GIIAS 2026レポート|電動化の嵐が吹くインドネシア自動車市場の今

こんばんは。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
“室長”こと吉島良平(Microsoft MVP for Business Applications | Microsoft Regional Director)です。
今日は、ジャカルタのホテルから書いています。昨日・今日と、波乱が続いた週末でした。
昨日(土曜日)朝8時、火災報知器が鳴った
昨日(8月1日・土曜日)の朝8時ごろ、宿泊先のプルマン・セントラルパーク・ジャカルタで火災報知器が鳴りました。
最初は一度鳴って止まったので、「誤報かな」と思い様子を見ていました。ところが、数分後にまた鳴り始め、今度は止まる気配がない。「これはヤバい」と直感し、貴重品だけを手に取って非常階段へ向かいました。
私の部屋は3階でしたが、このホテルはロビー階の天井が非常に高く、3階でも通常のホテルの15階ほどの高さがあります。非常階段を降りながら、頭に浮かんだのは同僚のJoeのことでした。彼の部屋は11階。私の3階とは比べものにならない高さです。「今ごろ、あの長い階段を下りているんだろうか。無事に出られているか」——そんなことを考えながら、私自身も一段一段下りました。ホテルの外に出て、人混みの中に彼の顔を見つけたとき、正直ホッとしました。
現地メディアによれば、火災は午前7時54分(現地時間)に発生。地下P4フロアが出火元で、P5フロアの非常階段から濃い煙が検知されたとのこと。消防車14台・消防士70名が出動し、ロビーの庇(キャノピー)は焼け落ちて鉄骨だけが残りましたが、比較的早く鎮火しました。
ジャカルタの8月の朝は蒸し暑く、じりじりと日差しが強くなる中、しばらくホテル前でJoeと二人で立ち尽くしていましたが、やがて近くのスターバックスに退避して時間をつぶすことにしました。
コーヒーを飲みながら、「人生いろいろあるな」とぼんやり思っていました。FY27 Leaders Summitを終えたばかりで、ジョグジャカルタから移動して、寝不足が続いているところへのこのアクシデント。旅の多い仕事をしていると、こういう朝も起きます。
結果的には、約2時間の屋外待機を経て、ホテルスタッフのご厚意で裏口からエレベーターに乗せてもらい、朝食会場でゆっくり食事をとることができました。状況を考えれば、十分すぎるくらいラッキーでした。
ホテル火災避難、実はこれで4回目
実は、ホテルで火災報知器が鳴って外に避難した経験は、今回が4回目です。韓国・アメリカ・フィリピン、そしてインドネシア。まさかこれほど経験することになるとは思っていませんでした。
4回経験して学んだことを、備忘録として残しておきます。
- 2回連続で鳴ったら即動く ── 1回目が止まっても油断しない。2回目が始まった瞬間に行動開始。
- 大事なものは30秒で持ち出せる状態に ── パスポート・財布・PCはひとまとめにしておく習慣を。
- 一度外に出ると数時間は戻れない ── 今回も2時間。余裕を持った準備が命綱になる。
- 戻りのエレベーターはカオス ── 全館一斉帰還なので、冷静に列を待つしかない。
- ホテルスタッフとの関係は大事 ── 日ごろのコミュニケーションが、こういうときに生きる。
そして、出張中の寝不足はできる限り解消しておくこと。これが今回の一番の反省かもしれません。判断力が落ちている状態でのアクシデント対応は、やはり心もとない。
翌日曜日—GIIAS 2026へ
そして今日(8月2日・日曜日)、気持ちを切り替えてGIIAS 2026(通称:ギアス/ガイキンド・インドネシア・インターナショナル・オートショー)に向かいました。

インドネシアには、自動車業界が注目する大型モーターショーが年に2回開催されます。
ひとつはIIMS(Indonesia International Motor Show)で、毎年2〜3月頃にジャカルタ北部のJIExpo Kemayoranで行われます。主催はDyandraという民間イベント会社で、GAIKINDO(インドネシア自動車工業会)の正式メンバー以外の参加も認められているため、輸入車ディーラーや自動車用品・カスタムカー業者なども出展します。エンターテインメント要素が強く、試乗イベントや周辺産業の展示も充実した「お祭り」的な色合いがあります。
もうひとつが今回訪れたGIIAS(GAIKINDO Indonesia International Auto Show)で、毎年8月にICE BSD Cityで開催されます。出展者はGAIKINDOの正式会員OEMが中心で、OICA(国際自動車工業連合会)からも国際認定を受けたインドネシア唯一の公式国際モーターショーです。新型車のワールド・アジアプレミアや最新技術の発表が集中し、業界関係者にとっては「ビジネスの場」としての性格が強い。
