AIはProject Managementをどう手助けする?

こんばんは。室長こと、吉島良平Microsoft MVP for Business ApplicationsMicrosoft Regional Director) です。皆さま、この週末はどのようにお過ごしですか?私は雨模様の東京で、相変わらず山積みのタスクに追われていますが、少しくらいは気分転換しないとダメだと思って、洗濯機を回したり、掃除機かけたり、短時間でできる料理をしたりな感じです。仕事だけで、終わらないようにと気を紛らわしながらも、机に座り続ける週末になっています。

私は基幹系・情報系システム(ERP/CRM)のビジネス、コンサルに長く関わってきて、現在はTechnosoft  GroupのCOO(最高執行責任者)ロールを担っています。ご存じのように、昨今のIT業界では、AIが話題の中心で、世の中の経営者は12ヶ月‐18か月先までを考えることが王道と言われています。一方、ERP/CRMの世界はサステナブル(持続可能性)でなくてはならず、どこまで先を見据えて意思決定をすべきなのか、納得した答えを出せずにモヤモヤすることがあります。基幹システムの提案・構築・保守という領域でグローバルに長く関わってきたことが、外資系IT企業のCOOとして、経験がフィットするということも体感しています。CRMやERPに関わっている方々にも将来のキャリアパスとしてCOOもあるという事を証明するためにも自分自身が結果を出さないといけないなとも感じます。今のロールには多くのチャレンジがあります。選択と集中でフォーカスを絞りながら、ビジネスや組織をどうレバレッジさせるかについて、考え抜く日々です。人間は論理では動かず、感情で動きがちな生き物で、現場への仕組み(プログラムマネージメント)の構築だけでは不十分だという事も再認識しました。結局人間は1人では何もできないものですね。相談できる知人、友人は大切だなぁと、この年齢になっても感じます。あ、あと若い方々の意見や現場からの声から学ぶ事、気付きを得ることがとても多くなってきました。

また、このBlogを多くの読者様が見てくださっている事が救いになっています。最近では、 oasis live’25Japan Mobility ShowMicrosoft Igniteと書いてきました。このDX365Lifeは、事業会社のIT部門・企画戦略部門に所属する方々、マイクロソフトのビジネスアプリケーションユーザーの皆さま、最近では国内外でオートモーティブ業界に関わる方々が、忙しい中ご覧くださっているようです。いつもお付き合い頂きありがとうございます!コンサルあがりの人間として、お客様にサステナブルな価値を提供する。お客様の為に常に最善を尽くすというマインドをこれからも大切にしていきます。

さて、実用的なAIが徐々に広がってきて、「現場から上長へのフィードバックの精度やスピードが上がってきた。」「現場へのタイムリーなフィードバックの為に、上長のアクションが遅れだしている。」という声をIT業界ではよく耳するようになってきました。上長をサポートするAIの重要性が問われていますね。AIが出てきても、優秀な人に仕事が集まってくるのはきっと変わらないのでしょうね。

少し前の振り返りになるのですが、今年もDirectionsAsiaというイベントで、中村亮太さん(Microsoft MVP for Business Application)と一緒に2つのセッションをお披露目しました。「世界で一番新しくて、セッションの参加者にとって納得感があり、サンプルコードを持ち帰って、翌日から即使えるものをご提供したい。」という思いで2023年度から取り組んでいます。2025年度のDirectionsAsiaについては、概要レベルのBlog、セッションの内容を“気ままに勉強会”にてご紹介しましたが、時間の関係上、セッションの意図、背景まで解説する事ができませんでした。という事で、本稿では、DirectionsAsia2025にてセッションでご紹介したプロジェクトマネジメントに関わる内容を一部取り上げてみたいと思います。最後までお付き合いいただけますと嬉しいです。資料は後半でダウンロードできるようにしておきますね。

序章:なぜ“管理プロセス×AI”に光を当てたのか

世の中には、いろいろなプロジェクトがありますよね。IT業界であれば、ソリューションを導入するとか、IT製品を開発して資産計上してソフトウェアとして36ヶ月償却するとか、建設現場の工事で利益認識基準への対応を明確にするとか、機器や重機の導入構築が数か月かかるようなケースがプロジェクト管理の一例としてあたまに浮かぶ方もきっと多いでしょう。

Directions Asia 2025で、私たちがスポットライトを当てたのは派手なデモでも最新バズワードでもありません。Project Schedule & Resource Allocation、Expense Management、Vendor/Customer Invoice、Monthly Gross Margin——いずれも地味で、しかし毎日必ず発生し、積み重なると粗利を左右する“管理の要所”です。PPT(セッション時に使ったスライド)の Pain Scenario 1〜6 は、まさにこの「要所」で滞留が起きる瞬間を切り出し、AIに“秘書(Agent)”の役割を担わせることで、遅延の伝播を断ち、意思決定を前倒しする狙いがありました。

