第2回営業編|Dynamics 365+Copilot|Where we are ? ― Copilotが変える「仕事の時間」と「顧客への向き合い方」

こんばんは。室長こと、吉島良平(Microsoft MVP for Business Applications | Microsoft Regional Director)です。
お盆が明けましたね。実家のある皆さんは、帰省し、ご家族でゆっくりできた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
室長は生憎お仕事と体調不良で、机の前にずっといるお盆となってしまいました。
少し休みたいなとも思いますが、目の前のタスクをこなすのに毎日精一杯な感じです。
出社の際に、帰省先のお土産等を持参して、仲間たちと和気あいあいと過ごされている皆さんを少し羨ましく想像しています。
そんなお盆明けの職場にも、もう一つの風景があります。特に営業担当者の方には、お馴染みの「朝の時間」です。
「先方からの返信待ちだったあの案件、どこまで進んでいたか」「休み前に送った提案書、もう確認してもらえただろうか」
この時期の営業担当者には、特有の「朝の時間」があります。
メールボックスを開いて、CRMを開いて、前回の商談メモを掘り起こして。確認だけで午前中が終わることもあります。
その「確認の時間」が、変わりつつあります。今回は第2回営業編です。
このシリーズのプロローグ(#プロローグ)では3層の枠組みを整理しています。まだお読みでない方はそちらからどうぞ。
「顧客と向き合う時間」は、思ったより少ない
「一日の仕事のうち、顧客と直接向き合っている時間はどのくらいですか?」
営業担当者に聞くと、感覚より少ない数字が返ってきます。
商談や訪問で一日が埋まっているように見えても、実際にはこうした時間が積み上がっています。
社内向けの商談報告(上司への報告・議事録展開)
次のアクションの整理と関係者への連絡
フォローアップメールの作成
提案書・見積書の準備
これらはどれも必要な仕事です。ただ、顧客と直接向き合っている時間ではありません。
Dynamics 365 Salesの標準Copilotと標準Agentは、この「必要だけど時間がかかる仕事」を変えることに集中しています。
今回は、その全体像をお伝えします。
📅 本記事の情報は 2026年8月18日時点 のものです。この領域は進化が非常に速く、数週間で機能追加・名称変更・GA昇格が起こります。最新状況はMicrosoft Learnおよび公式リリースノートでご確認ください。
⚠️ Agentだからすべて自律実行するわけではありません。Agentごとに「推奨する」「分析する」「自律実行する」の実行範囲・設定・データアクセス・メール送信条件が異なります。各Agentの説明で確認してください。
📌 本稿では「Dynamics 365 SalesのCopilot機能・AI Agent」を扱います。Microsoft 365 Copilot内で提供される「Sales agent in Microsoft 365 Copilot」は別製品・別ライセンス体系であり、本稿の対象外です。
標準Copilot:毎日の営業業務を支援する3つの代表機能
Dynamics 365 Salesに含まれる標準Copilot機能の中から、特に営業担当者の日常に影響が大きい3つをご紹介します。
標準Agent:営業プロセスを変えるAI Agent群
Dynamics 365 Salesには、営業プロセスを支援する複数の標準AI Agentが提供されています。
今回は、その中でも営業担当者の日常業務に直接関係する5つを取り上げます。
Agentには、情報収集や判断支援を中心とするものもあれば、Sales Close AgentやSales Qualification Agentのように、条件次第で顧客へのアウトリーチやフォローアップまで自律的に実行するものもあります。
「担当者を支援する」だけでなく、「担当者に代わって動く」領域まで広がっているのが、2026年8月時点のSales Agentの実像です。
5つのAgentを、営業プロセスの流れに沿って見ていきます。
ライセンスと前提条件の整理
「ライセンスを持っている」だけでは、Agentは動かない
Dynamics 365 SalesのAI機能を検討するとき、最初に押さえておきたいのが「ライセンス」と「利用条件」は同じものではないという点です。
「Sales Enterpriseを契約しているから使える」「Sales PremiumだからすべてのAgentが使える」という理解では、2026年時点のDynamics 365 SalesのAI機能を正確には説明できません。現在のSales Agentは、Salesライセンスを土台にしながら、Agentごとのライセンス要件、Copilot Studio、キャパシティ、Dataverse、メール連携、Microsoft Entra ID、Server-side synchronization、データポリシー、提供地域・言語、そしてPreviewの提供条件など、複数のレイヤーで成立しています。