この2つは、もともとGAIKINDOとDyandraが共同で運営していたIIMSが2015年に決裂したことで生まれました。GAIKINDOが独自にGIIASをICE BSDで立ち上げ、DyandraはそのままIIMSを継続。現在は事実上、「公式・国際標準のGIIAS」と「大衆向け・多様性のIIMS」という棲み分けになっています。
Technosoft Automotiveは自動車業界のDXを事業の軸に置いており、インドネシアはASEAN最大の自動車市場として私たちのビジネスにとっても戦略的に重要な位置を占めています。ジャカルタ滞在中にGIIASが開催されているとわかった以上、行かない理由がありませんでした。
GIIASとは ── 40年の歴史を持つアジア最大級のオートショー
GIIAS(ギアス)の歴史は1986年に遡ります。GAIKINDOが「GAIKINDO Car Exhibition」として初めて自動車展示会を開催したのが始まりで、当時の参加ブランドはわずか13社、会場はジャカルタ市内のジャカルタ・コンベンション・センターでした。
その後、Jakarta Auto Expo(1989年)、Gaikindo Auto Expo(2000年)、Indonesia International Motor Show(2006年)と名称を変え、2006年には国際自動車工業連合会(OICA)からインドネシア唯一の国際水準自動車展示会として認定を受けました。2015年にGIIASと改称し、同年から現在の会場ICE BSD Cityへ移転。今年2026年は第33回目の開催にあたります。
1986年の13ブランドが、今や65ブランド以上。インドネシア自動車市場の成長をそのまま映し出すような歴史です。
会場:BSD City ── ジャカルタ郊外に生まれた計画都市
GIIASの会場ICE(Indonesia Convention Exhibition)があるのは、BSD City(ブミ・スルポン・ダマイ)です。ジャカルタ中心部から南西へ約30〜40km、車で渋滞がなければ45分程度ですが、ラッシュ時は1時間半以上かかることもあります。
BSD Cityは、Sinar Mas Landが1984年に計画し1989年から開発を本格化させた大規模計画都市です。総面積は約6,000ヘクタール——パリの約半分の広さに、住宅・商業・教育・テクノロジーが一体化したまちを作るという壮大なプロジェクトでした。現在は人口約50万人、大学9校・学校250校以上が立地し、25ヘクタールのグリーンオフィスパークも整備されています。
近年はIT・スタートアップの集積地としての顔も持ち始めており、Sinar Mas Landが整備する約26ヘクタールの「Digital Hub」はインドネシアのシリコンバレーを目指す拠点として注目されています。ジャカルタの渋滞やオフィスコストを避け、外資系企業がBSDに拠点を移すケースも増えています。実はTechnosoftもBSD Cityに支店を構えており、私たちにとっても縁のある街のひとつです。
会場のICE BSD Cityは、インドネシア最大かつ東南アジア屈指のコンベンションセンターで、GIIASをはじめ大規模な国際展示会が毎年開催されています。
インドネシア自動車市場 ── ASEAN最大市場が電動化の転換点に
GIIASを理解するには、インドネシアの自動車市場の現状を把握しておく必要があります。
インドネシアは東南アジア最大の自動車市場。年間販売台数は100〜120万台規模で長年推移してきましたが、2020年のCOVID禍で約53万台まで激減し、2022年に100万台を回復。しかしその後は政策変更・経済減速・購買力低下が重なり、2024年は約86.6万台、2025年は約80.4万台と2年連続で下落しました。2026年は上半期に前年比+15.9%と力強く反転しており、市場回復への期待が高まっています。
| 年 | 販売台数(万台) | 主なトピック |
|---|---|---|
| 2015 | 約101万 | 市場安定期。ASEAN首位 |
| 2016 | 約106万 | 前年比+4.8%。回復基調 |
| 2017 | 約110万 | 着実な成長継続 |
| 2018 | 約120万 | 過去最高水準に迫る |
| 2019 | 約114万 | 前年比▲5%。景気減速の影響 |
| 2020 | 約53万 | COVID-19で激減。前年比▲56% |
