Tokyo Motorcycle Show 2026

こんにちは。皆さま、いかがお過ごしでしょうか? “室長”こと、吉島良平(Microsoft MVP for Business Applications|Microsoft Regional Director)です。
皆さんは、ご家族やご友人と、今年の桜(🌸)を楽しむことはできましたか? 私は先ほど浅草の隅田川の畔を歩いていたのですが、満開シーズンは、既に終わっていたように感じました。東京の桜は、もう終わりでしょうか。なんだか、とても、残念です。来年リベンジかな。
先週、Microsoft MVP/RD Global Summitが終わりました。
私はビジネスアプリケーション領域カテゴリーで、アワードをいただいているので、Dynamics 365(CRM/ERP)のセッションに深夜にLiveでセッションに参加したり、セッションの録画を視聴したりして、現地で参加している海外のMVPと共に、マイクロソフトの製品開発チームから、今後の展開について学び、フィードバックをする時間を楽しむ事ができました。
事前に、2026 wave 1について、学習をしていたこともあり、英語によるセッションではありますが、概ね理解できたと思っています。予習は大切だなぁと改めて感じました。
- Dynamics 365 2026 wave 1 – Deprecations
- Dynamics 365 2026 wave 1 – Business Central
- Dynamics 365 2026 wave 1 – SCM
- Dynamics 365 2026 wave 1 – Finance
- Dynamics 365 2026 wave 1 – Project Operations
- Dynamics 365 2026 wave 1 – Commerce
- Dynamics 365 2026 wave 1 – Human Resources
- Dynamics 365 2026 wave 1 – Sales
- Dynamics 365 2026 wave 1 – Customer Service
- Dynamics 365 2026 wave 1 – Contact Center
- Dynamics 365 2026 wave 1 – Field Service
- Dynamics 365 2026 wave 1 – Customer Insight – Journeys
- Dynamics 365 2026 wave 1 – Customer Insight – Data
- Dynamics 365 2026 wave 1 – 総集編
「Microsoft Regional Director Global Summit」は、残念ながらLive参加できず、録画を見て、自分のフィードバックを残しました。
「Microsoft AI Tour Tokyo」(3月24日|東京ビックサイト)も終わり、室長のキーノート纏めもアクセスが徐々に増えてきています。まだご覧いただいていない方は、是非お時間があるときにご覧ください。
4月8日には、「Microsoft AI Tour for Partners」が日本で開催されますので、ワークショップに参加する予定です。
そして、各種のイベントと現場での学びの中から、NDAに抵触しない、公開できる範囲で、5月13日‐15日にベトナムホーチミンで開催されるDirections Asia 2026にて今年もセッションを担当するつもりです。
Directions Asiaでは、以下のような内容のセッションをお届けしましたが、
今年は、AIのデモンストレーションを取り入れつつ、参加者の皆さまと『AI時代におけるパートナーの価値』について、一緒に考えていく時間としたいと思っています。

面白いものをお見せできるように準備しますので、是非会場でお会いしましょう!
さて、本稿では、この時期恒例となってきた「東京モーターサイクルショー」について、展示会場で室長が感じた事を、徒然なるままに勝手な解釈で書いていきたいと思っています。
東京モーターサイクルショー2026から読み解く、OEMビジネスとDXの設計思想
―製品展示の裏に見えた業務課題と次の当たり前―

2026年3月29日(日曜日)の午後、東京ビッグサイトで開催された第53回東京モーターサイクルショーに参加してきました。本イベントは1971年から続く、日本国内最大級のモーターサイクル総合展示会であり、完成車メーカーをはじめ、パーツ・用品、アパレル、サービス事業者まで、二輪業界を構成するプレイヤーが一堂に会する、極めて重要なリアルイベントです。
第53回では、3日間で延べ118,812人が来場し、出展者数・展示規模ともに過去最大級を記録しました。昨年度同様、会場構成や出展規模はほぼ同等水準で設計されており、東京モーターサイクルショーが引き続き二輪業界における最大級のリアルな接点であることは間違いありません。メーカーにとっては新型モデルの発表の場であると同時に、自社の方向性や思想を業界全体に示す、数少ない機会でもあります。
今年のメインテーマは「いいね、バイク」、サブテーマは「『好き』を極めろ!」。会場全体を通して感じたのは、「新型モデルを見せる場」から、「バイクのあるライフスタイルをどう伝えるか」という場へ、明確に軸足が移ってきているという点でした。展示は西1から4ホールに加え、アトリウムや屋外展示場までをフル活用。最新モデルやコンセプト車両だけでなく、またがり体験、ステージイベント、体験型コンテンツが随所に配置され、「見て終わり」ではなく、「体験して理解する」構成が強く意識されていました。
