ERP×AI|第8回 — ERPのデータ設計 業務データ・マスターデータ・証跡をどう分けるか

おはようございます。室長こと吉島良平(Microsoft MVP for Business Applications | Microsoft Regional Director)です。

前回第7回では、Dynamics 365 Business Centralを題材に、AI AgentのAutonomyを「Read→Summarize→Recommend→Prepare→Update→Commit→Post」という段階で整理しました。External Commitment・Master・Money・AccountingをAuthority Boundaryとして定義し、Agentや人が行った判断を後から説明できるEvidence by Designの重要性を考えました。

しかし、Evidenceを残すだけでは十分ではありません。

受注・在庫引当・出荷・請求・転記・決済・訂正といった現在のTransactionは、どこへ残すべきなのか。複数法人をまたいだ履歴・分析データ・AIが使う業務上の意味・Agentの判断根拠は、どこで管理すべきなのか。

今回は、この問いに答えます。

今回の結論

ERPは、現在の取引を確定し、更新し、訂正するOperational Truthを持つ。Fabric/OneLakeは、履歴・横断分析・Semantic・Evidenceの再利用・AI Grounding/Learningへ接続する。

OneLakeにデータが存在することと、そのデータが業務上の更新正本であることは、同じではない。

次の三つの表現は明確に否定しなければならない。①「OneLakeにコピーされたから正本」ではない。②「Goldだから業務的に正しい」ではない。③「Semantic Modelがあるから業務ルールを再現できる」ではない。


ERP×AIシリーズ|CRMとERPの間に、企業変革がある(プロローグ+全12回)
第8回:ERPのデータ設計 — 業務データ・マスターデータ・証跡をどう分けるか
本稿
第9回:AIエージェントの動かし方 — 読む・推奨・実行・確定、自律性をどの段階で設計するか
公開予定
第10回:ガバナンスと人の責任 — 承認・職務分掌・停止・ロールバック・監査証跡の設計
公開予定
第11回:経営幹部が読むべき指標 — 利益・資金・運転資本・回復力・意思決定速度
公開予定
第12回(総集編):ERPを企業判断と実行学習の中枢へどう変えるか
公開予定

Data Responsibilityの設計から始める

第7回で扱ったApproval・Posted Entry・Correction・Agent Task・Audit Evidenceは、業務処理の中で生まれます。第8回では、そのEvidenceを単に保存するのではなく、何をOperational ERPに残し、何をFabricへ渡し、どのように再表示し、どのようにAIへ参照させるかを整理します。

大切なのは、データを「ERPかFabricか」という二択にしないことです。同じ受注でも、ERPには現在のOpen QuantityとReservation Stateがあり、Fabricにはその受注が過去にどのような納期変更・引当不足・承認・出荷遅延・訂正を経たかという履歴があります。それぞれが異なる責任を持ちます。

AI Native ERP 6層フレームワーク
図1:AI Native ERPの6層フレームワーク。第8回ではData責任設計(Layer 2)とFabric・Semantic・Evidence(Layer 3〜5)の接続に注目する。(※本図はDX365Lifeの編集概念です)

FabricはCRMとERPの経験をAIへ渡す
図2:FabricはCRMとERPの「経験」をAIへ渡す。Operational SystemでTransactionの事実を確定し、Fabric/OneLakeで履歴・Evidence・Semanticsをつなぎ、次の判断へ戻す——これが第8回のData設計の核心である。(※本図はDX365Life編集モデルです。Microsoft公式アーキテクチャを基に独自編集)
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ERP Dataは六つの責任に分けて考える

ERP Dataの責任は、単一のデータベースに全部入れれば解決するものではありません。データが生まれた目的・更新主体・訂正の方法・AIからの利用方法が、責任ごとに異なるからです。