| 2021 | 約89万 | 前年比+67%。V字回復 |
| 2022 | 約105万 | 100万台回復。政府EV優遇開始 |
| 2023 | 約101万 | 前年比▲4%。成長鈍化 |
| 2024 | 約87万 | 前年比▲14%。BYDが台頭 |
| 2025 | 約80万 | 前年比▲7%。EV急拡大の中での全体低迷 |
| 2026 H1 | 前年比+15.9% | 回復基調に転換 |
出典:GAIKINDO(インドネシア自動車工業会)
▶ インドネシア乗用車総販売台数推移(万台)
▶ ブランド別販売台数(千台) 2021 / 2022 / 2023 / 2024 / 2025
※2023年BYD・2025年Honda・Suzuki・BYDは推計値 出典:GAIKINDO
ブランド別マーケットシェア
長年にわたって日系ブランドが圧倒的に支配してきたインドネシア市場ですが、ここ2年で構図が変わり始めています。2024年のブランド別シェアは下表の通りで、Toyota・Daihatsuを束ねるAstraグループだけで市場の約55%を占めています。
| ブランド | NSC | 2024
シェア |
2025
シェア |
備考 |
|---|---|---|---|---|
| Toyota | PT Toyota Astra Motor(TAM) | 33.4% | 31.2% | Astraグループ。700拠点超 |
| Daihatsu | PT Astra Daihatsu Motor | 18.8% | 16.3% | Astraグループ |
| Honda | PT Honda Prospect Motor(HPM) | 10.9% | 〜8% | Honda 51%・Prospect 49%合弁 |
| Mitsubishi | PT MMKSI(Krama Yudhaグループ) | 8.3% | 8.9% | LCV・SUVに強み |
| Suzuki | PT Suzuki Indomobil Sales(SIS) | 7.7% | 8.3% | Indomobilグループとの合弁 |
| BYD | BYD Indonesia(Auto Prima) | 1.8% | 5.8% | 前年比+222%。EV市場シェア約48% |
BYDの2024→2025の伸びは特筆すべきで、わずか1年でシェアを3倍以上に拡大しました。市場全体の台数が縮小する中でのシェア急拡大ですから、日系OEMからの乗り換えが起きていることは数字が示しています。2026年はEVシェアが全体の15%に達しており、この流れは加速こそすれ、止まる気配はありません。
最も注目すべきはEVの急拡大です。インドネシア政府はEV輸入・販売への贅沢品税を100%免除するなど積極的な後押しを続けており、2030年までに国内EV生産60万台・路上EV200万台を目標に掲げています。
OEM・NSC・ディーラーの構造
インドネシアの自動車流通は、OEM → NSC(ナショナル・セールス・カンパニー)→ ディーラーという3層構造で成り立っています。日系OEMは現地パートナーとの合弁でNSCを設立するのが基本パターンです。
最大勢力はAstraグループ(PT Astra International)で、トヨタ・ダイハツ・いすゞ・UDトラックスをまとめて管轄し、市場の約55%を実効支配しています。日系以外ではHyundaiが2021年にインドネシア国内工場(HMMI)を稼働させ、急速にシェアを伸ばしています。
中国系ブランドはNSC機能を自社完結させる構造が多く、BYD・Wuling・Cheryそれぞれが独自のディーラー網を整備しています。
| ブランド | NSC / 現地法人 | 主要株主 | 2024台数 | 2025台数 |
|---|---|---|---|---|
| Toyota | PT Toyota Astra Motor (TAM) | Astra 51%・Toyota 49% | 288,982 | 250,431 |
| Daihatsu | PT Astra Daihatsu Motor | Astraグループ | 163,032 | 130,677 |
| Honda | PT Honda Prospect Motor (HPM) | Honda 51%・Prospect 49% | 94,742 | 56,500 |
| Mitsubishi | PT MMKSI(Krama Yudhaグループ) | Mitsubishi・Krama Yudha | 72,217 | 71,781 |