ただし、今回のショーを通してより強く印象に残ったのは、派手な未来像や最先端技術のアピールそのものではありませんでした。いわゆる“AI”や“デジタル変革”といった言葉を前面に押し出す展示は主役ではなく、むしろ各OEMブースでは、「今、何を売りたいのか」「どの顧客層に届けたいのか」「どんな楽しみ方を提案したいのか」といった、極めて現実的でビジネス寄りのメッセージが丁寧に整理されていたように感じます。これは決して業界が保守的だという話ではありません。モーターサイクルという商材の特性上、まずは体験と共感が先にあり、その上に技術やデジタルが重なっていく。その順番を、各OEMが非常に意識していることが、展示全体から伝わってきました。
だからこそ、今あらためて東京モーターサイクルショーを見る意味があります。本イベントは単なる新製品発表の場ではなく、「各OEMがどこに力を入れているのか」「何に悩み、何を突破口にしようとしているのか」「どんな顧客像を描いているのか」といった、業界全体の思考や設計思想の現在地が、非常に分かりやすく可視化される場でもあります。
今回の展示を俯瞰して見えてきたのは、「やりたいこと」と「できていること」の間に、まだ大きなギャップが存在しているという事実でした。そしてそのギャップは、製品企画やマーケティングの話にとどまらず、販売、アフターセールス、D2C、製造、物流、会計といった、OEMの業務全体に共通する課題へとつながっていきます。
本記事では、東京モーターサイクルショー2026を起点に、各OEMの展示から見えてきたビジネスの現在地を整理し、その裏側にある業務課題、さらにDXという文脈で読み取れる設計思想について掘り下げていきます。まずは、各OEMのブースから見ていきましょう。
Honda|次の当たり前を静かに、しかし確実に見せてくる
Hondaブースは、入った瞬間に「次の標準はここに置く」という意思がすっと伝わってくる構成でした。ブーステーマとして掲げられているNext Stageは、派手な未来像ではなく、まず操作系の体験を変えるところから始める、というメッセージに見えます。中心で存在感が大きいのは、CB400SUPERFOURE-ClutchConceptとCBR400RE-ClutchConceptです。どちらも「クラッチレバー操作なしで発進・変速・停止を可能にするHondaE-Clutch」を軸に据えた提案として整理されており、説明を聞いてから跨る、という流れが自然に生まれます。
少し視線を広げると、V3R900E-CompressorPrototypeが置かれていて、操作系だけでなくパワーユニットの未来まで同じ空間で語られているのが面白いところです。さらにHondaWN7のような電動ネイキッドの提案も並び、「近未来」を現実の延長線に置いて見せる構成になっていました。個人的に「らしさ」を感じたのは、尖った試作車だけで終わらず、CB1000GTやXL750TRANSALPE-Clutch、Rebel250SEditionE-Clutchなど、実際のバイクライフに接続しやすいモデルまで同居していた点です。
「次はこうなる」を提示しつつ、「今の選び方」も同時に用意する。Hondaが得意とする現実への落とし込みが、展示の並べ方からも伝わってきました。
Yamaha|どのモデルかよりどう楽しむかが先に立ち上がる
ヤマハブースは、ブーステーマの「ヤマハで楽しもう」がそのまま導線になっていて、モデルの比較より先に「自分ならどう使うか」を考えやすい空間でした。例えばMT-09Y-AMTは、単に新機構を強調するのではなく、体験コーナーと合わせて操作の変化を想像させる置き方がされていました。同じY-AMTの文脈ではTRACER9GT+Y-AMTも並び、スポーツだけでなく長距離の快適さにまで思想が伸びていることを、説明より先に空間が語ってくれます。
一方でヤマハらしさを一番強く感じたのは、XSR900GPやXSR900の並びでした。色やキャラクターで魅せるのが上手く、眺めているだけで「これで走ると気持ちよさそう」と思わせる。展示がカタログではなく、体験の予告編になっている感じです。さらにXSR155のような手の届くサイズ感のモデルもピックアップされていて、憧れの世界観を現実側へ引き寄せてくれる役割を担っていました。
技術・デザイン・ライフスタイルが一体で見えるから、ファンはもちろん、これから乗り始める人にも優しい。そういう温度感が残るブースでした。
Kawasaki|バイクではなくカワサキという選択を見せてくる
カワサキブースは「乗るカワサキ」「着るカワサキ」をテーマに、車両とアパレルを一体で体感させる構成になっています。ここがまず、単なる展示ではなくブランド空間として強い理由だと思います。
中心で存在感が大きいのは、やはりZ900RSとZ1100SE。Z900RSは2026年型で電子制御スロットルや6軸IMU採用などの改良が語られており、外観のらしさを残したまま中身をアップデートする方向性が分かりやすい。Z1100SEも同様に電子制御や安全性を強化しつつ、SUGOMIデザインで押し出すキャラクターが明確です。
スポーツ側の文脈ではNinjaZX-10Rがフォトスポット的に扱われ、並んででも跨りたいモデルとして見せ場を作っていました。そしてNinja500のように話題性の高いモデルも配置され、ブース全体の熱量を上げています。
