プロローグ|Dynamics 365+Copilot|Where we are ? ― Copilotが変える「仕事の時間」と「顧客への向き合い方」

こんばんは。室長こと、吉島良平(Microsoft MVP for Business Applications | Microsoft Regional Director)です。
夏の甲子園、今年も熱い戦いが続いていますね。
今日は準々決勝を前にした休養日。
8校が明日に向けて英気を養っているはずです。
この時期は、【熱闘甲子園】の放送が夜の楽しみになります。最高(^^♪
それぞれにドラマがあったはずで、あのシーンがどう切り取られるのか。
勝ったチームも、負けたチームも、一球一球積み上げてきたものがあります。
それを編集の力で凝縮してくれます。もう何年経っても、この時間だけは特別です。
最近はTVerで見逃しても追いかけられるのがいいですよね。
進出
47都道府県の代表として夏を戦い抜いてきた8校。今日は束の間の休息を。明日の準々決勝、精一杯戦ってほしいですね!
昔にはなかった「休養日」が、大会の中に設けられるようになりました。
球児たちへの配慮、そして運営側の働き方改革。時代は確実に変わっています。
思い出すのは、ひと昔前の昼休みのことです。
「甲子園を見たい」と仲間と連れ立って、テレビの置いてある定食屋に入りました。
席を確保して、注文して、試合が終わるまで居座る。それが「甲子園を見る」ということでした。
今はどうでしょうか。
移動しながら、休憩時間にスマートフォンでサッと確認できます。バーチャル高校野球があります。
手すきな時間を、自分のペースで使えます。見る側の「仕事の時間」も、気づけば変わっていました。
では、ビジネスの現場はどうでしょう。
なぜ今、このシリーズを書くのか
最近、こんな問いをよく耳にします。
「ライセンスを買えば、すぐ使えるの?」
「Agentを作るには、開発チームが必要?」
同じような問いが、現場の担当者からも、経営層からも、同時に飛んできます。
それが今の現実です。
標準でできること、標準Agentでできること、そして自社で作るAgentでできること。
この3つの境界線が見えていないと、投資判断も、社内への説明も、難しいまま進んでしまいます。
このシリーズでは、その問いに正面から答えます。
「顧客」の定義
ここで、このシリーズで使う「顧客」という言葉を定義しておきます。
「顧客」というと、社外のお客様だけを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかしこのシリーズでは、社内の別部門も「顧客」と捉えます。
営業部門にとっての顧客は社外のお客様ですが、人事部門にとっての顧客は社内の従業員です。
財務部門にとっての顧客は、経営層であり、各事業部門でもあります。
この視点を持つことで、Copilotがもたらす価値の広がりが、より鮮明に見えてきます。
3層の枠組み
本シリーズを通じて使う3層の枠組みを整理します。
※この「3層」は本シリーズ独自の整理です。Microsoftが製品仕様として定義している正式な分類ではありません。利用者が「標準機能・Microsoft提供Agent・自社開発Agent」の違いを理解しやすくするために用いています。
①標準Copilotは「すぐ使える」印象がありますが、実際には機能によって対象ライセンス・Copilot Studio容量・Copilot Credits・Pay-as-you-goなど、必要な条件が異なります。例えばDynamics 365 Salesでは消費量ベースの課金があり、Copilot Studioのcapacityが不足するとAI機能が利用できなくなります。
②標準Agentはさらに複雑です。ライセンスだけでなく、以下が絡み合います。
メールボックス・App User / Entra ID・DLP / 地域・言語・Preview条件
例えばSales Close Agentを有効にするには、Microsoft Entraのアプリ登録、Dataverse Application User、共有メールボックス、Server-side synchronizationなどが前提になります。また、Journey Creation Agentでは外部AIモデルの利用に対する組織オプトインや、AI Hubの設定が必要です。本シリーズの各回では、こうした「使うために何が必要か」にも触れていきます。
シリーズ全12回 ロードマップ
本シリーズは、全12回でお届けします。
📅 本表の情報は 2026年8月17日時点 のものです。随時更新します。
| テーマ | このシリーズで問うこと | |
|---|---|---|
| プロローグ | 総論 | 「仕事の時間」と「顧客への向き合い方」を変える3層の枠組み |
| 第1回 | マーケティング | 顧客に届く前の時間を、どう変えるか |
| 第2回 | 営業 | 顧客と向き合う時間を、どう増やすか |
| 第3回 | カスタマーサービス | 顧客の声に、もっと早く、もっと深く応える |
| 第4回 | フィールドサービス | 現場で顧客と向き合う時間を守る |
| 第5回 | プロジェクトオペレーション | プロジェクトの時間を、価値ある仕事に使う |
| 第6回 | SCM・購買・製造 | 判断の時間を減らし、動く時間を増やす |
| 第7回 | 財務・経理 | 締める時間を短く。読む時間を長く。 |
| 第8回 | 人事総務 | 手続きの時間を減らし、人と向き合う時間を増やす |
| 第9回 | SMB(中小企業)ユーザー | 少ない人数で、顧客と深く向き合うために |
| 第10回 | 経営者・意思決定者 | 数字の時間を減らし、判断の質を上げ、次の一手を打つ |
| エピローグ | まとめ | 「仕事の時間」と「顧客への向き合い方」が変わった先に |
続いて、各回で取り上げるDynamics 365アプリと、標準Copilot・標準Agentのマッピングをご覧ください。
本シリーズでは、このマッピングをもとに、ロール別に解説していきます。
| ロール | D365アプリ | 標準Copilot(主な機能) | 標準Agent | |
|---|---|---|---|---|
| プロローグ | 総論 | — | — | — |
