プロローグ|Dynamics 365+Copilot|Where we are ? ― Copilotが変える「仕事の時間」と「顧客への向き合い方」

こんばんは。室長こと、吉島良平(Microsoft MVP for Business Applications | Microsoft Regional Director)です。

夏の甲子園、今年も熱い戦いが続いていますね。

今日は準々決勝を前にした休養日。

8校が明日に向けて英気を養っているはずです。

この時期は、【熱闘甲子園】の放送が夜の楽しみになります。最高(^^♪

それぞれにドラマがあったはずで、あのシーンがどう切り取られるのか。

勝ったチームも、負けたチームも、一球一球積み上げてきたものがあります。

それを編集の力で凝縮してくれます。もう何年経っても、この時間だけは特別です。

最近はTVerで見逃しても追いかけられるのがいいですよね。

2026年 夏の甲子園
準々決勝トーナメント
ベスト8、明日へ
天 理
奈良
vs
三 重
三重
仙台育英
宮城
vs
智辯和歌山
和歌山
準決勝
進出
花 巻 東
岩手
vs
横 浜
神奈川
健大高崎
群馬
vs
有 明
熊本
全国から勝ち上がった8校に、精一杯のエールを。

47都道府県の代表として夏を戦い抜いてきた8校。今日は束の間の休息を。明日の準々決勝、精一杯戦ってほしいですね!


昔にはなかった「休養日」が、大会の中に設けられるようになりました。

球児たちへの配慮、そして運営側の働き方改革。時代は確実に変わっています。

思い出すのは、ひと昔前の昼休みのことです。

「甲子園を見たい」と仲間と連れ立って、テレビの置いてある定食屋に入りました。

席を確保して、注文して、試合が終わるまで居座る。それが「甲子園を見る」ということでした。

今はどうでしょうか。

移動しながら、休憩時間にスマートフォンでサッと確認できます。バーチャル高校野球があります。

手すきな時間を、自分のペースで使えます。見る側の「仕事の時間」も、気づけば変わっていました。

では、ビジネスの現場はどうでしょう。


なぜ今、このシリーズを書くのか

最近、こんな問いをよく耳にします。

「Dynamics 365にCopilotがついてきたのはわかった。でも、AgentってCopilotと何が違うの?」
「ライセンスを買えば、すぐ使えるの?」
「Agentを作るには、開発チームが必要?」

同じような問いが、現場の担当者からも、経営層からも、同時に飛んできます。

それが今の現実です。

標準でできること、標準Agentでできること、そして自社で作るAgentでできること。

この3つの境界線が見えていないと、投資判断も、社内への説明も、難しいまま進んでしまいます。

このシリーズでは、その問いに正面から答えます。


「顧客」の定義

ここで、このシリーズで使う「顧客」という言葉を定義しておきます。

「顧客」というと、社外のお客様だけを思い浮かべる方も多いかもしれません。

しかしこのシリーズでは、社内の別部門も「顧客」と捉えます。

営業部門にとっての顧客は社外のお客様ですが、人事部門にとっての顧客は社内の従業員です。

財務部門にとっての顧客は、経営層であり、各事業部門でもあります。

この視点を持つことで、Copilotがもたらす価値の広がりが、より鮮明に見えてきます。


3層の枠組み

本シリーズを通じて使う3層の枠組みを整理します。

※この「3層」は本シリーズ独自の整理です。Microsoftが製品仕様として定義している正式な分類ではありません。利用者が「標準機能・Microsoft提供Agent・自社開発Agent」の違いを理解しやすくするために用いています。

Dynamics 365 + Copilot|3層の枠組み
① 標準Copilot
MicrosoftがDynamics 365各アプリに提供する標準AI機能です。基本的に追加開発なしで利用できますが、機能によって必要なライセンス、容量、設定、前提条件、地域・言語などが異なります。
↓
② 標準Agent
Microsoftが提供する業務特化型のAgentです。特定業務を支援・自動化します。利用には、対象機能に応じたライセンス、容量、権限、環境設定などの前提条件があります。
↓
③ カスタムAgent
Copilot Studioなどを利用して、自社固有の業務・ルール・データに合わせて構築するAgentです。標準機能では対応しにくい業務を対象にします。
①と②はMicrosoftが提供する標準機能として利用できます。③では、自社固有の業務要件に合わせてAgentを設計できます。
💡 よくある誤解:「ライセンスを買えば、すぐ使える?」