Directions Asia 2025では4セッションを担当したのですが、このセッションの前に、Dynamics 365、Power Platform、IT業界の働き方に関して、アンケートをとるセッションを行いました。リソース割当にAIを使いたいという方々が、予想通りいらっしゃいました。

セッション1

1&2)スケジュールとアロケーション:遅延は“連鎖”する

シナリオ1の前提条件を記載しておきますね。

ということで、あるあるなのですが、PJの序盤、要件定義がいきなり1か月遅延します(笑)

そして、PJメンバーが他のタスクも掛け持ち。リソース(要員)の取り合いあるあるですねw

稼働できる人をAIに探してもらって、割り当ててもらうというストーリーでした。この作業をシステムを活用せず、タイムリーにやるとなると相当大変です。

次のシナリオは、要件定義で出てきたGAPに対して、再見積もりしたら開発工数が提案時以上になって、リソース(要員)の追加が必要になるあるあるケースです。メンバーが他のプロジェクトにも参加しているので担当PM・リソースマネージャー含めての検討が必要です。

6-8月はTC3名がフル参加しないといけなくて、逆に開発着手が遅延したので、結果TC2の5月の稼働%が100%→50%に削減されたというシナリオでした。

Directions Asia 2025の準備も遅れて、TC2が5月に追加で25%作業をしないといけないのですが、6月-8月がフル稼働なので、TC2は5月に25%(5日間)逆に休暇を取っておくほうがいいというシナリオです。

結果TC1とTC3は夏休みなし、TC2は夏休みの前倒しを実行w。ごめんなさい、プロジェクトマネージャーは私の想定です。

Pain Scenario 1&2 は、製造業の向上へのシステム導入プロジェクトの要件定義(Step 4)の延伸と、イベントの登壇準備(Directions Asia)など“PJ外タスク”の並走が引き起こす人員逼迫を描いています。ここでAI Agentが、他リソースの空き・上限・休暇計画まで加味した差し替え案を即時提示し、PMに“更新すべき計画行(Planning Line)”を指示する流れが示されます。狙いは、延伸の早期認知→当月の配分再設計→夏休み等のボトルネック事前解消という“先手”の型を標準化すること。つまり、リソース最適化の属人性を削り、運行表の書き換えをAIに常時伴走させるためでした。もう少し突っ込めば実用化のところまでたどり着けるのですが、セッションの時には、そこまでたどり着けませんでした。参加した方々から、すぐ使いたいというフィードバックがいくつかあったので、皆さん苦労しているところは同じなのでしょうね。

管理者視点でいくと、Project Managerがタイムリーに計画を更新しない。Project Manager視点でいくと、現場が忙しくてどうしても工程の再計画、リソースの再割り当てが遅れがちになる。この課題へのチャレンジを抱えている方も多いのではないでしょうか?

デモ用のデータ作成、AIのチューニング、Power BIを使った可視化等、世の中に溢れる業務課題を解決するために最善を尽くした内容でした。

資料ダウンロードして、“ネタ”のチェックをしてみてください。Dynamics 365 Business Centralの販売パートナーや、実ユーザーにとって結構使える内容だと思います。

同様に、前日のセッションでとったアンケートに、用意してきたデモンストレーションがハマる結果がでていました。現場の皆さんのお悩みは似ているようですね。

セッション2

3)経費処理:証憑入力の“摩擦”をゼロ距離化

Pain Scenario 3 は、領収書形式のバラつき、承認の差し戻し、出張中の紙運用が生む締め切り前の輻輳を指摘しました。ここでAI Agentは、SharePointに保存された証憑を読み取り→承認依頼→D365BC(Dynamics 365 Business Central)の一般仕訳起票・転記までを自動化します。意図は、入力・確認(承認)・転記の三層で生じる人手の往復を削り、月末の承認作業の停滞や粗利計算の“材料到着”を前倒しすること。コストの見える化速度が、次段の請求・粗利に直結するからです。

管理者視点でいくと、現場の作業遅延で、お客様への請求が遅延したり、場合によっては請求で揉めたりと時間がとられてしまう事はありませんか?

現場視点では、紙での管理をなるべくオンライン化して、尚且つ作業工数を削減したい、そんな声が聞こえてくるものです。

AI Builder + Power Automateがとてもいい仕事をしてくれています!