表1:ERP Data Responsibility — 六つの分類と特性

データの責任 主要な役割 更新主体 訂正方法
Operational Data 受注・在庫・引当・Ledger・Settlementの現在状態 ERPの業務機能・承認済みAgent 取消・返品・逆仕訳・再転記
Master/Golden Data Customer・Vendor・Item・Accountの識別・意味・品質 各System of RecordとData Owner 承認されたMaster変更・Mapping改訂
Historical/Time-aware 過去状態・変更履歴・As-of再現 ERP履歴とFabric側の履歴化処理 上書きせず新版・訂正を関連付け
Analytical/Semantic Fact・KPI・Measure・集計・比較 BI/Analyticsチーム 再計算・再処理・モデル版更新
Evidence/Audit Source・判断・承認・転記・訂正の証跡 ERP・Agent基盤・監査基盤 原証跡は保持し訂正を追加
Learning/AI Grounding 過去のException・Decision・Correction・Outcome 業務Owner・Data/AI Owner 除外・再分類・Rule/Prompt改訂

ここでいうGolden Dataは、FabricのGoldレイヤーに置かれたデータという意味ではありません。意味・品質・正本・識別子・履歴・利用条件・責任が整理され、複数用途で信頼して再利用できる状態を指します。この定義では、Golden DataがERP・Dataverse・Fabricのどこに物理配置されるかよりも、誰が何を訂正し、どの識別子と履歴を保証するかが重要です。

ERP Data Responsibility Map
図3:ERP Data Responsibility Map。左図「責任分界」は六つのデータ責任とFabric/OneLakeへの一方向の流れを示す。右図「Current State vs As-of State」は、同じCustomer/Itemでも法人と時点でデータが変わることを具体例で示す。(※本図はDX365Lifeの編集モデルです。Microsoft公式アーキテクチャではありません)
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Operational TruthとAnalytical/Learning Truthは同じではない

例えば、ある販売注文に10個の在庫が必要だとします。ERPは、会社・倉庫・Site・在庫Status・Reservation Hierarchy・Credit・価格・税・会計期間などの業務ルールを評価し、何個を引き当て、いつ出荷し、どの法人で請求し、どのLedgerへ転記するかを決定します。この現在Stateを変更できるのは、ERPの業務ロジックとAuthorityを通った処理だけです。

Fabricは、その注文を他法人・他倉庫・仕入先納期・過去の欠品・販売予測・顧客優先度・出荷実績と横断して分析できます。しかし、Fabric上のGoldテーブル・Power BI Semantic Model・Direct Lakeレポートが「この注文を出荷済みにする」「Settlementを確定する」と判断してよいわけではありません。

Direct LakeはOneLake上のDelta TableをPower BI Semantic Modelから効率的に利用するためのStorage Modeです。分析性能とデータ鮮度を改善しますが、Posting Authorityや業務更新責任を提供する機能ではありません。

ここまでを一言でまとめると

FreshであることはAuthoritativeであることを意味しない。Goldに整備されたデータであることも、Posting Authorityを意味しない。

Operational Truth ≠ Analytical/Learning Truth
図4:Operational Truth ≠ Analytical/Learning Truth。Order・Inventory・Postingの現在状態・Business Rule・訂正・Commit/PostのAuthorityはOperational ERPに残る。Fabric側からERP側へ戻るのはRecommendationやException Signalであり、更新Authorityではない。(※本図はDX365Lifeの編集モデルです。Microsoft公式アーキテクチャではありません)
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Legal EntityとEffective Dateを失うと、過去のTransactionを誤解する

ERPでは、CustomerやItemの名前が同じでも、意味が同じとは限りません。法人が違えば、Customer Account・通貨・税区分・支払条件・価格・原価・勘定科目・会計カレンダー・在庫評価・取引制限が異なる場合があります。また同じ法人でも、それらの属性は時間とともに変化します。

現在のCustomer MasterだけをEnterprise IDへ統合し「これがGolden Customer」と扱うと、過去取引を現在の属性で解釈してしまいます。3年前のInvoiceを現在のSales Region・現在のCredit Group・現在のAccount Mappingで集計すれば、当時の判断や会計責任を正しく再現できません。

