Finance & SCM 10.0.49—AIが乗る土台を固める。予算管理・銀行照合・ER・サプライヤー連携、9月リリース全機能整理

こんばんは。室長こと、吉島良平(Microsoft MVP for Business ApplicationsMicrosoft Regional Director)です。

フィリピンは雨季まっただ中です。昼は暑いし、夕方になるとスコールが来る。毎日この繰り返しです。傘を持たずに外出すると、必ず後悔します。そういう季節です。

ところで今日、Oasisが「Oasis Live ’27」ワールドツアーを発表しました。
グラスゴーを皮切りに、マンチェスター、バルセロナ、パリ、ローマ、ボストン、ラスベガス—そして2027年9月、30年ぶりのKnebworthで幕を閉じる全38公演です。
ドキュメンタリー映画「Oasis: Don’t Look Back in Anger」も9月公開済みで、ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミアを飾っています(Disney+でも配信予定)。来年のツアーをモチベーションに、仕事を頑張っていきたいと思っています。

来年といえば、ラグビーワールドカップ2027もオーストラリアで開催されます(10月1日〜11月13日、史上初の24チーム参加)。昨日のブログで書いたオールブラックスとスプリングボクスの話の続きが、Wカップで見られると思うとこちらも楽しみです。この2チームを破るチームが出てくるか、結構難しいのではないかと考えています。日本は、グループを1位・2位抜けとなるはずなので、トーナメントではきっとスコットランドか、オーストラリアが相手になります。楽しみです♪

さて、昨日はBusiness Central 28.5について書きました。

BCがAI基盤を積み上げる一方で、今日取り上げるFinance & Operationsは少し性格が違います。

予算管理・銀行照合・帳票(Electronic Reporting)—AIが乗っかる前に整えておくべき業務基盤を、今回しっかり固めてきたリリースです。


Finance & SCM 10.0.49 リリース概要

項目 内容
ビルド番号 10.0.2790
GA(自己更新) 2026年09月
GA(自動更新) 2026年10月

※ 自動更新のタイミングは環境により異なります。Lifecycle Services(LCS)で更新スケジュールをご確認ください。


Dynamics 365 Finance 10.0.49 注目機能

Budgeting(予算管理)—5機能が一気に入った

今回のFinance 10.0.49で最も存在感があるのが予算管理の強化です。
5つの機能が一度に追加されました。地味に見えますが、予算コントロールを本格運用している組織には直撃する内容です。

📋 Budgeting 新機能 5選

会計日の自動繰り越し
予算コントロール有効な発注書・購買依頼のワークフロー処理中に会計期間がクローズ・保留になった場合、会計日を次の有効期間へ自動調整します。長期承認フローで期間をまたいでしまう問題への現実的な解決策です。

予算追跡データの破損検出
予算コントロールデータの破損パターン(孤立した追跡レコード・解除関係の破損)を修復前に検出・可視化できるようになりました。既存の「予算コントロールデータメンテナンス」ツールと組み合わせて使います。

ワークフロー承認後の一般予算引当自動転記
ワークフロー承認完了後に一般予算引当を自動転記するオプションが追加。手動転記の工数削減と、大量処理時の遅延解消につながります。

未解消エンカンバランス報告から締め期間を除外
Outstanding encumbrance(未解消負債残高)レポートから締め期間のトランザクションを除外するオプションが追加。年度末の公的機関・予算管理組織には特に有用です。

部分消費・確定済みドキュメントの予算チェックインジケーター維持
発注書が部分的に請求・確定された後も予算チェックマークが残るように改善。「予算への影響があったのかなかったのか」が確定後も確認できるようになります。

Cash and bank management(銀行照合)—照合フローが進化

銀行照合まわりも今回は大きく動きました。特に「照合結果のプレビュー承認」は現場オペレーションに直接効きます。

🏦 Cash & Bank 新機能

自動照合のマッチング結果プレビュー
照合ルールの適用結果を転記・確定する前にレビュー・承認できるようになりました。「自動照合したら意図しないトランザクションが消えていた」というリスクを事前に防げます。(管理者設定で有効化)

決済の遅延処理(Delay settlement)
顧客・仕入先支払仕訳帳の転記時に、関連する決済が完了できない場合でも転記を成功させられます。決済はキューに入り、バックグラウンドで処理。高負荷環境でのボトルネック解消に有効です。

