IAAE 2026 (国際アフターマーケット) Expo参加報告

こんばんは。室長こと、吉島良平Microsoft MVP for Business ApplicationsMicrosoft Regional Director) です。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?もう2月も中旬ですね。1月・2月・3月は時間が経つのが特に早い気がします。気のせいでしょうか。。。この時期は多くのRFX(X=I・Q・P)をいただける時期なので、そう感じるのかもしれません。

さて、今日はIAAE(国際オートアフターマーケット|2026年2月12日‐14日)に参加する為、東京ビッグサイトに出向いてきました。なんと今年で23回目の開催とのこと。本稿は、イベント初日を振り返る内容でお届け致しますので、最後までお付き合いくださいますと幸いです!

―変わりゆくカーライフと、未来の整備現場を感じた一日

会期:2026年2月12日(木)–14日(土)/会場:東京ビッグサイト 東7・8ホール(入場は事前登録制)

今日からスタートした IAAE2026。会場の東京ビッグサイトには、多くの出展企業と参加者が集まり、アフターマーケットの“今”と“これから”が一気に広がる、まさに未来のサービス工場のような空気が漂っていました。過去最大規模という言葉は決して大げさではなく、昨年度まであった大規模ブースが中程度の規模となり、中小のブースが集中し、会場がコンパクトになったことで、入り口に立った瞬間からその熱量が伝わってくる一日となりました。

今年は過去最大規模(約368社・団体)で、アフターマーケットDX関連の出展とセミナーが拡充。国産12社の純正スキャンツール横断展示や水性塗料の測色・調色実演など、一次情報を集中的に把握できる構成でした。

なかでもまず目を引いたのは、カーディテイリングの存在感。ペイントプロテクションフィルム(PPF)をはじめ、ボディケアの領域は明らかに“次のステージ”へ。国内外から多くのブランドが出展し、まるでスキンケアの新商品を試すように、車の「美しさ維持」が当たり前になりつつある流れを強く感じました。

一方で、現場の課題にまっすぐ向き合うテクノロジーも数多く登場。AI塗装ロボットや車体スキャナー、自動調色システムなど、省力化・効率化を支えるプロダクトは“働き方を変える道具”としてすでに実用段階へ。人手不足や高齢化といった課題を、テクノロジーがそっと後押しする未来が見えてきました。

そして、電動化シフトが進む今だからこそ重要度が増しているのが整備のデジタル化。国産メーカー12社が純正スキャンツールを並べて展示するコーナーは、まさに“車のOS”を覗き込むような体験。電子制御・ADAS対応を見据えた整備の未来がリアルに感じられる場でした。大型車ゾーンも充実していて、いすゞやUDトラックスのリビルト品や商用車向け製品は、コストと信頼性を両立した選択肢として来場者の注目を集めていました。また、3Dプリンタ関連企業の出展も増え、ものづくりの可能性がさらに広がっていく期待感があります。

背景にあるのは、車を「より長く、大切に使う」という価値観の広がり。平均使用年数が13年を超える中、補修部品、リビルト、ディテイリングなど、車と長く付き合うための選択肢が一層重要になっています。省力化ツールやデジタル整備の潮流は、そうした時代の変化にしっかり応える形で加速していました。加えて、国際カンファレンスでは欧州・中国・ASEANの最新動向が共有され、グローバル視点で未来のカーライフを考えるヒントも得られる内容になっていたように思います。私もイタリア人やギリシャ人の方々と会話させていただくことがありました。

海外からも多くの企業が出展(上記右ページ)

IAAE 2026 現地レポート:ディーラー・アフターセールスDXは“現場IT”が主役

— スキャンツール、整備アプリ、予約・見積・在庫、AI調色まで“つながる現場”の全貌ー

1|序章:アフターセールスの“今”を決めるのはITだ

  • IAAE 2026は“整備・鈑金・塗装・ディテイリング”に受付・予約・見積・作業・証跡・精算・CRMを貫くITが前面化。公式の出展対象にも自動車販売流通システム/見積システムが含まれ、整備機器×データ連携の潮流が顕在化した。
  • 今年のキーワードは“省力化・可視化・証跡化”。純正スキャンツール特設(国内メーカー12社+国交省)やAI/測色・調色の実演など、感覚と経験の領域がデータドリブンへ移行する企画が目立つ