さらにカワサキの面白いところは、bimotaの最新モデルを同じ空間に置いて幅を見せてくる点です。KB399やKB998Rimini、TESIH2TERAの展示は、カワサキエンジン搭載bimotaという文脈まで含めて「ここまで守備範囲」と言っているように見えました。そのうえでアパレル販売が同居しているので、乗る前からカワサキの生活が完成してしまう。ファンが長居したくなる理由が、構成そのものにありました。
Suzuki|長く眺めていたくなること自体が価値になる
スズキは展示テーマとしてSUZUKIFAN’SGARAGEを掲げ、ガレージ空間をモチーフにした過ごせるブースを作っています。ここがまず、スズキらしい。スペックを競うより、バイクと一緒にいる時間の質を上げる方向に振っているのが伝わります。
主役として分かりやすいのはGSX-8TとGSX-8TTです。新型として強調され、会場の案内でもブースの象徴的な位置づけになっていました。ここにHayabusaやKATANAといったアイコンモデルが加わることで、新世代とスズキらしさが同時に並びます。もう一つの軸がSV-7GX。日本実車初公開として触れられており、しかも跨り可能な展示として用意される点が来場者にとって嬉しいところです。さらにDR-Z4SMのようなモタード系を加え、遊べる方向性もきちんと残している。そして、スズキの展示は物語の作り方が柔らかい。例えばCNCHALLENGEを通じた環境への取り組みが、理念ではなくレース活動と車両の文脈で語られていて、肩肘張らずに納得できる形になっています。
写真を撮って帰るだけではなく、ふと立ち止まって「次はどうしようか」と考えたくなる。そんな居心地の良さが印象に残るブースでした。
BMW Motorrad|楽になるより自由になる
BMW Motorradは、最新ラインアップを約20車種規模で一堂に展示しつつ、注目点をはっきり絞っていました。その中心にあるのが、ASA(Automated Shift Assistant)を搭載したR1300シリーズです。現地レポートでは、R1300シリーズがクラッチレバーを廃し、発進から停車までクラッチ操作が不要で、変速も自動化される点が強調されていました。一方でBMW公式の案内では、快適さとスポーティさの両立、そして新たな体験として紹介されています。ここが個人的に好きで、単なる楽ではなく「走りに集中できる自由」として語っているように感じます。
さらに足つき性を考慮したF900R/F900XRのロー仕様も展示し、条件の違うライダーにも選択肢があることを丁寧に示していました。スーパースポーツのS1000RRなど4気筒モデルも並び、ブランドの尖った側面も同居します。
そして忘れたくないのが、電動モビリティCE02の存在です。多彩なラインアップが一挙に並ぶことで、BMWがどこか一つに寄せないブランドであることが展示の密度で伝わってきます。先進技術を前に出しつつ、押し付けない。BMW Motorradらしい落ち着いた自信が、ブースの佇まいから感じられました。
インディアンモーターサイクル|125周年が所有する理由を増やす
インディアンモーターサイクルの展示は、125周年という節目を軸に「持つ意味」を立て直してくる構成でした。公式の出展情報でも、1901年誕生の伝統あるブランドであること、そしてツーリングからチーフ、スカウトまでの多様なラインアップが語られています。
現地レポートで強調されているのは、125周年記念モデルが4台並ぶという分かりやすさです。Roadmaster125thAnniversary、ScoutBobber125thAnniversary、ChiefVintage125thAnniversary、IndianChallenger125thAnniversaryが希少モデルとして紹介され、国内への割り当てが少数であることまで触れられています。
この展示が面白いのは、最新技術の説明で勝負していないところです。目を引くポイントとして、標準モデルからアップグレードされたプレミアムな各部パーツや、手作業で数十時間かけて施された塗装など、仕立ての良さが語られています。
会場で眺めていると、スペック表を読むより、細部の質感を確かめたくなるタイプの展示でした。量ではなく物語。速さより歴史。成熟市場における所有の価値を、記念年というフックでやさしく再提示しているように見えます。
ロイヤルエンフィールドJapan|今の現実にちょうどいいクラシック
ロイヤルエンフィールドは、派手さで勝負するのではなく、長く付き合える時間を丁寧に積み上げてくるブースでした。新型2モデルを日本初披露として紹介し、展示車がCLASSIC650125THYEARANNIVERSARYSPECIALEDITIONとBULLET650であることが明記されています。この2台はクラシック路線の厚みを一気に増やす役割を担っていて、650ccというサイズ感が現実的な選択肢として効いてきます。さらにブースでは車両解説やキャンペーン紹介などのステージコンテンツが丁寧に組まれていました。
そして東京会場ではMETEOR350を絡めたトークショーも案内されており、入門から中核までを同じ世界観でつないでいる印象を受けます。速さや尖りではなく、「これなら日常に馴染む」「この雰囲気なら長く飽きない」と思わせる温度感が、ロイヤルエンフィールドらしい。
クラシックを選ぶ理由が、見た目の好みだけではなく、乗り方・付き合い方の想像として自然に立ち上がる。その静かな説得力が、ブース全体から伝わってくる展示でした。