| Suzuki | PT Suzuki Indomobil Sales (SIS) | Suzuki・Indomobilグループ | 66,809 | 66,345 |
| Hyundai | PT Hyundai Motors Indonesia (HMI) | Hyundai Motor 100%(国内工場あり) | 〜30,000 | 19,007 |
| Isuzu | PT Isuzu Astra Motor Indonesia | Astraグループ | 〜36,000 | 25,121 |
| Hino(商用) | PT Hino Motors Sales Indonesia | Hino・Astraグループ | — | — |
| Nissan | PT Nissan Motor Indonesia | Nissan・Indomobilグループ | 〜5,000 | 縮小傾向 |
| Mazda | PT Eurokars Motor Indonesia | Eurokarsグループ(2017年〜) | 〜3,000 | 少量 |
| Subaru | PT Motor Image Indonesia | Subaru正規輸入 | 少量 | 少量 |
| Wuling | PT SGMW Motor Indonesia | SAIC・GM・Wuling合弁(国内工場あり) | 〜20,000 | 〜30,000 |
| BYD | PT BYD Motor Indonesia(Auto Prima) | BYD Auto 直販構造 | 15,429 | 46,711 |
| Chery | PT Chery Sales Indonesia | Chery Auto | 少量 | 19,391 |
| MG Motor | PT MG Motor Indonesia | SAIC Motor | 〜5,000 | 少量 |
プレミアム・輸入車ディストリビューター
量販ブランド以外にも、プレミアム・輸入車を担うディストリビューターが存在します。インドネシアの輸入車市場は台数こそ限られますが、OEM本社からの注目度は高く、デジタルマーケティングや顧客体験の先進事例がしばしばここから生まれます。
InchcapeインドネシアはMercedes-Benz・Jaguar・Land Rover・Harley-Davidsonのディストリビューターを担う英国系グローバル自動車流通企業。メルセデスはかつてPT Mercedes-Benz Distribution Indonesiaが担っていましたが、現在はInchcapeの管轄に移管されています。
Eurokarsグループはシンガポールを本拠地とするプレミアム自動車流通グループで、インドネシアではBMW・MINI・Mazda・Porsche・Rolls-Royce・Ferrariなど複数ブランドのディストリビューターを手掛けています。
2025年のインドネシア高級車市場はBMWが販売台数2,450台で首位、Lexusが1,523台で2位、Mercedes-Benzが1,277台で3位という規模感です。台数は少ないものの、この層への顧客体験投資は他の価格帯にも影響を与えます。
このNSC・ディストリビューターとディーラーの関係性が、Technosoftが提供するDMS・NSC ERP・CDP・デジタルマーケティング連携の導入においてどう機能するか——まさにここに私たちのビジネスチャンスがあります。
日本OEM ── 電動化とSUVで真剣勝負
Toyota ── 3モデル同時投入でマルチパスウェイを体現
Toyotaは今回、ハイブリッド・BEV・ガソリンの3モデルを同時投入。「どの電動化技術も選べる」というマルチパスウェイ戦略をそのまま形にしたラインナップです。
Land Cruiser 300 Hybrid EVは、インドネシアで初のハイブリッド搭載ランクル。V6 3,500cc ツインターボ+電動モーターで、システム最高出力341 kW・最大トルク790 Nm、歴代最強の動力性能と燃費改善を両立しています。価格はRp 27.16億(日本円換算で約270万円)。インドネシアにおけるランクルの象徴的ポジションを守りながら、電動化の流れにも乗る一台です。
bZ4X Touring(BEV)は、標準モデルより140mm伸びたリアオーバーハングを持つツーリング仕様のBEV。74.69 kWhバッテリーで462〜487 kmの航続距離を確保し、150 kW急速充電で20%→80%まで28分。SUVとしての実用性を重視した、富裕層向けのEV提案です。価格はRp 8.89億。