Dynamics 365 finance and operations appsの日付有効Entityでは、ValidFrom/ValidToを用い、現在値・指定日時点・指定期間のQuery Modeを区別できます。ただし、すべてのEntityやOData経路が同じようにAs-of取得できるわけではないため、製品機能と分析側の履歴設計を混同してはいけません。

ERPからFabricへ渡す際は、少なくとも次の項目を区別します。

表2:ERP→Fabric間で保持すべき時点・識別子の項目

項目 意味と設計上の注意
Legal Entity/Company 通貨・税・Calendar・Account境界を保持する基本単位
Source System IDとSource Record ID Fabricへの複製後もSource側の識別子を保持する
Enterprise IDとのMapping 同一概念が複数Sourceにある場合の統合識別子
Document Date 業務取引が発生した日付
Posting Date ERPに転記された会計上の日付
Effective Date/ValidFrom/ValidTo Masterやポリシーの有効期間
Extraction/Replication Timestamp Fabricへ取り込まれた時刻。LatencyとReplayに必要
Correction/Reversalとの関連 逆仕訳・取消・返品が元Documentとどう対応するか
Rule・Mapping・Semantic ModelのVersion 計算ロジックが変更された時点を追跡するために必要

在庫や受注の「現在値」を保存するだけではAs-of再現はできません。状態変化・Mapping・時点Master・訂正関係を一緒に保持して、初めて「その時点で、なぜその結果になったか」を説明できます。

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ERPからFabricへはどう接続するのか

2026年9月23日時点では、製品ごとにFabricへの経路と性質が異なります。接続の技術方式を最初に決めることが誤りの始まりです。Source of Truth・Data Contract・ID・Legal Entity・Effective Dateを確定してから、Latency・Correction・ReplayなどのRequirementに合う接続方式を選びます。

表3:製品別・ERP→Fabric接続方式と設計上の注意

対象 代表的な経路 設計上の注意
Dataverse/CE apps Link to Microsoft Fabric 選択TableをLakehouseへ接続。変更追跡・同期Latency・Schema変更・Region・Capacityを確認
finance and operations apps Dataverse経由のFabric Link、Business Performance AnalyticsのShortcut等 対象Tableや分析Modelにより経路が異なる。ERP更新はFabric側から行わない
Business Central API/Dataflow等に加え、NavidaのBC2Fab Fabric WorkloadによるOpen Mirroring(GA) BC2FabはPartner Workload。Business Central標準機能そのものとは区別する
外部Database Mirroring/Open Mirroring 継続ReplicationされたDelta Copy。Source Databaseの更新責任は移動しない
外部Data Lake間 Shortcut データをコピーせず参照。移動・権限・可用性・Schemaを管理
分析提供 Lakehouse・Warehouse・Direct Lake・Semantic Model 性能・粒度・Security・Capacity・Refresh/Framingを設計

ShortcutとMirroringは同じものではありません。Shortcutは選択したTable・Folder・FileをSourceに残したままOneLake Namespaceへ公開します。MirroringはDatabase/CatalogをFabricへ追加し、Sourceに応じて参照または継続Replicationを行います。どちらの方式を選んでも、Source側の更新責任はFabricへ移転しません。

Operational ERP → Fabric/OneLake → Semantic/AI および Evidence Chain to Learning
図5(左):Operational ERP → Fabric/OneLake → Semantic/AIへの責任ある流れ。更新正本はERPに残り、分析・Semantic・AI Groundingへの接続はFabricが担う。(右)Evidence Chain to Learning。取引の発生から意味づけ・提案・アクション・レビュー・転記・訂正・結果・学習までの9段階で証跡をつなぐ。(※本図はDX365Lifeの編集モデルです。Microsoft公式アーキテクチャではありません)
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Evidence ChainをFabricへ接続する