Microsoft Learnでも、Sales Enterprise / Sales PremiumにはSales Agentの基本機能が含まれる一方、Premium機能についてはMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要とされています。つまり、「Dynamics 365のSKU」だけを見て判断するのではなく、その機能がどのライセンス境界に属しているのかを見る必要があります。そこで、本稿ではライセンスを次の5つの観点に分けて考えます。
この5層を分けて考えると、「Sales Premiumを買ったのにAgentが動かない」という一見矛盾した状況も説明できます。
まず「Salesライセンス」と「AI機能」を分けて考える
Dynamics 365 Salesには、Sales Professional、Sales Enterprise、Sales Premiumなどのライセンス体系があります。Microsoft Learnの現行情報では、Sales Enterprise、Sales Premium、Microsoft Relationship SalesにはSales Agentの基本機能が含まれるとされています。一方、Premium機能を利用する場合にはMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要とされています。
ここで重要なのは、「Salesライセンスがある」=「Dynamics 365 Sales内のすべてのAI機能が使える」ではない、ということです。さらに、Copilotの機能についても次の観点を分けて考える必要があります。
・Dynamics 365 Salesに含まれる機能
・Microsoft 365 Copilotに関係する機能
・Copilot Studioを利用するAgent機能
・Agentの実行に伴うキャパシティ/従量課金
したがって、ライセンス設計では「EnterpriseかPremiumか」という1軸だけで判断するのではなく、「誰が」「どの機能を」「どの方式で」「どの程度自動化して」利用するのかまで落とし込むことが重要です。
標準CopilotとSales Agentでは、ライセンスの考え方が違う
今回紹介した標準CopilotとSales Agentを、同じ「AI機能」として一括りにしないことも重要です。
標準Copilotでは、レコードの要約、メール作成支援、営業活動のコンテキスト理解など、営業担当者の判断・作業を支援するAIが中心です。この領域では、Dynamics 365 Salesのライセンスに加えて、対象機能の有効化や管理者設定、Microsoft 365 / Teamsとの連携などを確認します。
Microsoft 365 Copilotとの境界にも注意が必要です。たとえばDynamics 365アプリ内でMicrosoft 365 Copilotを利用する場合、Dynamics 365 EnterpriseまたはPremiumライセンスが前提となり、一部の高度なCopilot機能(提供名称・範囲は変更される可能性があります)にはMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要とされています。
「Copilot」という名前だけでは、どのライセンスが必要なのか判断できません。
Sales Agentは「ライセンス+実行基盤」で考える
Sales Qualification AgentなどのSales Agentになると、さらに一段階複雑になります。たとえばSales Qualification Agentでは、Microsoft Learn上でCopilot Studioライセンスが前提条件として明示されています。また、Agentを構成するための管理者権限やデータポリシー、必要なコネクタの設定も必要です。
Dynamics 365 Salesのライセンスだけではなく、Agentを実際に構築・実行するための基盤まで見なければなりません。これはPower Platform / Copilot Studioを理解しているかどうかで、ライセンス説明の深さが大きく変わるポイントです。
5つのAgentを「ライセンス」ではなく「利用条件」で見る
今回取り上げた5つのAgentについては、単純な○×表よりも、次のように理解することを推奨します。
| Agent | 製品上の位置付け | ライセンス以外に確認するポイント |
|---|---|---|
| Sales Qualification Agent (適格化 Agent) |
Sales Agent GA | Copilot Studio、Agent設定、データポリシー、Agent User。Research and engageにはEntra IDアプリ + SSS等のメール基盤 |
| Sales Opportunity Agent (商談分析 Agent) |
Sales Agent PRP | Preview条件、対象ライセンス、キャパシティ、利用可能地域・環境 |
| Sales Close Agent (クロージング Agent) |