①標準Copilotは「すぐ使える」印象がありますが、実際には機能によって対象ライセンス・Copilot Studio容量・Copilot Credits・Pay-as-you-goなど、必要な条件が異なります。例えばDynamics 365 Salesでは消費量ベースの課金があり、Copilot Studioのcapacityが不足するとAI機能が利用できなくなります。

②標準Agentはさらに複雑です。ライセンスだけでなく、以下が絡み合います。

ライセンス / Copilot Credits / capacity / 管理者による有効化 / 権限・データ・接続
メールボックス・App User / Entra ID・DLP / 地域・言語・Preview条件

例えばSales Close Agentを有効にするには、Microsoft Entraのアプリ登録、Dataverse Application User、共有メールボックス、Server-side synchronizationなどが前提になります。また、Journey Creation Agentでは外部AIモデルの利用に対する組織オプトインや、AI Hubの設定が必要です。本シリーズの各回では、こうした「使うために何が必要か」にも触れていきます。


シリーズ全12回 ロードマップ

本シリーズは、全12回でお届けします。

📅 本表の情報は 2026年8月17日時点 のものです。随時更新します。

テーマ このシリーズで問うこと
プロローグ 総論 「仕事の時間」と「顧客への向き合い方」を変える3層の枠組み
第1回 マーケティング 顧客に届く前の時間を、どう変えるか
第2回 営業 顧客と向き合う時間を、どう増やすか
第3回 カスタマーサービス 顧客の声に、もっと早く、もっと深く応える
第4回 フィールドサービス 現場で顧客と向き合う時間を守る
第5回 プロジェクトオペレーション プロジェクトの時間を、価値ある仕事に使う
第6回 SCM・購買・製造 判断の時間を減らし、動く時間を増やす
第7回 財務・経理 締める時間を短く。読む時間を長く。
第8回 人事総務 手続きの時間を減らし、人と向き合う時間を増やす
第9回 SMB(中小企業)ユーザー 少ない人数で、顧客と深く向き合うために
第10回 経営者・意思決定者 数字の時間を減らし、判断の質を上げ、次の一手を打つ
エピローグ まとめ 「仕事の時間」と「顧客への向き合い方」が変わった先に

続いて、各回で取り上げるDynamics 365アプリと、標準Copilot・標準Agentのマッピングをご覧ください。

本シリーズでは、このマッピングをもとに、ロール別に解説していきます。

ロール D365アプリ 標準Copilot(主な機能) 標準Agent
プロローグ 総論 — — —
第1回 マーケティング Customer Insights – Journeys / Data CI-J: セグメント作成(Query Assist)・メール作成(Content Ideas)・コンテンツ改善(Content Rewrite)
CI-D: Dialog with Data・Segment Creation with Copilot
Journey Creation Preview
Outreach Optimization Preview
第2回 営業 Sales レコードサマリー、メール支援、ミーティング準備 販売資格審査 GA
営業機会 PRP
営業クロージング PRP
セールスリサーチ PRP
推奨アクション Preview
第3回 カスタマーサービス Customer Service / Contact Center ケースサマリー、会話サマリー、メール下書き ケース管理 GA
顧客ナレッジ管理 GA
品質評価 GA
カスタマーインテント GA
音声対応インテント Preview
第4回 フィールドサービス Field Service 作業指示作成・サマリー、自然言語クエリ スケジュール操作 Preview
第5回 プロジェクトオペレーション Project Operations 時間入力支援、WBS生成 タイムエントリ PRP
Expense PRP
承認 PRP
第6回 SCM・購買・製造 Supply Chain Management + Commerce 需要計画、AIサマリー、倉庫管理インサイト サプライヤーコミュニケーション Preview
第7回 財務・経理 Finance 入金督促サマリー、顧客ページサマリー、ワークフロー履歴 アカウント調整 PRP
第8回 人事総務 Human Resources 従業員セルフサービス支援、人事問い合わせ支援、ナレッジ検索 Onboarding Preview
第9回 SMB(中小企業)ユーザー Business Central + Shopify マーケティングテキスト、銀行照合、売上伝票提案 販売注文 GA
買掛金 GA
Expense PRP
第10回 経営者・意思決定者 Finance / 全アプリ横断 財務インサイト、ダッシュボード分析 —
エピローグ まとめ — — —