Evidence Chainは、単なるAudit Log一覧ではありません。

次の9段階で構成されます。

Source → Interpretation → Suggestion → Action → Reviewer → Posted Entry → Correction → Outcome → Learning

この連鎖を、Transaction ID・Document ID・Ledger Entry ID・Agent Task ID・Approval ID・Actor・Timestamp・Legal Entity・Rule Version・Model/Prompt Version・Before/After・Reason Codeによって関連付けます。

原本となるPosted Document・Ledger Entry・Approval履歴・監査ログは、それぞれのSource Systemに残します。Fabricは、それらを置き換えるのではなく、業務・Agent・Telemetry・Outcomeを横断して調査・分析・長期再利用する場所として使います。

FabricのLineage ViewはWorkspace内のItem間の関係と一段上流のSourceを表示します。一方、PurviewへFabricをScanした場合、Power BI以外のFabric ItemはItem LevelのMetadata/Lineageであり、LakehouseのTable/FileのSub-item MetadataはPreview、Sub-item Lineageは未対応です。したがって、Lineage表示だけでEvidence Chainが自動完成すると考えてはいけません。

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Semantic ModelとFabric IQ/Ontologyは何を担うのか

Power BI Semantic Modelは、FactとDimension・Relationship・Measure・KPI・Securityを通じて分析の意味を提供します。しかし、Semantic ModelがERPの失われた業務ルールを自動的に復元するわけではありません。

Fabric IQのOntologyは、2026年9月23日時点ではPreviewとして扱うのが安全です。Customer・Vendor・Item・Order・Invoice・Ledger・Projectなどの業務概念・Properties・Relationships・Rules・MetricsをData SourceへBindingし、人・Application・AI Agentが共有するBusiness Contextを提供する方向性が示されています。

これは非常に重要な進化です。しかし、Ontologyへ「Order」「Inventory」「Available-to-Promise」と書いただけで、ERPのReservation Policy・Credit Check・Posting Group(Business Central)やPosting profiles(FO系)・Tax・Period Closeが再現されるわけではありません。Semantic/Ontologyは意味と関係を提供します。実行可否とCommit/PostのAuthorityはOperational ERPに残ります。

なお、SQL database in Microsoft FabricはGAとなり、Azure SQL Database Engineを基盤とするOperational Databaseとして利用できます。しかし、Fabric上のOperational Databaseが存在することと、Dynamics 365やBusiness CentralのLedger・Settlement・Inventoryを代替できることは別問題です。

Semantic Model / Fabric IQ Ontology
図6:Meaning Stack|Operational Rule → Semantic Model → Ontology → AI/Agent。Power BI Semantic ModelはMeasure・Hierarchy・Relationshipを持つCurated Analytics Layer、Fabric IQ Ontology(Preview)はEntity・Property・Relationship・Rule・Data Bindingを通じて共有Business Contextを与える。AI/Agentはその意味を使って理解・説明・推奨できるが、Commit/PostのAuthorityと最終的なBusiness RuleはOperational ERPに残る。(※Fabric IQ OntologyはPreview。本図全体はDX365Life編集モデルであり、Microsoftの正式参照アーキテクチャではありません)

AI Groundingは「データを全部見せること」ではない

AIへ経験を渡すとは、過去データでModelを勝手に再学習させることではありません。AIが、現在のTransaction State・過去のException・当時のDecision・Authority・Correction・Outcomeへ、根拠と権限を伴って到達できるようにすることです。

Fabric Data Agentは、Lakehouse・Warehouse・Power BI Semantic Model・KQL Database・Mirrored Database・Ontology等に接続し、利用者の権限に基づいてSQL・DAX・KQLを生成・実行できます。一方、Data Modificationは許可されていません。

