと同一に扱いません。利用者、デバイス、チームメンバー、外部利用など、役割に応じたアクセスを確認します。

Layer 2 機能の提供状態
Chat、Analysis assist、Summarize、Autofill、販売、財務、在庫、Agentなどは、機能ごとにGA、Preview、地域、言語、ロールアウト状況が異なります。記事や提案書では、同じ提供状態として一括説明しません。

Layer 3 管理者設定と権限
管理者はCopilot & agent capabilitiesページで利用可能な機能、Active・Inactive、Preview・一般提供を確認し、機能ごとに有効・無効を制御できます。利用者には機能ごとの権限と、対象データへの通常の権限が必要です。

Layer 4 データ・統制・連携
顧客、仕入先、品目、価格、在庫、勘定、税、銀行、承認、職務分掌を整えます。Dataverseと連携する場合は、同期か仮想テーブルか、どちらをSystem of Recordとするかを決めます。

Layer 5 Agent運用と拡張
標準Agentは、メールボックス、対象会社、権限、監督、例外処理を設定します。カスタムAgentは、AL、API、Copilot Studio、Power Platform、容量、接続、監査、承認、停止方法まで設計します。

導入前に確認しておきたいチェックリスト

□ Business Central onlineを利用しているか
□ 対象機能のGA・Preview・地域・言語を個別に確認したか
□ Copilot & agent capabilitiesページでActive・Inactiveを確認したか
□ 地域をまたぐデータ移動の許可要否を確認したか
□ 利用者に機能と業務データの権限を付与したか
□ Copilot・Agentが参照・操作できるデータと、利用者・Agentの権限モデルを理解しているか
□ 顧客、仕入先、品目、価格、単位、在庫、勘定、税のマスタを整えたか
□ Sales Order Agentが作る見積を誰がレビューするか決めたか
□ Payables Agentの価格差、数量差、発注外請求、重複を誰が判断するか決めたか
□ 銀行照合の提案を会計担当者が確認する運用か
□ DataverseをBusiness Centralのコアデータストアと誤認していないか
□ Dataverse連携で同期と仮想テーブルの違いを理解しているか
□ 同期を使う場合、方向、間隔、競合、System of Recordを決めたか
□ 仮想テーブルを使う場合、APIと既知の制限を確認したか
□ Microsoft 365側のFinance solutionをBusiness Central内蔵Copilotと混同していないか
□ カスタムAgentをMicrosoft標準Agentとして説明していないか
□ Agentが参照・更新する会社、テーブル、項目、伝票を限定したか
□ Agentの承認、監査、例外、停止、再実行、エスカレーションを設計したか
□ AI出力を顧客、仕入先、経営者へ共有する前のレビュー責任者を決めたか
□ AI導入前に、受注、購買、在庫、請求、入金、会計の業務ルールを整理したか

ここまでを一言でまとめると

Business Centralでは、Copilotの前に会社の業務とデータをつなぎます。Agentの前に権限、承認、例外、監査を決めます。AIが会社を統合するのではなく、統合された業務をAIが支援します。

Dynamics 365 Business Centralの3層マッピング

① Business Central
標準Copilot

人が進める業務のAI支援

• Chat with Copilot PRP
• Analysis assist PRP
• Summarize GA
• Autofill GA
• Sales line suggestions PRP
• Marketing text GA
• Bank reconciliation assist Preview
• Item substitute suggestions PRP

業務を進める人を支援する対話型AIアシスタント

② Business Central
標準Agent

継続的な業務処理と人の監督

• Sales Order Agent GA
• Payables Agent GA
• Expense Agent PRP

定型業務を継続的に処理し、例外や判断が必要な項目を人に引き継ぐ

③ 拡張

カスタムAgent

AL+API+Power Platform+Copilot Studio

例)見積フォローAgent
例)受注確認Agent
例)入金確認Agent
例)督促支援Agent
例)補充レビューAgent
例)発注提案Agent
例)製造計画レビューAgent
例)部材不足アラートAgent
例)修理受付Agent
例)技術者アサインAgent
例)プロジェクト収益管理Agent
例)工数異常検知Agent
例)経営報告準備Agent
例)キャッシュフロー分析Agent