ハーレダビッドソン|象徴を更新し続けるアメリカ
ハーレダビッドソンは、今年も物語の強さでブース全体をまとめてきました。公式の出展情報でも、2026年モデルが勢ぞろいし、クルーザーだけでなくグランドアメリカンツーリング、日本初公開モデルまで含むと明記されています。
現地レポートでは、アメリカ合衆国建国250周年記念の限定コレクションが大きな話題として扱われ、StreetGlideやHeritageClassicなどが記念モデルとして紹介されています。さらに普通自動車免許で乗れるトライクの新型としてStreetGlide3LimitedやRoadGlide3などが日本初公開として触れられており、ハーレーの間口を広げる戦略が具体的に見える構成でした。モデルの幅も分かりやすく、Nightster、PanAmerica1250Limited、Breakout、LowRiderSTなど、キャラクターの違う車種が2026年のハーレー像として一度に体感できるようになっています。加えて、シミュレーターやフォトブースなど体験型コンテンツが用意され、免許の有無を超えてハーレーの世界観に入れる設計になっていました。
結果として、会場で感じるのは買う前提の展示というより、憧れを強化する展示です。象徴を作り続けるのが上手い。だからこそ毎年今年のハーレーが記憶に残る。そんなブースでした。
トライアンフ|入り口を広げつつ軸はぶらさない
トライアンフは体験のテーマパークという言い方がしっくりくるブースでした。見て・触れて・跨って楽しむ方向へ大きく舵を切っています。目玉として語られているのは、Thruxton400とTracker400の2モデルです。普通二輪免許で届く現実感を作りながら、トライアンフの世界観を崩さずに裾野を広げているのがポイントだと思います。加えてTrident800も強く打ち出され、ロードスターの中核も同時に固めている印象です。
コンテンツ面も丁寧で、海外試乗会のインプレッショントークショーや新型車プレゼンテーションが実施され、モデルの背景を語ってから触れる導線が作られています。ブース内で試乗申込をするとオリジナルトートバッグや購入サポートクーポンが用意されるなど、ショー会場を次の行動に接続する設計も明確でした。
面積面でも東京会場は国内外メーカー最大級の約400㎡と案内されており、規模そのものが今年は本気というメッセージになっています。眺めて終わりではなく、触れて語って、気づけばファンになっている。そんな柔らかい引力のあるブースでした。
KTM|尖りをそのまま体験にする
KTMは国内初披露となる新型モデルを展示と明言し、話題の3台を中心に攻めの姿勢を分かりやすく見せていました。具体的にはKTM990RCR、KTM1390SUPERADVENTURES EVO、KTM990DUKERが日本初披露として並びます。
特にKTM1390SUPERADVENTURES EVOはAMT(AutomatedManualTransmission)を装備する点が触れられており、フラッグシップアドベンチャーに新しい操作の形を組み込んでいるのが特徴です。990RCRと990DUKERはオンロードでのスポーツ性能の文脈をしっかり押さえる存在として、ブースの熱量を上げています。
KTMらしいのは、展示だけで終わらず体験要素を必ず入れてくるところです。KTM390SMCRのウィリー体験コーナー、ゲストを交えたトークショー、エンデューロ対談やWPサスペンション紹介など、尖りを身体感覚に落とす仕掛けが並んでいました。結果として、会場では親しみやすさが増す人もいれば、やっぱりKTMは尖ってると確信が強まる人もいる。どちらに転んでも記憶に残る展示です。復活ののろしという表現が似合う熱量がありました。
ここからは、各OEMの展示を少し引いた視点から整理してみます。
各OEMの展示を一通り見終えたあと、改めて全体を振り返ってみると、そこには単なるデザインや演出の違いでは説明しきれない、いくつかの共通した構造が浮かび上がってきます。
国産OEMの展示に見られる「標準化志向」は、単なる企業文化の違いというより、市場成熟度が高い日本市場における合理的な選択だと捉えています。日本の二輪市場は、すでに普及が進み、新規需要よりも更新需要が中心となっており、ユーザーにとっては「失敗しないこと」「安心して選べること」の価値が相対的に高い。その結果、操作性や安全性、体験の分かりやすさといった要素を揃え、「次の当たり前」を提示すること自体が競争力になる。展示で強調されていたのは派手な差異ではなく、誰が見ても理解でき、説明がなくても納得できる状態をどう作るかであり、これは成熟市場における標準化の価値が、そのまま可視化されたものだと感じました。
一方で、今回の展示を見ていて強く感じたのは、差異の背景が市場だけではなく、各OEMが採っている事業構造そのものにあるという点です。国産OEMは巨大なサプライチェーンとグローバル展開を前提に、品質やQCDを高い再現性で回し続ける必要があり、「どこを標準にするか」が事業戦略そのものになります。操作系や基本体験を揃えることは、マーケティング上の選択というより、事業運営上の必然に近い。一方で海外OEMは、利益率やブランド価値を軸に、モデルごとに明確な役割を与え、差別化を前提に事業を組み立てている。その違いが、展示におけるメッセージの明確さや尖り方として、自然に表に出てきているように見えました。