例えば納期例外では、AIは次のように参照を分けます。

AI Groundingの参照設計 — 納期例外の例

① ERPから 現在の在庫・Reservation・Open Purchase Order・Customer Promiseを取得する

② Fabricから 過去の欠品・仕入先遅延・代替品・分納・Expedite費用を取得する

③ Semantic Model/Ontologyから OTIF・Priority Customer・Item Relationの意味を得る

④ Authorityから 変更可能範囲・承認者・金額上限を確認する

⑤ Correctionから 過去の成功した対応と失敗した対応を区別する

⑥ Action 根拠付きRecommendationを提示し、許可された場合のみERP APIを通じてActionを実行する

OutcomeとCorrectionは、次回の検索・評価・Rule・Prompt・Example Queryを改善するために使います。これがLearningであり、無条件の自動再学習ではありません。

AI Grounding Canvas
図7:AI Grounding Canvas。Current Truth・Historical Context・Semantic Context・Authority Boundary・Evidenceの5つの根拠領域から、Grounding Query→Rule/Permission Check→Recommend→Human/Agent Review→ERP Commit/Postへ進む設計。根拠付きRecommendationと許可されたActionが最終出力となる。(※本図はDX365Lifeの編集モデルです。Microsoft公式アーキテクチャではありません)
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実案件で使う設計チェックリスト

ERPとFabricを接続できることは、Data Productが本番運用可能であることを意味しません。Copy/Pipeline・Mirroring・Shortcut・Linkなどの接続手段を最初に決めることが誤りの始まりです。まずSource of Truth・Data Contract・ID/Legal Entity・Effective Dateを確定し、その後でLatency・Correction・Replay・Security・Evidenceの要件に合う接続方式を選びます。

ERP → Fabric Data Lifecycle Gates
図8:ERP → Fabric Data Lifecycle Gates。Source of Truth・Data Contract・ID/Legal Entity・Effective Date・Latency・Correction・Replay・Lineage/Security・Evidence・Owner/Operationの10ゲートを通して、ERPデータを再現・訂正・運用可能なData Productへ変える。接続方式は出発点ではなく、責任・時点・訂正要件を確定した後に選ぶ。(※本図はDX365Lifeの編集モデルに基づく実装レビュー用の概念図です)

表4:AI Native ERP Data Design — 13の設計チェックリスト

確認項目 確認すべき問い
Source of Truth 現在Stateを更新・訂正できるSystemはどれか
Data Contract Table・Field・型・必須値・意味・Schema変更を誰が保証するか
ID Source ID・Enterprise ID・Document ID・Entry IDをどう対応付けるか
Legal Entity Company・Currency・Tax・Calendar・Account・Security境界を保持しているか
Effective Date Document・Posting・Transaction・ValidFrom/ValidToを区別しているか
Refresh/Latency 業務判断に必要な鮮度と、実際の同期遅延を区別しているか
Correction 取消・逆仕訳・返品・Master訂正を下流へどう伝播するか
Replay 障害後に原本から再処理できるか。二重計上を防げるか
Lineage SourceからReport/Agent回答までの変換とVersionを追跡できるか
Security/Purview Source権限・Workspace・RLS/OLS・Label・Retentionを整合させたか
Evidence Actor・Rule・Model・Prompt・Approval・Before/After・Reasonを関連付けたか
Cost/Capacity Replication・Transform・Direct Lake・Query・AI利用を容量計画へ含めたか
Owner Operational・Master・Semantic・Evidence・AIのOwnerを分けているか
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ここまでのData Responsibility設計を、シリーズ全体のPromise to Outcomeの流れと、Dynamics 365エコシステム全体の文脈で改めて確認します。

AI Native ERP Series Promise to Outcome
図9:AI Native ERP Series|Promise to Outcome。第8回のData Responsibility設計は、このシリーズ全体のOperational Dataとしての責任設計を支える基盤となる。(※本図はDX365Lifeの編集概念です)