標準機能では対応できない業務要件を自動化し、会社独自の業務へ適用する

Business CentralにおけるAI活用は、Copilotによる業務支援から始まり、Agentによる継続的な業務処理へ進みます。さらに、自社固有の業務へ合わせてカスタムAgentを設計することで、中小企業の販売、購買、在庫、製造、サービス、プロジェクト、財務までを一つの業務基盤として最適化できます。CRMと連携するエージェントを設計する場合は、最初にこちらをご覧ください。


まとめ

Dynamics 365 Business CentralにおけるCopilotとAgent活用の現在地を整理しました。

Business Centralは、財務、販売、購買、在庫だけではありません。

製造、サービス管理、プロジェクト管理まで含め、中小企業の業務を一つの流れとして扱うERPです。

Copilotは、会社データの検索、リスト分析、要約、入力候補、販売明細候補、商品説明作成、代替品提案、銀行照合など、人が日々進める仕事を支援します。

Sales Order Agent、Payables Agent、Expense Agentは、メールや証憑から始まる反復業務を継続的に進めます。

しかし、Agentが価格、在庫、与信、税、会計、承認、経営判断を無条件に確定するわけではありません。

また、Business CentralはDataverseをコアデータストアとする製品ではありません。

Power Platformと連携する場合は、同期、仮想テーブル、API、System of Recordを正しく設計します。

少人数の会社ほど、一人が抱える確認、入力、照合、連絡の範囲は広くなります。

💬 一つ聞いてもいいですか?

あなたの会社では、売上を増やすために人を増やしていますか。

それとも、人を増やさなくても成長できる業務の仕組みを作っていますか?

大企業は、人が多いからERPが必要なのではありません。

中小企業は、人が少ないからこそ、一度入力した情報を販売、購買、在庫、会計へつなぐ仕組みが必要です。

Copilotが短くできるのは、画面を探し、見積を作り、商品説明を作り、代替品を探し、データを分析し、照合候補を探し、最初の下書きを作る時間です。

Agentが支援できるのは、決められた範囲の仕事を継続し、例外を人へ戻し、次に確認すべきことを整理することです。

顧客へ何を提案するか。

どの商品を仕入れるか。

何を製造するか。

どの案件へ人を投入するか。

どのサービスを提供するか。

どこへ投資するか。

会社をどう成長させるか。

その判断は、これからも人が担います。

でも、人を増やさなくても成長できる仕組みを作る事はできます。

Business CentralとCopilot、そしてAgentは、その仕組みを支える新しい道具になりつつあります。

中小企業で働く皆さん、Let’s Enjoy our DX365LIFE!

次回は第10回です。

これまで見てきた業務データを、経営者はどのように読み、どう意思決定につなげるのでしょうか。

経営・マネジメント層におけるCopilotとAgentの現在地を整理します。

dx365jp
  • dx365jp
  • 25年ほど、Microsoft Dynamics 365 【ERP(NAV/AX)+CRM】の導入コンサルティングに従事し、日本を含む34か国において導入コンサルティングを経験してきました。グローバル環境における“プロジェクト”と“マーケティング”を生業としております。

    最近は、【CRM/MKTG(攻めのDX)⇔ ERP(守りのDX)】+【ローコード】というDX365な活動に奮闘中です。Microsoft Dynamics 365 ビジネスで地球を92周中です。#DX365 #DynamicsIoT

    Microsoftの運営する外部技術者グローバル組織「Microsoft MVP(*日本163名/世界3674名)・ Microsoftのトラスティッドアドバイザーである「Microsoft Regional Director (*日本4名/世界167名)」として、複数のITコミュニティーにて活動中。(*2026/08/08時点)

    プロフィールはこちら→bit.ly/Dynamics365JP