架橋トランザクションの検索パフォーマンス改善
銀行クリアランス処理での架橋トランザクション選択を最適化。全件ロードをやめて条件指定後に取得する方式に変わり、大量トランザクション環境での処理速度が改善されます。

Electronic Reporting(ER)—GS1バーコードとER式言語の強化

Electronic Reportingの強化は地味ですが、帳票を実運用している現場には重要です。今回はデフォルトでオンになる機能が3本あります。

📄 Electronic Reporting 新機能

GS1バーコード対応(デフォルトON)
GS1-128・GS1 DataMatrix・GS1 QR Codeの3形式がERから直接生成できるようになりました。物流・製造業で広く使われるGS1規格に、別途ライブラリ不要で対応できます。

DIV・MOD関数の追加(デフォルトON)
ER式言語に整数除算(DIV)と余り(MOD)が追加されました。ページネーション・包装数量・端数計算などで地道に必要だった演算がようやく標準化されます。

印刷管理の「部数」設定がERデスティネーションに反映(デフォルトON)
これまで印刷管理で「3部印刷」と設定してもERデスティネーションでは1部しか出なかった問題が解消されます。

フランスe-Reporting(規制対応)

フランスの電子インボイス改革(Réforme de la facturation électronique)の一環として、取引データを承認済み仲介プラットフォーム(Plateforme de dématérialisation partenaire)経由で税務当局へ報告する義務(e-Reporting)への対応が追加されました。
日本本社での影響はありませんが、フランスに拠点を持つ企業は要確認です。


Dynamics 365 Supply Chain Management 10.0.49 注目機能

Supplier Engagement(Preview)—サプライヤー関係管理の新機能

SCM 10.0.49の新機能で最も注目されるのが「Supplier Engagement」です。
サプライヤーとのコラボレーション・関係管理を一元化するポータル的な機能で、今回はパブリックプレビューとしての提供です。

💡 Supplier Engagement とは

サプライヤーとの関係を改善・強化するための機能セットです。
購買部門とサプライヤー間のコミュニケーション、情報共有、協業プロセスをシステム上で管理できるようになります。
Feature management で「(Preview) Supplier Engagement」を有効化して利用できます。

Planning Optimization—3本追加

マスタープランニングのPlanning Optimization強化が今回も続きます。

📦 Planning Optimization 新機能

輸送カレンダーの集荷禁止ポリシー対応
輸送カレンダーで「集荷禁止」と設定された日を、計画移送オーダーの生成時に考慮するようになります。

サブBOM・サブルートを需要予測削減に考慮
需要予測・供給予測の削減計算において、サブBOMとサブルートも対象に含めるようになります。より精緻な計画が可能になります。

カバレッジタイムフェンスによる派生所要量フィルタ
カバレッジタイムフェンスを使って派生所要量を絞り込めるようになります。計画精度の向上とデータ量削減に寄与します。

Warehouse Management—3機能がデフォルトON

倉庫管理まわりは今回、デフォルト有効化の機能が中心です。

🏭 Warehouse Management 新機能

インバウンドASNをDespatch Adviceメッセージとしてインポート
外部システムからの入荷事前通知(ASN)をDespatch Adviceメッセージ形式でインポートできるようになります。

ロケーション内の複数オーナー防止
同一倉庫ロケーションに複数のオーナーが混在することを防ぐ設定が追加。マルチテナント倉庫運用での在庫管理精度が向上します。

Dynamic work classification(デフォルトON)
前バージョンまでPreviewだった動的ワーク分類が、PreviewからGAを経ずにデフォルト有効(On by default)になりました。倉庫作業の動的な優先度付け・振り分けが標準的に利用できます。


Dynamics 365 製品別リリースサイクル(9月時点)

製品 〜8月 9月 ★ 10月 12月
🟦 BC 28.0〜28.4 ★28.5 V29 GA予定 継続
🟩 Finance / SCM 10.0.47〜48 ★10.0.49 10.0.50予定
🟪 CRM / PP Wave1継続 継続 GA予定 継続