※ 本表は2026年8月17日時点の状況です。Preview / GA の状態、提供地域・言語は変更される可能性があります。最新状況はMicrosoft Learnをご確認ください。
GA = Generally Available(正式リリース済み) PRP = Production-ready Preview(本番環境向けプレビュー) Preview = Public Preview(パブリックプレビュー)
特に営業は5つの標準Agentが提供されており、現時点でAgent機能の展開が最も多いロールの一つです。


関連シリーズ

本シリーズと合わせてお読みいただくと、理解がより深まります。

Agentic Engineering × Dynamics 365

Dynamics 365 帳票シリーズ

Dynamics 365 デザインパターン


まとめ

このシリーズを書こうと思ったのは、シンプルな動機からです。

「標準でできることと、Agentでできることの境界線が見えない」という声が、周りで増えていました。

現場の担当者も、管理職も、経営者も、同じ霧の中にいる。その霧を、少しでも晴らしたい。

上申書を書く人が書きやすくなる、投資判断をする人が判断しやすくなる、現場で使う人が使いやすくなります。

そのきっかけになれれば、このシリーズには十分な価値があると思っています。

振り返ると、Agentic Engineering、帳票、デザインパターン、そしてデータ基盤とAIの現在地と、いくつかのシリーズを書いてきました。

書くたびに思うのは、技術は確実に前に進んでいるということです。

そしてもう一つ、Wave 2がやってきます。

新しい機能が積み上がる前に、今の「現在地」をしっかり書き残しておく。

それがこのシリーズを今書く理由でもあります。

読み方は自由です。現場の営業担当者であれば第2回目を、カスタマーサービスの方であれば第3回だけを読んでいただいて構いません。

経営層の方であれば10回目を見るのも選択肢です。

単独でも、連続でどこから読み始めても、このシリーズの問いは一貫しています。

あなたの会社の①②③は、どこまで進んでいますか?

①は使えているか。②を知っているか。③を考えたことがあるか。この3つの問いを、ロールごとに具体的に解いていきます。

甲子園の球児たちは、明日また試合に臨みます。

休養日を経て、また前へ。ビジネスの現場も同じです。

変化に向き合いながら、自分たちのペースで前へ進む。

このシリーズが、その一球を受け止めるミットになれば幸いです。

次回、第1回 マーケティング編でお会いしましょう!

Let’s Enjoy our DX365LIFE!

dx365jp
  • dx365jp
  • 25年ほど、Microsoft Dynamics 365 【ERP(NAV/AX)+CRM】の導入コンサルティングに従事し、日本を含む34か国において導入コンサルティングを経験してきました。グローバル環境における“プロジェクト”と“マーケティング”を生業としております。

    最近は、【CRM/MKTG(攻めのDX)⇔ ERP(守りのDX)】+【ローコード】というDX365な活動に奮闘中です。Microsoft Dynamics 365 ビジネスで地球を92周中です。#DX365 #DynamicsIoT

    Microsoftの運営する外部技術者グローバル組織「Microsoft MVP(*日本163名/世界3674名)・ Microsoftのトラスティッドアドバイザーである「Microsoft Regional Director (*日本4名/世界167名)」として、複数のITコミュニティーにて活動中。(*2026/08/08時点)

    プロフィールはこちら→bit.ly/Dynamics365JP