さらに言えば、展示の作り方は「どんな顧客と、どれくらいの距離で付き合いたいか」という関係性の設計を、そのまま映し出します。国産OEMの展示は、幅広いユーザー層やディーラー網を前提に、「迷わせない」「説明しなくていい」状態を作ることに力点が置かれていました。それに対して海外OEMは、すべての人に理解されることよりも、共感した人が深く刺さることを重視している。その結果、展示は製品説明の場というより、世界観や価値観への入口として機能している。だから今回感じた展示の違いは、マーケティング手法の差というよりも、組織や業務、顧客接点をどう設計しているかという思想が、結果として可視化されたものだと捉えています。
国産と海外メーカーの違いから見えたもの
今回のモーターサイクルショーを一通り見て回って強く感じたのは、国産メーカーと海外メーカーで「見せたい未来の置き方」がかなり違ってきている、という点でした。どちらが優れているかという話ではなく、市場との向き合い方そのものが分かれてきているように見えます。
まず国産メーカーに共通していたのは、「次の標準」をどう作るか、という視点です。HondaのEClutchに象徴されるように、操作系や安全性、扱いやすさといった領域で、いずれ多くの人が当たり前に使うであろう体験を先に提示してくる。そのうえで、コンセプトモデルだけで終わらせず、実際に選べる市販車や現実的な排気量帯のモデルを同じ空間に並べる。この構成が非常に一貫していました。Yamahaも同様に、新機構そのものを主役にするのではなく、「それを使うとどう楽しめるのか」という体験に翻訳して見せていましたし、Kawasakiは電子制御を積極的に取り入れながらも、ブランドとしての世界観や所有感を強く意識した展示をしています。Suzukiに至っては、数値や新しさよりも「バイクと過ごす時間の質」を前面に出しており、技術はあくまでその裏側にある存在として扱われていました。
一方で海外メーカーの展示から強く感じたのは、「選ばれる理由」をどう作るか、という視点です。BMWはASAや電動モビリティといった先進技術を持ちながらも、それを効率化や自動化ではなく、「自由の幅を広げる手段」として語っています。インディアンモーターサイクルやハーレダビッドソンは、性能競争から一歩距離を取り、物語や歴史、所有する意味そのものを前面に出してきました。ロイヤルエンフィールドやトライアンフも印象的で、排気量や価格帯を現実的な位置に置きながら、ブランドの世界観を壊さずに裾野を広げています。KTMはその中でも異色で、尖りを弱めるのではなく、体験として分かりやすく提示することで、理解と共感を獲得しにきているように見えました。
これをDX視点で見ると、とても分かりやすい対比が浮かび上がります。国産メーカーは、プロダクトと体験を標準化し、より多くの人が無理なく使える世界を作ろうとしている。一方で海外メーカーは、体験を差別化し、「なぜ自分はこれを選ぶのか」という理由を強く設計している。これはまさに、業務システムの世界で言うところの、標準機能の最適化と、業界特化や顧客体験による差別化の関係に近いものがあります。どちらか一方が正解という話ではありません。むしろ今は、その両方が同時に進んでいる時代です。だからこそ今回のモーターサイクルショーは、単なる新型車発表の場ではなく、「これからの選ばれ方」を示す場として、とても示唆に富んでいたように感じます。
バイクの展示を通して見えてきたのは、移動手段の未来というより、人が何に価値を感じ、どこに時間とお金を使うのか、という問いそのものでした。そういう意味で、今回のショーは、DXという言葉を使わなくても、十分にDX的だったのではないでしょうか。
この展示の流れは、業務システムやIT導入の世界とも強く重なります。
業務システムやIT導入と重ねて見えてきたこと
今回のモーターサイクルショーを、あえて業務システムやIT導入の文脈に引き寄せて見てみると、いくつか興味深い共通点が浮かび上がってきます。バイクとERPや業務アプリケーションは一見まったく別の世界に見えますが、「どう設計し、どう使われ、どう選ばれるか」という点では、驚くほど似た構造を持っています。
まず国産メーカーの展示に共通していた「次の標準を作る」という姿勢は、業務システムにおける標準機能の進化とよく似ています。HondaのEClutchに象徴されるように、操作そのものを簡単にすることで、使い手が意識せずに恩恵を受けられる設計になっている。これは、会計処理や受注処理を裏側で自動化し、ユーザーには複雑さを感じさせないERPの進化と重なります。YamahaやSuzukiが見せていた「どう楽しむか」「どう付き合うか」という視点も、IT導入の現場では重要です。機能が多いかどうかより、日々の業務の中で無理なく使い続けられるか。画面遷移や入力項目が少し減るだけで、業務体験は大きく変わります。国産メーカーの展示からは、そうした“地味だが効く改善”を積み重ねる思想が強く感じられました。