2|業界の課題:人手不足・多品種対応・EV化・顧客期待の高度化

  • 人材不足×高齢化:現場負荷増で品質のバラツキ/教育コストが課題。省力化・効率化が今年のトーンで、来場前のセミナー予約も活況との報。特集インタビューでも人手不足に直結するDX提案が並ぶ
  • 多様な車種・ADAS・EV対応:診断~校正~記録まで通しのデータハンドリングが不可欠。純正スキャンツール横断コーナーは購入方法・価格・特徴を一括把握できる“診断のハブ”として導入判断を後押し
  • 顧客期待の高度化:長期保有・中古車高騰で“確かな整備+美観維持”の要求は上昇。作業動画・トルク・測色など証跡の可視化がCS・再来店の通貨になる流れ

高度化する車体整備と、業界が向かうべき新しい秩序

BS Summitがホストしたセッションでは、車体整備が直面する課題と、その先にあるべき新しい姿について、非常に示唆に富んだ議論が交わされました。まず語られたのは、「品質の再定義」でした。従来の“美しく直す”という価値に加え、今後は 「新車時と同等の機能回復と安全性能の担保」 が求められるという視点が強調されました。各種センサーやカメラの精度を維持するための正しいエーミング、骨格部位のメーカー基準に基づいた適切な修理、そして電装・ソフトウェアの正常化。これらが組み合わさって初めて、事故修理における本当の“品質”が成立する、という考え方です。

こうした議論の背景には、とある企業の不正請求問題をきっかけに高まった、自動車ユーザーや社会からの厳しい視線があります。だからこそ BS Summitでは、透明性・公正性・信頼性を基盤とした「新しいDRP(修理ネットワーク)の秩序づくり」が重要だと繰り返し語られていました。品質と法令順守を中心に据えた仕組みこそが、これからの業界が立ち戻るべき基準になる、という強いメッセージを感じました。

次に取り上げられたのは、経営環境の改善と未来への投資です。働き方改革や利益構造の見直しは避けて通れないテーマであり、BS Summitでは「利益が残るビジネスモデル」の共有をはじめ、ニコピットレンタカーやBSサミットモールといった共同購入の仕組みによって固定費を下げる取り組みが紹介されました。また、BSエビデンスシステムのように、ITツールを活用して証跡管理や業務の透明性を高める流れも加速しています。これらは単なるコスト削減策ではなく、将来の投資余力を生み、持続可能な整備経営を支える装置として機能し始めています。

さらに、次世代経営者の育成というテーマも印象的でした。3Sサミットや LMG(若手リーダー育成構想)を中心に、人手不足・後継者不足・働き方改革という共通課題を、組織としてどう乗り越えていくかが語られました。LMGは若手経営者が互いに学び合い、実践を通じて経営スキルを高めていく場として位置づけられており、業界全体で未来のリーダーを育てていこうとする姿勢が強く感じられました。

個人的に興味深かったのは、保険会社からサービス工場への顧客紹介が減少している。車両オーナー側は、ディーラーでサービスを受けるほうが安心だと感じるようになっているが、ディーラー側も人手不足から、細かい要望に対応するスピードが鈍化し、「整備難民」が出てきている。これにより「結局のところ、ディーラーとの関係をどうつくるかが重要だ」と考える整備・サービス工場が増えている話がありました。これは、これまでの依存構造が変わりつつあることを示しています。また、日本のサービス工場の多くが OEMの車両データに十分アクセスできていないという課題も挙げられ、これをどう補完していくかは、今後の業界競争力を左右するテーマになりそうです。

総じて BS Summitのセッションは、車体整備の“高度化”というテーマを軸にしながら、品質基準、経営、業界秩序、人材育成、そして OEMデータへのアクセスまで、非常に幅広い視点で未来へのヒントが示された時間でした。業界全体が新しい地図を描こうとしている節目にいる、そんな印象を強く持ちました。

3|未来へ進むクルマ産業と、変化をともにする日本政府

― IAAE2026 経済産業省セッション(高木直樹 氏)より―

会場には静けさが漂っていましたが、その奥には確かな変化の兆しが感じられました。高木氏の講演は、その気配を一つずつ丁寧に言語化していくように進められました。映し出されるスライドは華美ではありませんでしたが、そこには、私たちが向き合うべき「自動車産業の現在」と「これから」が、非常に具体的な姿で示されていました。