Land Cruiser FJは、初代ランクルのデザインを現代に蘇らせた5人乗りSUV。今回は価格帯の市場調査を兼ねた展示にとどまっており、正式発売はまだ先の見込みです。
Lexus ── All-New ESでHEV/BEV両展開、プレミアムの進化を示す
LexusはGIIAS 2026でAll-New ESをインドネシア初披露。ESとしては史上最大のデザイン刷新で、初めてHEV(ハイブリッド)とBEV(電気自動車)の2グレードを同時設定しました。LexusがGIIASでセダンのフル刷新を発表するのは珍しく、プレミアムセダン市場においても電動化が不可避であることを示す一手です。さらにLexus RZ 600e F SPORT Performanceをインドネシア唯一の1台として特別展示。Steer-by-Wire(ステアリングシャフト不使用の電制ステアリング)とInteractive Manual Driveを搭載した未来志向のSUVで、会場内でも視線を集めていました。ブース内には「Sensory Concierge Room」という個室体験スペースも設けられており、量販ブランドとは一線を画す接客姿勢が印象的でした。
Honda ── 「電動ブリオ」で大衆EV市場に本格参入
Hondaの最大の注目株は「Super-One」—インドネシアでは”電動ブリオ”と呼ばれるHonda初の量販BEVです。車重わずか1,090 kgと軽量で、通常モードは47 kW/162 Nm。Boost Modeをオンにすると70 kW(95 PS)に跳ね上がり、シミュレーテッド7速シフトパドルと組み合わせてスポーティな走りも楽しめます。バッテリーは29.6 kWhで航続205 km(WLTP)、50 kW急速充電で20%→80%まで約30分です。
価格はRp 3.20億前後と予測されており、8月5日に正式発表・予約開始。初年度インドネシア割り当ては100台限定という希少性も話題になっています。BYDやWulingの低価格EVとは価格帯・訴求軸が異なりますが、「Honda初の量販EV」としての話題性は大きく、市場の反応が注目されます。
Mitsubishi Motors ── インドネシア生産・ASEAN供給のXForce Hybrid
MitsubishiのXForce Hybridは、PT Mitsubishi Motors Krama Yudhaがインドネシアで生産し、ASEAN各国へ供給するHEVモデル。インドネシアを単なる市場ではなく「生産拠点」として位置付けているという点が重要で、現地コミットメントの深さを示しています。HEVグレードはRp 4.45億で、ICEのExceed(Rp 3.88億)・Ultimate(Rp 3.99億)と合わせた3グレード展開。パノラミックルーフ・マルチアラウンドモニターを備えます。
Suzuki ── SHVS技術でXL7が静かに進化
PT Suzuki Indomobil SalesはXL7のフェイスリフトを投入。大型グリルと新デザインで外観を一新し、SHVS(Smart Hybrid Vehicle by Suzuki)技術をハイブリッドグレードに採用しました。Rp 2.743億から6グレード展開。7人乗りSUVとしてインドネシアのファミリー層に根強い人気を持つモデルが、着実に進化しています。
Daihatsu ── 16台展示、コンセプトカー3台を日本から持込み
インドネシア市場2位のDaihatsuは、GIIAS 2026で計16台を展示する大規模出展。注目はインドネシア初披露となる3つのコンセプトカーで、超小型EV「Midget X BEV」・小型HEV「K-Vision HEV」・オープンボディの軽「K-Open」をいずれも日本から直接持ち込みました。量産モデルではSigra Faceliftを正式発売し、Rocky Hybridの市場投入も発表。さらに日本国内で販売中の軽商用EV「e-Atrai」も展示し、電動化ラインナップの幅広さを訴求しました。市場シェア16%を持つ地元ブランドとしての存在感は、ブース規模でも明らかでした。
Subaru ── ASEAN初披露のAll-New Outbackでフラッグシップを刷新
PT Motor Image Indonesiaが展開するSubaruは、GIIAS 2026でインドネシアをASEAN初となるAll-New Subaru Outback(第7世代)の発売市場に選びました。価格はRp 10.25億。台数の小さいブランドがこの種の「地域初披露」を選ぶのは、インドネシアのプレミアムSUV層への本気のコミットメントを示しています。