Dynamics 365 統合全体像 CRM ERP AI Data Microsoft Cloud
図10:Dynamics 365 統合全体像|CRM × ERP × AI × Data × Microsoft Cloud。Operational DataはERP・CRMで確定し、Fabric/OneLakeがEnterprise Experience Layerとして履歴・Semantic・Evidence・AI Knowledgeをつなぐ。(※本図はDX365Life編集モデルです。Microsoft公式アーキテクチャを基に独自編集)

まとめ—OneLakeを「すべての正本」にしない

Fabric/OneLakeの価値は、すべてを一つの更新Databaseへ統合することではありません。Operational ERPが現在のTransactionとPosting Responsibilityを持ったまま、Fabricが履歴・横断分析・Semantic・Evidence・AI Grounding/Learningを接続できることに価値があります。

第8回のポイント — 六つの原則

① Operational TruthはERPで確定する — Posting・Settlement・Reservationの更新責任はERPの業務ロジックにある

② Golden Dataは場所ではなく状態である — FabricのGoldレイヤーにあることとGoldenであることは別

③ HistoryはLegal EntityとEffective Dateを失わない — 過去時点の再現にはIDとMasterの時点情報が必要

④ Semanticは意味を与えるが、Posting Authorityを持たない — Ontologyへ業務概念を定義しても、業務ルールが自動復元されるわけではない

⑤ Fabricは監査証跡を代替せず、Evidenceを横断して再利用する — 原証跡はSource Systemに残す

⑥ AI Learningは根拠付きの過去DecisionとOutcomeへ到達できる状態を作る — 無条件の自動再学習ではない

CxO先行指標(DX365Life編集指標)

Data Freshness vs Posting Responsibility Rate 分析データの鮮度が高まるほどERP側の更新責任が曖昧になっていないか

Evidence Completeness Rate Evidence Chainの全9段階で連鎖が途切れないか

Correction Propagation Rate ERP側の訂正・取消がFabric・Semantic・AIへ正しく伝播しているか

AI Grounding Query Success Rate 根拠付きRecommendationがHuman Reviewを経てActionへ到達する割合

Replay Success Rate 障害後に原本から再処理でき、二重計上が発生しない割合

AI Native ERP Data Design Canvas|7 Questions(DX365Life編集モデル)

Q1 Source 何がOperational Truthを持ち、誰が現在Stateを更新・訂正するか

Q2 Data Contract 誰がSchema・意味・変更・Versionを保証するか

Q3 ID/Legal Entity Source IDとEnterprise IDをどう対応付け、Legal Entityの境界をどう保持するか

Q4 Effective Date Document・Posting・ValidFrom/ValidToを区別し、As-of再現に必要な時点情報を保持しているか

Q5 Correction 訂正・取消・逆仕訳・返品をFabric・Semantic・AIへどう伝播するか

Q6 Evidence Actor・Rule・Model・Approval・Before/After・Reasonを連鎖させ、End-to-End Traceabilityを確保しているか

Q7 Owner Operational・Master・Semantic・Evidence・AI GroundingのOwnerを分け、責任を明示しているか

Agentへ自律性を与える前に、何を読ませ、どのTruthを根拠にし、どのAuthorityで動かし、どのEvidenceを残すかを決めなければなりません。その設計が整って初めて、AgentのOperational Autonomyが機能します。

ここまでを一言でまとめると

OneLakeに存在することは、Operational Truthであることを意味しない。

Goldに整備されたデータも、Posting Authorityを持たない。

Data設計で最初に決めるのは接続方式ではなく、誰が何を訂正でき、どのEvidenceをどこに残すかです。

一つ聞いてもいいですか?