世界情勢は複雑化し、多方面で揺れが生じています。とりわけ自動車産業にとって、その揺れは直接的な影響を与えます。米国の関税措置が日系メーカーに及ぼした影響をまとめたスライドは、数字の一覧に見えながらも、「国際環境の風向きが変わった」という事実を静かに示していました。自動車産業はグローバルな供給網によって支えられているため、世界の変化がそのまま産業の変化に直結します。その現実が、淡々としたスライドの裏側から力強く伝わってきました。

自動車は三万点を超える部品で構成されています。高木氏が提示したサプライチェーンの図は、その規模の大きさと複雑性を改めて認識させるものでした。日本各地に点在する中小サプライヤーが、それぞれの技術力によって一台のクルマを支えています。その姿は、まるで社会全体が相互に支え合って成り立っているかのようにも見えます。しかし、この多層構造は、変化の速度が高まるほど、強みであると同時に脆弱性にもつながります。特にEV化の進展は、その構造変化を一気に押し進めており、必要とされる部品は大きく変化し、従来の“ものづくりの当たり前”そのものが問い直されています。

このような状況の中で、GXとDXは単なる流行語ではなく、産業構造の転換を象徴する重要な概念になっています。GXは内燃機関中心の世界から電動化へ移行する大きな流れを示し、DXは設計・生産・物流・整備といった工程全体をデータでつなぎ、効率と品質を高める取り組みを指しています。高木氏の説明は、これらの変化を単なる技術革新の枠にとどめるのではなく、「産業全体を再設計する動き」として捉えている点が印象的でした。

とはいえ、このような大きな変革を企業が単独で乗り越えるのは容易ではありません。特に地方のサプライヤーや中小企業にとって、設備投資や人材育成、事業転換は大きな負担になります。そのため、講演後半で紹介された政府の支援策は非常に現実的であり、また心強い内容でもありました。GX・DX対応に向けた設備投資支援や研究開発費の補助、事業再構築を後押しする制度、大企業と中小企業の共同プロジェクトを促進する枠組み、全国に設けられた相談窓口など、これらの支援策は単なる財政措置ではありません。むしろ、変革のプロセス全体を過不足なく支えるための「産業インフラ」として機能するものだと感じられました。高木氏の語りの端々からは、「変化を企業任せにしない」という政府の姿勢が明確に伝わり、会場にいた多くの参加者に安心感を与えていたように思います。

講演の終盤では、アフターマーケットに関する見解も示されました。クルマの変化は必然的に整備の変化につながります。EVの普及が進めば整備項目は変わり、診断作業はよりソフトウェア重視へと移行し、部品流通の構造も再編されていきます。IAAE会場に見られたAI塗装ロボットやPPF市場の広がり、スキャンツールの進化を思い返すと、この指摘は実際の現場感とも深く結びついていると感じました。講演全体を通じて、日本の自動車産業が大きな転換点にあることが改めて浮き彫りになりました。同時に、その変化の中で政府と産業が協働し、次の時代へ向けて歩みを進めようとしている“未来への意思”も強く感じられました。変革期には不安がつきものですが、その不安に流されるのではなく、確かな地図を描きながら前へ進む姿勢が求められています。高木氏の講演は、その姿勢に向けた実務的で冷静な第一歩を提示する内容だったといえます。

クルマの未来は産業の未来であり、同時に私たちの暮らしの未来でもあります。だからこそ、この変化をどう受け止め、次の時代へとつなげていくのかが問われています。今回の講演は、その答えを探るための重要な示唆を与えるものでした。

4|展示製品による課題解決(ディーラーITベンダー“網羅”ガイド)

整備現場からフロント、EV・板金まで“ワークフローを丸ごとデジタルにする”流れが鮮明に。今年の IAAE2026で感じたのは「部分最適」ではなく “プロセス全体をつないでいくDX” の広がりでした。最新の出展動向からは、整備現場の省人化・精度向上を目的とした機器だけでなく、受付や予約、在庫、そして EV診断や板金・塗装に至るまで、ワークフロー全体をデータで運用するための技術が、一斉に「実用段階」に入ってきていることが確認できます。これは、出展企業数が過去最大となったという報道とも符合しており、業界全体が変革のフェーズに本気で入り始めたことの裏付けと言えるかもしれませんね。