会場には7台を展示し3台が試乗対応。Forester・Crosstrek・WRX Wagonに加え、Crosstrek All Venture Special Edition・Outback All Black Special Edition・WRX Wagon STI Cherry Blossom Special Editionという3つの限定モデルも披露されました。WRX Wagon STI Cherry Blossomは世界に1台のワンオフ仕様で、会場での話題作りを意識した演出です。スウェーデンのアウトドアブランドThuleとのコラボレーションによるルーフボックス・キャリア類の展示も行われており、「アクティブライフスタイルのSUB ARU」というブランドイメージを一貫して打ち出していました。
Nissan ── Fairlady Z投入で「スポーツブランド」として再定義
販売台数では縮小傾向にあるNissanが今回持ち込んだのが、Fairlady Z(RZ34)のインドネシア正式導入です。V6 3.0Lツインターボで400HP、価格は非公開ながら日本のスポーツカーファン層に強くアピールする一台。量販モデルのMagnite(Rp 3.0億)・Livina(Rp 3.2億)は引き続き展示されていましたが、ZをGIIASで披露することで「Nissanはスポーツカーブランドでもある」というブランドポジションの回復を図っている印象を受けました。
Mazda ── 3モデル同時投入、初のインドネシア国内生産で本気を示す

Eurokarsグループが販売を担うMazdaは、GIIAS 2026で一気に3モデルを投入するという積極策に出ました。台数では小さいブランドながら、内容の充実度はどこにも負けていません。最大の話題はMazda 6e Fastbackのインドネシア初披露。2026年ワールドカー・デザイン・オブ・ザ・イヤーを受賞したMazda初の量販BEVで、価格はRp 8.50億。プレミアムEVセグメントでLexusやBMWと並ぶ位置付けです。All-New CX-5はSport Edition(Rp 5.99億)・Kuro Edition(Rp 6.899億)の2グレード、そしてNew CX-30はMazdaとして初めてインドネシア国内でCKD生産(現地組み立て)を行うモデルとしてRp 4.99億で発売。CKD化はコスト競争力と関税優遇の両面で意味があり、「インドネシア市場に本腰を入れる」という意思表示です。ブースにはMazda Lounge・Mazda Caféも設えられており、プレミアム体験を演出する空間づくりにも力が入っていました。
Isuzu ── 商用車5モデルで「仕事の相棒」をアピール
IsuzuはAstraグループの一員として、SUVのNew mu-X・ピックアップD-Max・小型トラックTraga / ELF・大型トラックGIGAの5モデルを出展。テーマは「さまざまなビジネスシーンへの対応力」で、農業・建設・物流など業種別のユースケースを具体的に見せる展示構成でした。mu-Xと新型Tragaは試乗体験も設けており、商用車メーカーとしての実用訴求に徹した内容です。
Hino & 三菱ふそう ── 統合後初のGIIAS、「ARCHION」として新出発

商用トラック2ブランドを巡る大きな動きとして、HinoとMitsubishi Fusoは2026年4月に持株会社「ARCHION」のもとで経営統合を完了しています。今回のGIIASはその統合後初めての大型モーターショー出展にあたります。両ブランドはそれぞれ独立したブースを構えつつも、ダイムラートラック・トヨタ・日野・ふそうが一体となった新体制を背景に、電動商用車や次世代トラックの方向性を示す展示を行っていました。インドネシアは東南アジア最大の商用車市場のひとつであり、ARCHION統合後の東南アジア戦略の試金石としてのGIIAS出展という意味合いがあります。
中国系ブランド ── 価格破壊と量産体制で市場を塗り替える
今年のGIIASで最も存在感を増しているのが、中国系ブランドの本格攻勢です。インドネシアのEVシェアの約48%をBYD1社が握るという現実が示すように、もはや日系OEMへの脅威は直接的です。
BYD ── ローカル生産で価格競争力を徹底確保
BYDはM6 EV(BEV)とM6 DM(Dual Mode / PHEV)の2モデルをインドネシア国内生産で投入。ローカルアセンブリーによるコスト削減と関税優遇を最大限に活用した価格競争力が、急成長の背景です。
BYD M6 EVは58 kWhバッテリーで航続450 km、価格Rp 3.95億。0-100 km/h加速7.9秒に加え、ADAS(自動緊急ブレーキ・ブラインドスポット検知・360度カメラ等)を標準装備。この価格帯での装備水準は、日系OEMへの直接的な挑戦状です。