Sales Agent PRP | Copilot Studio、Entra ID App、Dataverse Application User、共有メールボックス、SSS |
| Sales Research Agent (データ分析 Agent) |
Sales Agent PRP | Copilot Studio、データソース、キャパシティ、接続設定 |
| Recommended Actions Agent (推奨アクション Agent) |
Agent横断 Preview | Preview、対象Agent、アクション処理量に応じたCapacity消費 |
ここで特に注意したいのが、「Previewだから使えない」という理解も正確ではないことです。たとえばSales Close Agentは、Microsoft Learn上でProduction-ready previewとして提供されています。Production-ready previewは本番環境での利用を想定したプレビューですが、GAとは異なり、追加のPreview Termsが適用され、仕様変更の可能性があります。
したがって、「Preview=本番利用不可」と単純化するのではなく、Previewには、GAとは異なる契約条件・サポート・仕様変更リスクがあると理解することが専門家として正確です。
提供状態(GA / PRP / Preview)の定義
| ステータス | 本番利用 | 意味 | 記事での扱い |
|---|---|---|---|
| GA | ○ | 一般提供。正式リリース済み | 本番利用を基本前提として説明。ただし各機能の追加条件は別途確認 |
| PRP | ○ | Production-ready Preview。本番環境での利用を想定したプレビュー | 本番利用は可能だがGAと同義ではない。仕様変更の可能性あり。supplemental terms of use適用。各Agentの提供状況は個別確認 |
| Preview | △ | パブリックプレビュー。評価・検証段階 | 本番利用は原則非推奨。導入判断時に変更可能性を明記 |
「GAだから安定、Previewだから使えない」という単純な二分法ではなく、提供ステータスと本番運用上のリスクを分けて考える必要があります。
特にSales Qualification Agentは「2段階」で見る
Sales Qualification Agentは、ライセンス説明の教材として非常に分かりやすいAgentです。このAgentには、Research-onlyとResearch and engageという2つのモードがあります。
リードを調査し、適合性を評価。営業担当者への引き渡しやドラフトメールの作成まで行う。
パーソナライズされたメール送信、顧客からの返信への対応、フォローアップまでAgentが実行。共有メールボックス・SSSの追加構成が必要。
自律性が上がるほど、システム要件も増えます。同じ「Sales Qualification Agent」でも、「リサーチするAI」と「顧客に実際にメールを送り、応答するAI」では導入設計がまったく違います。この差を説明できることが、単なるライセンス紹介とエンタープライズ導入を理解した解説との境目です。
Sales Close Agentになると「ITプロジェクト」になる
Sales Close Agentを構成する場合、Microsoft Learnでは次の要素が構成要件として挙げられています。
Microsoft Entra IDでのアプリケーション登録 / Dataverse Application User / AISalespersonセキュリティロール / 共有メールボックス / Server-side synchronization / 必要なデータポリシー / Copilot Studio / Dataverse / 必要に応じたSharePoint / OneDrive等のナレッジソース
Sales Close Agentは「営業部門がSales Premiumを買えば使える機能」ではありません。Salesライセンスを起点として、Agent実行基盤とMicrosoft 365 / Power Platform / Dataverse / Exchange側の構成を組み合わせ、初めて自律型の営業Agentとして成立します。
これは、ライセンス担当者だけでなく、Dynamics 365管理者、Power Platform管理者、Microsoft 365 / Exchange管理者、セキュリティ担当者まで巻き込むべき領域です。
「Capacity」をライセンスと混同しない
Agentを導入すると、もう一つ避けて通れないのがCapacityです。Agentによっては、利用量に応じてCopilot Studio等のキャパシティを消費します。たとえばRecommended Actionsでは、処理対象となったアクション数に応じて使用量がカウントされる仕組みが説明されています。
ライセンス費用(Dynamics 365 Sales、M365 Copilot等)