承認時に、基幹システム(Dynamics 365 Business Central )とMicrosoft Teamsが使えるというのはプロセスの内部統制を担保できるのと、証跡を参照しやすくするために細かい技が入っています。

領収書をデータで管理する事はとても大切ですね。私たちもMicrosoft 365 Copilotの成長を感じた瞬間でした。

4)ベンダー請求:三点(PO/SR/Invoice)照合の自動化

Pain Scenario 4 が描くのは、発注・工数(Timesheet)・サービスレポート・請求検収・支払依頼という多段の照合負荷。AI Agentは、PO/SR/Vendor Invoiceの3文書を参照し、D365BCへ仕入請求の起票→承認後の計上を支援します。ここでの狙いは、帳票とデータの整合チェック漏れ防止、外注費の計上遅延=プロジェクト原価の遅延を防ぐこと。原価の間違いや、計上遅れはそのまま粗利の精度低下、月次決算の遅延に跳ね返ります。“請求の正当性”と“会計転記”をつなぐ作業線を、AIで一本化するアプローチをデモンストレーションしました。

昨年度のDirectionsAsia2024でご説明した内容
昨年度のDirectionsAsia2024でご説明した内容

管理者視点では、Project Managerがいい加減なので、きちんとチェックをしているだろうか?経理部門も不安視しているケースがあると思います。特定のPMの作業には特にフォローが必要だったりしませんか?また現場の作業者にとっては、委託業者の予算・実績管理もシステムを合わせた仕組みが構築されていないと手間がかかってしかたない。そんな声が聞こえてきませんか?月末にベンダーの稼働が超過になっていることに気付き、お客様への請求で揉める。そんな状況に遭遇したことはありませんか?

基幹システムの構築は、しっかりとビジネスプロセスを定義しないといけませんね。AIにどこを任せるのか?ビジネスプロセスの再構築、待ったなし!を体感いただくセッションをイメージしていました。

Microsoft 365 Copilotがデータ照合作業をサポートしてくれます。この作業、実は結構手を取られるので、プロジェクト管理者にとってはとても助かる実装だと思います。

経理部門にとっても、基幹システムそのものに、帳票を含めた証跡が残せ、監査対応も容易になるので、この領域が手つかずであればチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

5)顧客請求:SR遅延の“詰まり”をエージェントでバイパス

Pain Scenario 5 は、サービスレポート遅延が招く売上認識の遅れ。AI Agentは、D365BCのPJ発注・作業実績・作業委託に関する仕入計上・経費転記が揃った時点で、売上請求(Sales Invoice)の作成・承認・発行を駆動します。ここで重要なのは、“請求可能性(Ready-to-Bill)”の条件判定をAIが代行する点。入力完了の判定→不足タスクの催促→準備完了の通知→請求作成を連鎖させ、“請求が出ない日数”を粗利の損失日数と見なす発想に立っています。特に海外では、請求書発行から何日後の入金という支払条件が多いので、請求遅延は入金遅延に直結、キャッシュフローに影響が出てしまうのです。

データを正しく、作り出す事。帳票を適切に管理する事。改めて大切だなと感じます。

請求用の稼働時間のチェックも、これからはAIに任せたいところですね。

職務の分離の観点から売上計上、請求書作成を経理部門に任せる場合も、↑の売上請求伝票に必要なデータが全て入っているので、担当者は確認して、転記処理をするだけですね。

もう少し欲を出すと、AIがどのようなチェックをしてくれたのか?この事も伝票上のどこかで確認できると、経理部門の担当者は「あんしん」できるように思います。そういうところを、マイクロソフトの製品開発チームに改善要望としてフィードバックしていきたいと思います。

6)月次粗利:部品ごとの“遅れ”が経営の視界を曇らせる

Pain Scenario 6 は、SR/顧客請求/ベンダー請求/経費のいずれかが遅れると、タイムリーな月次決算の視界が曇る現実を暗示します。

AI Agentは、「転記済み」イベント(Posted Purchase/Sales Invoice、GL/Project Ledger Entries)をトリガーに、月次粗利(GM)を提示。ここでのポイントは、“可視化の遅延要因”を前段のAgent群で潰し切り、最後は自動合成したGMをPMへというパイプライン設計にあります。粗利は結果ではなく、全プロセスの“整流度”の指標——この視点が重要です!

粗利をなるべくリアルタイムで可視化していく事で、現場の作業者のモチベーションにもなります。利益が可視化されないプロジェクトは、現場が頑張ってるけど、終わってみると利益がでていないので評価されないプロジェクトにも成りかねませんよね?