一方で海外メーカーの展示は、業務システムで言えば業界特化ソリューションや差別化戦略に近い立ち位置です。BMWが先進技術を「自由の拡張」として語っていたように、単なる効率化ではなく、使い手の選択肢を増やすことに価値を置いている。これは、標準機能では満たせない業務要件に対して、あえて独自設計や拡張を選ぶ判断とよく似ています。インディアンモーターサイクルやハーレダビッドソンが示していた「所有する理由」も、IT投資の意思決定と重なります。価格やスペックだけではなく、「なぜこのシステムを選ぶのか」「自社らしさと合っているか」という問いが前に出てくる。特に成熟した企業ほど、合理性だけでなく物語や納得感が重要になる点は、非常に示唆的です。ロイヤルエンフィールドやトライアンフのように、裾野を広げながらも世界観を崩さないアプローチは、ローコードやノーコード、段階的導入といった最近のIT導入トレンドとも重なります。いきなりフルスクラッチで作り込むのではなく、まずは手の届く範囲から始め、使いながら広げていく。その過程でユーザーが置き去りにならないことが、結果として定着につながります。KTMの展示は、あえて言えば攻めたDXの象徴です。尖った思想をそのまま押し付けるのではなく、体験として理解できる形に落とし込む。これは、先進的なAI機能や自動化を導入する際に不可欠な姿勢です。技術そのものより、「それを使ったとき自分は何ができるのか」を体感させることが、受け入れられるかどうかを左右します。
こうして見ると、今回のモーターサイクルショーは、単なるバイク展示ではなく、「これからの選ばれ方」「これからの使われ方」を示すショーケースだったように思えます。標準化で裾野を広げるアプローチと、体験で差別化するアプローチ。その両方が同時に存在しているからこそ、選ぶ側には考える余地が生まれます。業務システムも同じです。正解が一つではなくなった今、自社にとって何を標準とし、どこで差別化するのか。その問いを考えるうえで、今回のモーターサイクルショーは、思った以上に多くのヒントを与えてくれたように感じます。
これらの違いは、OEM各社が直面している業務課題とも直結しています。
ビジネスや業務課題として浮かび上がった論点
ここまでを踏まえて改めて感じたのは、今回のモーターサイクルショーが「技術や商品をどう見せるか」だけでなく、「企業がどんな業務課題と向き合っているか」をかなり正直に映し出していた、という点です。これはバイク業界に限らず、多くの企業が共通して抱えている課題とも重なります。
まず一つ目は、人材とスキルの問題です。国産メーカーが操作系の簡素化や扱いやすさを前面に出していた背景には、ユーザー側だけでなく、開発や販売、サポートに関わる人材の負荷をどう下げるか、という現実的な課題があるように見えました。業務システムでも同じで、特定の熟練者に依存した運用は限界に近づいています。誰が使っても一定の成果が出る設計が求められている点は、非常に共通しています。
二つ目は、選択肢が増えすぎたことによる意思決定の難しさです。海外メーカーの展示は、明確な世界観や物語によって「選ぶ理由」を補強していました。これは裏を返せば、機能や価格だけでは差別化できなくなっている、ということでもあります。業務システム導入でも、比較表や要件定義だけでは決めきれず、「自社に合っているか」「この先も一緒に成長できるか」という感覚的な判断が重みを増しています。
三つ目は、変化のスピードへの対応です。電動化、自動化、AI活用など、方向性自体はどのメーカーも共有していますが、その出し方は大きく異なります。一気に未来を見せる企業もあれば、現実の延長線として段階的に示す企業もある。これは業務改革でも同じで、全社一斉刷新がうまくいくケースは限られ、現場の理解や体験を積み重ねながら進める必要があります。
そして最後に、体験の設計という課題です。今回印象的だったメーカーは、いずれも「説明する」より「体感させる」ことに力を割いていました。これは業務システムにおいても重要で、マニュアルや研修資料だけではなく、実際に触って分かる体験設計がなければ定着しません。使われないシステムは、どれだけ高機能でも価値を生みません。
こうして整理してみると、モーターサイクルショーで見えてきたのは、単なる商品戦略ではなく、「限られた人材でどう価値を届け続けるか」「どう選ばれ続ける存在になるか」という、極めて経営寄りのテーマでした。バイク業界が直面しているこれらの課題は、そのまま多くの企業の業務改革やIT導入にも当てはまります。
だからこそ今回のショーは、趣味のイベントとしてだけでなく、ビジネスの視点で見ても非常に示唆に富んでいたように感じます。現場で何が起きていて、どこに無理があり、何が工夫されているのか。そのヒントは、意外とこうした場所に転がっているのかもしれません。
課題をMicrosoftプラットフォームでどう解いていくか
ここまで見てきた業務課題を整理すると、大きく分けて「人に依存しすぎていること」「選択肢が増えすぎて判断が難しくなっていること」「変化のスピードに現場が追いつかないこと」「体験が設計されていないこと」に集約されます。これらは個別の製品やツールで解決できる問題ではなく、全体をつなげて設計し直す必要があります。その文脈で見ると、Microsoftの各プラットフォームは役割分担が非常に分かりやすい。
まずDynamics365(CRM/ERP)は、業務の標準化と属人化の解消を担う土台です。会計、販売、購買、在庫、プロジェクト、人事といった基幹業務を「誰がやっても同じ品質で回る」状態に近づける。これはHondaがEClutchで操作を簡素化し、ライダーのスキル差を吸収しようとしていた姿勢と重なります。業務の複雑さを人の努力で吸収するのではなく、システム側で吸収する。その発想がここにあります。
Power Platformは、その標準の上に現場の柔軟性を載せる役割です。すべてを基幹システムに作り込むのではなく、Power AppsやPower Automateで現場に必要な補助線を引く。SuzukiやYamahaが見せていた「どう付き合うか」「どう楽しむか」という視点に近く、業務の流れを止めずに少しずつ改善していくための手段と言えます。現場主導で手を入れられる余地があることが、結果として定着につながります。