BYD M6 DMはDM-iスーパーハイブリッド技術によるPHEV。充電インフラが整備途上のインドネシアで、ガソリンとEVを状況に応じて使い分けられる柔軟性が評価されています。
Wuling ── Rp 1.55億という衝撃価格のAira EV
今回のGIIASで最も「破壊的」と感じたのが、WulingのAira EVです。スタンダードレンジRp 1.55億・ロングレンジRp 1.75億(日本円換算で約15〜17万円)という価格は、インドネシアのLCGC(低コスト・低排出ガス車)水準、つまり軽自動車カテゴリーに相当します。
全長3,268mmのコンパクトシティカーで、25.1 kWhバッテリーにより205 km(SR)〜301 km(LR、CLTC)の航続距離。10.1インチタッチスクリーン搭載で、1kmあたりの維持費はRp 151(約1.5円)という試算も。ジャカルタの都市部通勤層にダイレクトに刺さる価格設定です。「EVは高い」という常識を覆す製造力は、改めて驚異的だと感じました。
MG Motor ── 充実保証でZS Hybrid+の信頼性を訴求

MG ZS Hybrid+はRp 2.999億〜3.599億で展開。GIIAS期間中は先着1,000台に特別価格Rp 2.999億を設定するという積極的な販促策が目を引きました。6年/15万km車両保証、8年/16万kmのバッテリー保証という手厚い保証体制で、中国ブランドへの信頼性への不安を正面から払拭しようとしています。
Chery ── Chery Qで小型EVに参入、先行予約4,000台

Chery QはRp 2.399億からのコンパクト・アーバンEV。70リットルのフランク(前部トランク)と15.6インチタッチスクリーンを搭載し、先行予約はすでに約4,000台に達しています。WulingのAira EVより価格は高いものの、装備の充実度と都市型スタイルで差別化を図っており、若年層・都市部ファーストユーザー層を主なターゲットにしている印象です。

Technosoft Automotiveとしての視点
-ここは「見本市」ではなく「商談の場」だー
各ブースのクルマを見ながら、私はもう一つのことを観察していました。
まず気づくのは、GIIASが日本のモーターショーとは根本的に違う「場」だということです。日本では展示会で車を買う人はほぼいません。ところがインドネシアを含むASEANのモーターショーでは、各OEMのブース奥に必ず「購買ブース」が設けられており、会場限定の割引クーポンを手にその場でローン審査・頭金支払い・納車手配まで進める来場者が列をなしています。GIIASは「見本市」ではなく、NSCにとって年間最大級の「販売の場」なのです。
この構造を知ると、デジタルの問いがより鋭くなります。ブースに入ってきた来場者が購買ブースに辿り着くまでの動線—どのモデルに触れ、試乗を申し込み、スタッフと何を話したか—このプロセスデータをリアルタイムで取得できているNSCはどれほどあるか。おそらく多くの場合、購買ブースで「成約した」という結果だけが記録され、そこに至るまでの来場者行動は失われています。GIIASのような場は年間で最もリードが集中する「データの黄金週間」であるにもかかわらず、です。
そしてもうひとつ、正直に言うと圧倒されました。BYD・Chery・MG・Wuling、Hyundai・Kia、そしてベトナムのVinFast—これらのブランドの「売る気」の凄さです。
どのブースも来場者が絶えず、購買ブースには行列ができていました。価格だけの話ではありません。ブースデザイン・デジタル体験・スタッフの接客——すべてが「今日ここで決めてもらう」ことに最適化されていました。特にVinFastは「Drive Worry Free」をコンセプトに、バッテリーサブスクリプション・買取価格保証・EVエコシステムまでを一体で提案しており、「クルマを売る」というより「EVライフスタイルごと売る」戦略が際立っていました。長年この市場を支配してきた日系ブランドは接客の丁寧さと品質への信頼は本物ですが、「会場で買わせる熱量」という点では、少し差があると感じる場面がありました。
GIIASの会場を歩きながら、Leaders Summitで宣言した言葉が何度も頭をよぎりました。「Automotive RetailのAgentic Operating Layerになる」—あの宣言は理念ではなく、ここに現実として存在していました。市場が縮小する中で競争は激化し、データの流れはまだ整備されていない。
Leaders Summitで宣言し、GIIASで確信した。あとは、やるだけです。
以上、室長でした!