基幹システム側は経理・財務ユーザーは粗利が見える機能群が用意されていることが多いですが、現場レベルでは独自に開発したりすることも多いですよね。なるべく手間をかけずに、タイムリーに現場のチームでデータを使って次のアクションのスピード、品質をあげていく必要があります。

Power BIで可視化しても良し、Microsoft 365に集計を任せて、社内の週次ミーティングでチームと共に現在地を把握するのも悪くないと感じました。

コンテンツ作成の背景:DXの成果は“作るところ”ではなく“詰まるところ”で決まる

2つのセッションで強調したかったのは、「守りのDX(防御的)と攻めのDX(攻勢)」の両輪。私たちは“Do more with less”を合言葉に、PM・コンサル・経理・営業アシスタントの周辺で日々消耗される管理時間を、AI秘書で“再配分”しようと考えました。なぜなら、管理の摩擦が小さくなるほど、顧客MTG参加や製品学習など“売上と品質に寄与する時間”が増えるからです。リソース計画の更新、会社カレンダー、リソースキャパシティ、タイムゾーン配慮まで含めて“現場仕様”に落ちているのも、単なる技術礼賛ではなく、現場の再設計を狙ったものでした。

結論:AIは“秘書”として、利益構造を支える

スケジュール/リソース/経費/仕入請求/売上請求/粗利。この6本は利益の動脈です。どこか1本でも滞れば、粗利の見える化と資金化が遅れる。だからこそ私は、Directions Asia 2025でAI秘書(Copilot/Agent)を業務の管制塔にという提案に挑戦しました。人が判断し、人が承認する前提は保ちながら、AIに「集める・照合する・起票する・催促する・転記する」を委ねる。その積み重ねが、『月次粗利の“締まり”と、現場の“軽さ』を同時に実現する——これが、DX365Life Saverとして、この領域に光を当てた理由であり、本連載(記事)の起点です。

時代に見合ったプロジェクト管理の姿

プロジェクト管理における「見えない摩擦」は、利益構造を静かに蝕みます。スケジュール遅延がリソース逼迫を招き、経費精算や請求処理の滞りがキャッシュフローを曇らせ、粗利の可視化は後手に回る——Pain Scenario 1〜6が示した現場の“あるある”は、決して例外ではありません。

Directions Asia 2025で私たちが提示した解決策はシンプルかつ本質的なものでした。AIを“秘書”として業務の管制塔に据えることです。CopilotやAI秘書(Copilot/Agent)が、計画行の更新、証憑読取、三点照合、請求判定、粗利集計といった「人がやるべきではない反復作業」を肩代わりすることで、PMやコンサルタントは本来の価値創出に集中できます。管理部門、経理財務部向けにも合理的な内部統制を構築する事ができたと言えるのではないでしょうか。

これらのテーマを選んだ理由は明快です。DXの成果は、華やかな機能ではなく、詰まりやすい管理プロセスをどれだけ整流化できるかで決まるからです。AI秘書は、単なる効率化の道具ではなく、“Do more with less”を利益の動脈で体現する存在。それが、Directions Asia 2025で私たちが示したかった『時代に見合ったプロジェクト運営の姿』でした。

↓セッション資料↓

中村さんと深夜まで奮闘し、準備したこれらの2つのセッションが、誰かの何かのお役に立っていれば幸いです。

あ、ちなみに、ここで使われている全てのイラストは、Copilot君が作成してくれたものです。本当にいいお仕事をしてくれましたw

Directions Asia 2026にご参加ください!

次回は、ベトナム・ホーチミンでの開催が予定されています。

皆さんが「これはすぐ試したい!」と思えるような、面白いデモンストレーションを私たちも考え、お披露目したいと思います。現場で役立つDXの“実装力”を磨き、AI秘書(Copilot/Agent)とともに時代に見合った働き方を一緒に追求していきましょう。

それでは、今日はこのくらいで。Let’s Enjoy our DX365Life!

dx365jp
  • dx365jp
  • 24年ほど、Microsoft Dynamics ERP(NAV/AX)+CRMの導入コンサルティングに従事し、日本を含む34か国において導入コンサルティングを経験してきました。グローバル環境における“プロジェクト”と“マーケティング”を生業としております。

    最近は、【CRM/MKTG(攻めのDX)⇔ ERP(守りのDX)】+【ローコード】というDX365な活動に奮闘中です。Microsoft Dynamics 365 ビジネスで地球を90周中です。#DX365 #DynamicsIoT

    Microsoftの運営する外部技術者グローバル組織「Microsoft MVP(*日本165名/世界3023名)・ Microsoftのトラスティッドアドバイザーである「Microsoft Regional Director (*日本4名/世界189名)」として、複数のITコミュニティーにて活動中。(*2022/07/06時点)

    プロフィールはこちら→bit.ly/Dynamics365JP