あなたの会社では、ERPのデータをFabricへ接続するとき、Legal EntityとEffective Dateの設計を最初に決めていますか。それとも、接続方式から先に選んでいますか。

3年後のAuditで「その時点でなぜその結果になったか」を説明できますか。そして、AIが使う「経験」とは、どのEvidenceから何を学ぶものだと、あなたの組織では定義していますか。

※「Operational Truth」「Analytical/Learning Truth」「Evidence Chain」「AI Grounding Canvas」「AI Native ERP Data Design Canvas」「Data Responsibility Map」はDX365Lifeの編集概念・編集モデルです。Microsoft Fabric・OneLake・Lakehouse・Warehouse・Direct Lake・Semantic Model・Shortcut・Mirroring・SQL database in Microsoft Fabric・Microsoft Purview・Fabric Data Agent・Fabric IQ・OntologyはMicrosoftの製品・機能名称です。Fabric IQ OntologyはPreview機能として、提供範囲・Region・Capacity・制限を採用時点で再確認してください。Posting profiles(FO系)とPosting Group(Business Central)は異なる用語です。

第8回のポイント — データ設計の六つの原則

① Operational TruthはERPで確定する — Posting・Settlement・Reservationの更新責任はERPの業務ロジックにある

② Golden Dataは場所ではなく状態である — FabricのGoldレイヤーにあることとGoldenであることは別

③ HistoryはLegal EntityとEffective Dateを失わない — 過去時点の再現にはIDとMasterの時点情報が必要

④ Semanticは意味を与えるが、Posting Authorityを持たない — 業務ルールが自動復元されるわけではない

⑤ FabricはEvidenceを横断して再利用する。原証跡はSource Systemに残す

⑥ AI Learningは根拠付きの過去DecisionとOutcomeへ到達できる状態を作る — 無条件の自動再学習ではない

AI Native ERPシリーズ全体像
図10:AI Native ERPシリーズ全体像。第8回ERP Data / FabricはOperational Truth・Analytical Truth・Evidence・AI Groundingのデータ責任設計を扱う。

最初に問うべきこと

あなたの会社では、ERPのデータをFabricへ接続するとき、Legal EntityとEffective Dateの設計を最初に決めていますか。それとも、接続方式から先に選んでいますか。3年後のAuditで「その時点でなぜその結果になったか」を説明できますか。そして、AIが使う「経験」とは、どのEvidenceから何を学ぶものだと、あなたの組織では定義していますか。

次回は、データ設計の先へ進みます。AgentをOperational Autonomyとして設計するとはどういうことか。

次回を読む前に

・自社のERP業務で、AgentがReadからPostまでのどの段階まで自律できると考えているか。その根拠(Evidence・Authority・Exception設計)は整っているか

・「Agentが動いた」と「Agentが正しく動いた」を区別するためのHuman Review Rateをどう定義するか

・自律性を段階的に拡大するとき、どのActionからAgentへの委任を始め、どのConditionで委任を拡大するかを設計したことがあるか


Let’s Enjoy our DX365LIFE!


次回予告

第9回|Agent Operating Model — ReadからPostまで、自律性をどの段階で設計するか

ERP Data / Fabricでは、Operational Truth・Golden Data・Evidence・AI Groundingのデータ責任設計を扱いました。Agent Operating Modelでは、ReadからSummarize・Recommend・Prepare・Update・Commit・Post・Payまで、Agentへどの段階で自律性を与え、どのConditionで人へ戻すかを設計します。テーマは、Action単位のAutonomyとHuman-in-the-Loopの境界設計です。

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  • dx365jp
  • 25年ほど、Microsoft Dynamics 365 【ERP(NAV/AX)+CRM】の導入コンサルティングに従事し、日本を含む34か国において導入コンサルティングを経験してきました。グローバル環境における“プロジェクト”と“マーケティング”を生業としております。

    最近は、【CRM/MKTG(攻めのDX)⇔ ERP(守りのDX)】+【ローコード】というDX365な活動に奮闘中です。Microsoft Dynamics 365 ビジネスで地球を92周中です。#DX365 #DynamicsIoT

    Microsoftの運営する外部技術者グローバル組織「Microsoft MVP(*日本163名/世界3674名)・ Microsoftのトラスティッドアドバイザーである「Microsoft Regional Director (*日本4名/世界167名)」として、複数のITコミュニティーにて活動中。(*2026/08/08時点)

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