| 第1回 | マーケティング | Customer Insights – Journeys / Data | CI-J: セグメント作成(Query Assist)・メール作成(Content Ideas)・コンテンツ改善(Content Rewrite) CI-D: Dialog with Data・Segment Creation with Copilot |
Journey Creation Preview Outreach Optimization Preview |
| 第2回 | 営業 | Sales | レコードサマリー、メール支援、ミーティング準備 | 販売資格審査 GA 営業機会 PRP 営業クロージング PRP セールスリサーチ PRP 推奨アクション Preview |
| 第3回 | カスタマーサービス | Customer Service / Contact Center | ケースサマリー、会話サマリー、メール下書き | ケース管理 GA 顧客ナレッジ管理 GA 品質評価 GA カスタマーインテント GA 音声対応インテント Preview |
| 第4回 | フィールドサービス | Field Service | 作業指示作成・サマリー、自然言語クエリ | スケジュール操作 Preview |
| 第5回 | プロジェクトオペレーション | Project Operations | 時間入力支援、WBS生成 | タイムエントリ PRP Expense PRP 承認 PRP |
| 第6回 | SCM・購買・製造 | Supply Chain Management + Commerce | 需要計画、AIサマリー、倉庫管理インサイト | サプライヤーコミュニケーション Preview |
| 第7回 | 財務・経理 | Finance | 入金督促サマリー、顧客ページサマリー、ワークフロー履歴 | アカウント調整 PRP |
| 第8回 | 人事総務 | Human Resources | 従業員セルフサービス支援、人事問い合わせ支援、ナレッジ検索 | Onboarding Preview |
| 第9回 | SMB(中小企業)ユーザー | Business Central + Shopify | マーケティングテキスト、銀行照合、売上伝票提案 | 販売注文 GA 買掛金 GA Expense PRP |
| 第10回 | 経営者・意思決定者 | Finance / 全アプリ横断 | 財務インサイト、ダッシュボード分析 | — |
| エピローグ | まとめ | — | — | — |
※ 本表は2026年8月17日時点の状況です。Preview / GA の状態、提供地域・言語は変更される可能性があります。最新状況はMicrosoft Learnをご確認ください。
GA = Generally Available(正式リリース済み) PRP = Production-ready Preview(本番環境向けプレビュー) Preview = Public Preview(パブリックプレビュー)
特に営業は5つの標準Agentが提供されており、現時点でAgent機能の展開が最も多いロールの一つです。
関連シリーズ
本シリーズと合わせてお読みいただくと、理解がより深まります。
Agentic Engineering × Dynamics 365
- プロローグ|企業ソフトウェアが「考えて動く」時代へ
- 第1回|Agentic Engineeringとは何か—「作る対象」から「統率する存在」へ
- 第2回|どこに人間を置くか—Human-in-the-Loopの設計原則
- 第3回|エージェントはデータをどう使うか—CRMとERPのデータモデル
- 第4回|エージェントを組み立てる—Copilot Studioで何ができて何ができないか
- 第5回|エージェントを信頼できるか—ログ・監査・コンプライアンスの設計
- 第6回|CRMとERPをまたぐエージェント—統合設計の全体像
- 最終回|これからのDynamics 365エンジニアに何が求められるか
- エピローグ|「Agentic Engineering」×「Dynamics 365」
Dynamics 365 帳票シリーズ
- 第1回|帳票とレポートの間に—Dynamics 365が問う「ドキュメント」の定義
- 第2回|Business Central編—RDLC・Word・Excel・Power BI、選択と実装の要点
- 第3回|Finance & Operations編—SSRS・ER・Financial Reporting、グローバル帳票設計の要点
- 第4回|CRM編—Wordテンプレート・Power Automate・SharePoint、顧客ドキュメント設計
- 最終回|BC・FO・CRM横断—アーキテクチャとSoR、AI時代の帳票設計
Dynamics 365 デザインパターン
まとめ
このシリーズを書こうと思ったのは、シンプルな動機からです。
「標準でできることと、Agentでできることの境界線が見えない」という声が、周りで増えていました。
現場の担当者も、管理職も、経営者も、同じ霧の中にいる。その霧を、少しでも晴らしたい。
上申書を書く人が書きやすくなる、投資判断をする人が判断しやすくなる、現場で使う人が使いやすくなります。
そのきっかけになれれば、このシリーズには十分な価値があると思っています。
振り返ると、Agentic Engineering、帳票、デザインパターン、そしてデータ基盤とAIの現在地と、いくつかのシリーズを書いてきました。
書くたびに思うのは、技術は確実に前に進んでいるということです。
そしてもう一つ、Wave 2がやってきます。
新しい機能が積み上がる前に、今の「現在地」をしっかり書き残しておく。
それがこのシリーズを今書く理由でもあります。
読み方は自由です。現場の営業担当者であれば第2回目を、カスタマーサービスの方であれば第3回だけを読んでいただいて構いません。
経営層の方であれば10回目を見るのも選択肢です。
単独でも、連続でどこから読み始めても、このシリーズの問いは一貫しています。
①は使えているか。②を知っているか。③を考えたことがあるか。この3つの問いを、ロールごとに具体的に解いていきます。
甲子園の球児たちは、明日また試合に臨みます。
休養日を経て、また前へ。ビジネスの現場も同じです。
変化に向き合いながら、自分たちのペースで前へ進む。
このシリーズが、その一球を受け止めるミットになれば幸いです。
次回、第1回 マーケティング編でお会いしましょう!
Let’s Enjoy our DX365LIFE!