+ Agent実行に伴うCapacity / Consumption(Copilot Studio)
+ Microsoft 365 / Power Platform等の追加ライセンス
+ Dataverse / ストレージ等の基盤コスト
「使えるか?」ではなく「どこまで自律化できるか?」
ここまで整理すると、Sales AIのライセンス設計で本当に重要な問いが見えてきます。それは「このAgentは使えますか?」ではなく、「このAgentに、どこまで仕事を任せるのか?」です。
Sales Qualification AgentのResearch-only / Research and engageの違いは、まさにこの「自律性」の差として捉えることができます。そして自律性が高くなるほど、ライセンス → Identity → Data → Mail → Security → Governanceまで検討範囲が広がります。
実際の導入では「6つの質問」を先に確認する
「このAgentを使いたい」と言われたとき、IT部門やDX推進部門は何を確認すればよいのか。少なくとも次の6項目から確認することをおすすめします。
導入前に確認しておきたいチェックリスト
□ SalesライセンスのSKU / エディションを確認した
□ 対象AI機能のEntitlementを確認した
□ Microsoft 365 Copilot / Copilot Studio等の追加ライセンスを確認した
□ Capacity / Consumptionの課金方式を確認した
□ Dataverseのデータと権限を確認した
□ Agent User / Application Userの設計を確認した
□ Microsoft Entra ID側のアプリ登録要件を確認した
□ Exchange / Server-side synchronizationの要否を確認した
□ Agentが「読む・提案する・書く・送る」のどこまで実行するか定義した
□ DLP / データポリシーを確認した
□ 利用地域・言語・提供条件を確認した
□ GA / Previewの区別を確認した
□ Previewの場合、Preview Termsを確認した
□ PoC環境と本番環境を分離して検証した
ここまでを一言でまとめると
Salesライセンスを起点として、対象機能のEntitlement、Copilot / Agent実行基盤、Capacity、データ、Identity、メール基盤、セキュリティ、Preview条件まで含めて初めて「利用可能」と判断する。
特に自律型Agentでは、ライセンスの問題が、そのままアーキテクチャとガバナンスの問題になります。だからこそ、営業 × DX推進 × Dynamics 365管理者 × Power Platform管理者 × Microsoft 365 / Exchange管理者が同じテーブルで要件を確認することが重要です。
※本章のライセンス、Preview、Capacity、機能提供状況は2026年8月時点のMicrosoft公開情報を基準としています。Dynamics 365 / Copilot StudioのライセンスおよびAgentの提供条件は更新されるため、本番導入時には最新のMicrosoft Learnおよびライセンスガイドで最終確認してください。
あなたの営業チームの①②③は、どこまで進んでいますか?
プロローグで整理した3層の枠組みを、営業の文脈で問い直します。
今回の営業編を、3層で整理する
プロローグで紹介した枠組みで、今回ご紹介した内容を整理します。あなたの会社の営業チームは、どの層まで活用できていますか?
まとめ
今回は営業編として、標準Copilotの3つの機能と、営業プロセスを支援する5つのAgentをご紹介しました。
「顧客と向き合う時間を増やす」という問いに対して、Dynamics 365 Salesが出している答えは明確です。
確認・入力・リサーチ・整理といった「顧客の外側にある時間」を短くして、商談・提案・関係構築に使える時間を増やす。
その方向性は、標準Copilotでも標準Agentでも一貫しています。
ただし、機能を知っているだけでは足りません。
特に標準Agentは、動かすための前提条件・ライセンス・IT管理者との連携が揃って初めて動き始めます。
「知っているけれど使えていない」という状態が最もよくあるパターンです。
現在のDynamics 365ロールの中でも、営業領域はMicrosoftが特に注力している領域の一つです。
Wave 2でさらに積み上がる前に、今の現在地を把握しておくことには十分な価値があります。
営業の仕事は、数字だけでは語れない大変さがあります。
断られても、また前へ。予算を削られても、また前へ。
顧客のために動き続けることの積み重ねが、やがて結果として現れる。そういう仕事です。
Copilotが減らせるのは、その仕事の「時間」の一部です。
でも、顧客と向き合う時間が増えれば、その分だけ前へ進む力も増えるはずです。
営業の皆さん、Let’s Enjoy our DX365LIFE!
次回は第3回カスタマーサービス編です。
お客様の声に、もっと早く、もっと深く応えていきましょう!