■ 濃色(青・緑):リリース済み
淡色:将来リリース予定(パターン予測)
■ 紫:CRM / PP Wave リリース
※「予定」と記載のバージョンは、執筆時点の公開情報と過去パターンをもとに記載しています。正式リリース時期はMicrosoft公式発表をご確認ください。
※ なお2026年9月より、MicrosoftはRelease Planの公開を終了し、新機能情報はAI at Work Roadmapに移行しています。


直近のERP【FO/BC】/CRM関連記事

📝 Business Central 28.5(2026年9月)

Business Central 28.5—AIチームとAIチームが向き合う時代が来た

「AI resources for Copilot extensions」GA—ISVやパートナーが自前のAzure OpenAI不要でBCのAI基盤を活用できるようになりました。
AIチーム同士が契約書交渉で向き合った実体験と、BCが積み上げるAI基盤の方向性を書きました。

📚 連載:改めて考えるDynamics 365(全3回、2026年8月)

改めて考えるDynamics 365 #03(最終回)|データ基盤とAIの現在地

CRM×ERPのアーキテクチャ設計パターン(#01)・月次年次締め処理の実態(#02)を経て、最終回はデータ基盤とAIの現在地を整理しました。
Dynamics 365のデータはどこに入っているのか、AIはそのデータをどう扱うのか—BC・FO・CRMそれぞれの構造の違いを踏まえて読み解きます。

📚 連載:帳票を制する(全5回、2026年8月)

帳票を制する #05(最終回)|記録とは生きた証である—Dynamics 365帳票アーキテクチャ総集編

BC・FO・CRMそれぞれの帳票設計思想の違いを全5回で整理したシリーズです。
AL Report/SSRS・ER・Word Templateというアーキテクチャの違いが、AI時代のドキュメント設計にどう影響するか。総集編では「記録とは何か」という問いまで踏み込みました。
今回のElectronic Reporting強化(GS1バーコード・DIV/MOD関数)の背景を理解する上でも参考になります。

📚 連載:Dynamics 365+Copilot|Where we are?(全12回、2026年8月)

エピローグ|Dynamics 365+Copilot|Where we are?—Copilotが変える「仕事の時間」と「顧客への向き合い方」

マーケティング・営業・カスタマーサービス・フィールドサービス・プロジェクトオペレーション・SCM/Commerce・経理財務・人事総務・SMB・経営者(CxO)の10回+プロローグ・エピローグ、全12回の完結シリーズ。
各アプリにおけるCopilotとAIエージェントの現在地を、①標準Copilot②標準Agent③カスタムAgentの3層で整理しています。
ライセンスと管理者設定の現実まで踏み込んだ、実務者向けの内容です。


まとめ

Finance 10.0.49はBudgetingに5機能、銀行照合に3機能—数だけ見れば地味ですが、予算コントロールと銀行照合は日々の業務の根幹です。
「AIが乗る土台」はここにあります。

SCMはSupplier Engagementという新しい方向性が加わり、Planning Optimizationも着実に進化しています。
GS1バーコード対応やDIV/MOD関数のような「ずっと欲しかった」機能が静かにデフォルトONになるのも、今回のリリースの特徴です。

マニラのスコールを窓の外に見ながらに書き上げた9月2本目の記事でした。

来年のOasis Live ’27とラグビーワールドカップを楽しみに、コツコツと頑張っていきたいと思います。

Let’s Enjoy our DX365LIFE!

dx365jp
  • dx365jp
  • 25年ほど、Microsoft Dynamics 365 【ERP(NAV/AX)+CRM】の導入コンサルティングに従事し、日本を含む34か国において導入コンサルティングを経験してきました。グローバル環境における“プロジェクト”と“マーケティング”を生業としております。

    最近は、【CRM/MKTG(攻めのDX)⇔ ERP(守りのDX)】+【ローコード】というDX365な活動に奮闘中です。Microsoft Dynamics 365 ビジネスで地球を92周中です。#DX365 #DynamicsIoT

    Microsoftの運営する外部技術者グローバル組織「Microsoft MVP(*日本163名/世界3674名)・ Microsoftのトラスティッドアドバイザーである「Microsoft Regional Director (*日本4名/世界167名)」として、複数のITコミュニティーにて活動中。(*2026/08/08時点)

    プロフィールはこちら→bit.ly/Dynamics365JP