Microsoft Azureは、その裏側で変化を受け止める基盤です。拠点や国をまたぐシステム連携、外部サービスとの接続、将来的なAI活用を前提としたデータ処理など、今すぐ表に出なくても後から効いてくる部分を支えます。BMWが多様なパワートレインやモビリティを同時に成立させていたように、単一の前提に寄せない柔軟さが、ここでは重要になります。
CopilotやAIは、これまで人が考えて判断していた部分を支援する存在です。すべてを自動化するのではなく、「考える余地」を残しながら負担を減らす。これはKTMが尖った技術を体験として分かりやすく提示していた姿とよく似ています。何ができるかを説明するより、使ったときに何が楽になるのかが伝わること。そのための設計が求められます。
Microsoft Fabricは、分断されがちなデータを一つの視界にまとめる役割を果たします。部門ごと、システムごとに散らばった情報を集約し、「今、何が起きているのか」を俯瞰できる状態を作る。海外メーカーが物語や世界観で全体像を示していたように、データにも文脈が必要です。数字が見えるだけでなく、意味が伝わることが重要になります。
そしてSecurityは、これらすべてを安心して使い続けるための前提条件です。便利さやスピードを追求するほど、リスクも同時に増えます。だからこそ後付けではなく、最初から組み込まれていることが重要です。これは成熟したブランドが信頼を前提に成り立っているのと同じで、目立たないが欠かせない要素です。
こうして並べてみると、Microsoftのプラットフォーム群は、それぞれが単独で価値を出すというより、組み合わせることで初めて全体像が見えてきます。標準で土台を作り、現場で広げ、データでつなぎ、AIで支え、セキュリティで守る。その流れは、今回のモーターサイクルショーで見えた「標準化と差別化を同時に進める」動きと、驚くほどよく似ています。
業務改革やIT導入も、もはや一発逆転のプロジェクトではありません。少しずつ体験を良くしながら、選ばれ続ける仕組みを作る。その積み重ねこそがDXであり、今回のショーは、そのヒントを別の形で見せてくれていたのだと思います。
OEM視点で業務に引き戻して考える
ここからは、少し視点を完全にOEM側に引き戻してみます。今回のモーターサイクルショーで見えた流れは、決して展示会特有の話ではなく、日々の業務そのものに直結しています。各部門ごとに見えてきた課題と、それに対して今何を考え、何から着手すべきかを整理してみます。
まずマーケティング領域です。課題は明確で、商品や技術を「説明」しても伝わらなくなっていることです。国産メーカーが操作系の進化を体験として見せ、海外メーカーが物語や世界観で引き込んでいたように、情報発信は一方通行では機能しません。ソリューションとして求められるのは、顧客行動と接点を一貫して捉えることです。キャンペーン単位ではなく、興味喚起から比較検討、購入後までをデータでつなげて理解する必要があります。ToDoとしては、顧客接点ごとのデータを分断したままにしないこと、施策単位ではなく顧客単位で効果を見直すこと、現場が体験を設計できる余地を残すことが挙げられます。
次に販売領域です。課題は、商品点数やバリエーションが増えるほど、営業や販売現場の負荷が増大している点です。展示で見られたように「選ばせ方」が整理されていないと、現場は説明に追われます。
ソリューションは、標準化されたプロセスと判断支援です。価格や条件を覚えるのではなく、状況に応じた選択肢が自然に提示される仕組みが必要になります。ToDoとしては、見積や受注の属人化を減らすこと、販売データを後追いではなくリアルタイムで把握すること、営業が考える時間を確保できる設計に切り替えることです。
アフターセールス領域では、別の課題が浮かび上がります。課題は、製品が高度化するほど、保守やサポートが人に依存しがちになる点です。これは操作が簡単になっても、裏側が複雑になっていることの裏返しでもあります。ソリューションは、履歴と状態を可視化し、予測できる形にすることです。起きてから対応するのではなく、起きそうなことを先に共有できる状態が求められます。ToDoとしては、整備や修理履歴を一元化すること、現場と本部で同じ情報を見られるようにすること、経験に頼らない判断材料を整えることです。
D2Cは、多くのOEMにとって避けて通れないテーマです。課題は、従来の販売チャネルと衝突せずに、直接顧客とつながる方法をどう作るかです。海外メーカーが示していたように、D2Cは単なる直販ではなく、関係性の設計です。ソリューションは、販売と体験を分けて考えないことです。購入前後の接点を通じて、ブランドとの関係を継続させる必要があります。ToDoとしては、オンラインとオフラインのデータを分断しないこと、購入後の接点を設計すること、代理店や販売店との役割分担を明確にすることです。
製造領域では、より現実的な課題が見えます。課題は、多品種少量化と変化の速さです。展示されていた多様なモデル群は、そのまま製造現場の複雑さを表しています。ソリューションは、計画と実行を切り離さず、柔軟に更新できる状態を作ることです。完璧な計画より、変えられる計画が重要になります。ToDoとしては、需要変動を早く捉えること、設計変更や仕様変更の影響を可視化すること、現場が無理をしなくても回る前提を作ることです。
物流も同様に、見えにくいが重要な領域です。課題は、グローバル化と即時性の両立です。供給網が複雑になるほど、全体像が見えなくなります。ソリューションは、点ではなく線で捉えることです。拠点ごとの最適ではなく、全体としてどう動いているかを把握する必要があります。ToDoとしては、在庫と輸送の可視化、例外発生時の共有スピード向上、部門をまたいだ判断基準の整備です。
最後に会計です。課題は、結果が見えるまでに時間がかかりすぎることです。多くの判断が過去データに基づいて行われています。ソリューションは、会計を記録ではなく意思決定の材料として使うことです。現場の動きと数字を近づける必要があります。ToDoとしては、月次に閉じないこと、業務データと会計データを切り離さないこと、経営と現場が同じ数字を同じ意味で見ることです。
こうして部門ごとに整理してみると、共通しているのは「複雑さを人で吸収しない」という考え方です。今回のモーターサイクルショーで見えたのは、製品の進化以上に、そうした設計思想でした。OEMの業務改革も同じで、個別最適ではなく、体験と全体像をどう作るかが問われているように感じます。
OEMの皆さんへ投げかけたい問い
ここまでモーターサイクルショーを起点に、DXや業務課題、IT導入との重なりを見てきました。最後に、この話をもう一段だけ自分たちの足元に引き寄せるための問いを置いておきたいと思います。
まず一つ目の問いは、「自分たちの業務は、誰にとって当たり前になっているか」という点です。操作が複雑でも、属人化していても、現場の努力で回っている業務は少なくありません。しかし、それは本当に当たり前として設計されているでしょうか。それとも、長年の慣れや根性で成り立っているだけでしょうか。HondaがEClutchで示していたように、努力を前提にしない設計が、業務にもできているかを改めて考えてみる価値があります。
二つ目は、「自分たちは選ばれる理由を、きちんと設計できているか」という問いです。価格や性能、条件の説明だけでなく、なぜ自社と取引するのか、なぜ自社ブランドを選び続けるのか。その理由は社内で言語化され、部門を越えて共有されているでしょうか。海外メーカーが物語や世界観を通じて選ばれる理由を積み上げていたように、OEMとしての自分たちらしさは、業務やシステムの中にまで落とし込まれているかが問われます。
三つ目は、「変化を前提にした業務設計になっているか」という問いです。市場環境や顧客接点、販売モデルは確実に変わり続けています。その変化に対して、毎回大きなプロジェクトで対応しようとしていないでしょうか。ロイヤルエンフィールドやトライアンフが示していたように、段階的に広げられる設計、使いながら変えられる余地が、業務やITにも残されているかを考える必要があります。
四つ目は、「データは判断を助ける存在になっているか」という問いです。大量のデータは集まっているが、意思決定には使われていない。そんな状態に心当たりはないでしょうか。FabricやAIが示す世界は、数字を増やすことではなく、状況を理解しやすくすることに価値があります。経営と現場が同じ景色を見て話せているかは、非常に重要なポイントです。
最後の問いは、「人が本当に使いたいと思える業務体験になっているか」です。どれだけ高機能なシステムでも、使われなければ意味がありません。KTMが尖った技術を体験として落とし込んでいたように、業務システムもまた、触って分かる体験であるべきです。現場が自分ごととして関われる余地があるかどうかが、定着と成果を大きく左右します。
今回のモーターサイクルショーは、新しいバイクを見る場であると同時に、「これからどう選ばれ、どう使われるか」を考える場でもありました。その問いは、OEMの業務やIT、そしてDXの取り組みにも、そのまま返ってきます。「自社にとっての次の当たり前は何か」「その当たり前を、誰のために、どう設計するのか」この記事が、その問いを考えるきっかけになれば幸いです。
終章|まとめ
本記事では、東京モーターサイクルショー2026を起点に、各OEMの製品展示を手がかりとして、モーターサイクルビジネスの現在地と、その裏側にある業務やDXの設計思想を見てきました。新型モデルや技術の話に留まらず、「どう見せ、どう選ばれ、どう使われ続けるか」という視点で展示を読み解いてきたことが、本記事の軸です。
会場で語られていたのは、決して派手な未来像ではありませんでした。むしろ、今の市場や顧客、現場の制約を前提とした現実解の積み重ねであり、その一つひとつに、OEM各社の思想や迷い、試行錯誤がにじんでいました。製品の進化と同時に、業務や体験の再設計が求められていることは、展示全体から一貫して伝わってきます。
国産メーカーと海外メーカーの違い、DXとの重なり、業務課題への接続、Microsoftプラットフォームによる解き方、そしてOEM各部門の具体的なToDo。これらは別々の話ではなく、すべて「次の当たり前をどう設計するか」という一つの問いにつながっています。
東京モーターサイクルショーは、新しいバイクを見るための場であると同時に、OEMが自らのビジネスや業務をどう捉え直しているかを映し出す鏡でもあります。その意味で、今回のショーは、DXという言葉を使わずとも、十分にDXを考えさせる場だったと言えるでしょう。
この記事が、読者それぞれの現場に立ち戻り、自社にとっての「次の当たり前」を考えるきっかけになれば幸いです。
そして、皆さま、交通ルールを守りましょう!そして、くれぐれも、安全運転で!
以上、室長でした。