展示会場、セミナー会場共に、出展社の皆様が本当に頑張っていらっしゃいました。とても良い雰囲気で素敵でした♪

それでは、本日見てきた各社の展示内容・参加したセミナーから読み取れるトレンドをカテゴリー別に纏めておきたいと思います。

<整備プロセスのデジタル化・可視化>

  • KTC|e-整備TIRE(タイヤ整備DX)
    ナンバー撮影→車種特定→適正トルク自動取得、作業記録の自動化。証跡提示で“締めた/締め忘れ”不安を解消
    効用:作業ミス防止、教育平準化、クレーム時の証跡、CS向上。
  • 純正スキャンツール特設(国内メーカー12社+国交省)
    購入方法・価格・特徴を横断把握できる“診断のハブ”。ADASやOBD検査対応の一次情報をまとめて確認可能
    効用:機器投資の最適化、工数短縮、故障解析の品質向上。
  • TCJ|THINKTOOL MasterX2/Expert
    TPMS内蔵・遠隔/AI支援・DoIP/CAN-FD等に対応。DICジャパン連携の発表も示唆。“1台集約”で入庫判定~詳細診断~証跡まで通し運用を狙う
  • MCON Japan|Instavalo / Sharebox
    高速ボディスキャンで入庫時の状態証跡、非対面鍵ボックスで受付省人化。アップセル機会の可視化にも寄与
  • オートバックスデジタルイニシアチブ(ABDi)
    PitLog(作業動画)/AXCS(セキュア回線)/Owleye(動態)/リテールメディア。多店舗運営の標準化×販促データ駆動を実装する提案

<受付・予約・見積・DMS/在庫のフロント~バック統合>

  • ヤマウチ|totoco『とっとこ』(予約・工程・代車・LINE)
    予約一元化→工程ガント/配車→通知までの“面管理”。出展者プレゼンで10周年の進化を解説!
  • プレミアソフトプランナー|GATCH
    販売~整備~顧客を一気通貫。工程管理GPM(新)で入庫スケジュール/進捗/実績を可視化。MA(Marketing Cloud)も提供
  • プラス|車検プラス
    フロント/工場/接客の3画面がリアル連動。IT導入補助金対象で、短時間車検~預かり車検のSOP化を推進(成功事例・最新Ver.発表)
  • エムエスピー販売|Web継続システム
    OSS・IC車検証・OBD対応の継続検査ワークフローをクラウドで構築。QR読取→記録簿/保適証→OSS申請まで一貫化し監査/BCPにも寄与
  • TecAlliance Japan
    TecDoc/TecRMI等、適合・整備情報を標準化。誤手配削減とフロントの時短に効くデータ基盤
  • レックスコム・ジャパン|partslink24
    VW・BMW/MINIほか37ブランドの公式WEB純正部品カタログ。VIN検索+価格/発注(国・ブランドにより機能差)で受発注リードタイム短縮
  • セールスワン|工具ONE(RFID/IoT)
    工具・計測器・資材の持出/返却・棚卸・校正・遊休を一元化。APIで既存台帳/DMSと連携し裏方DXを加速

<EV・バッテリー・新技術診断>

  • EV SoH診断/新カテゴリ
    Avilooなど、EVバッテリーSoH診断が具体提案へ。走行データ活用の新診断サービスも増加傾向(主催・業界報道)。EV点検メニュー、保証精算、予防整備の収益化。

<板金・塗装のAI×IT化>

  • AIカラー/測色・調色・水性塗料に関する実演。測色→調色→塗装までの実演を会場特設で展開。勘と経験の世界をデータ化し時間短縮と均質化を両立

整備プロセスの“可視化と自動化”が一気に加速

整備領域では、ミス防止・教育平準化・証跡管理の3つを軸にデジタル化が急激に進んでいます。KTCの e-整備TIREは、ナンバー撮影 → 車種特定 → 適正トルク自動取得 → 作業記録自動化という一連の流れを自動化し、「締め付けたか?」「忘れてないか?」という現場の心理的負担そのものを解消する提案。また、純正スキャンツール特設では、国内12メーカーの一次情報が横断的に確認でき、ADASや OBD検査への対応をスマートに判断できるようになっていました。これは IAAE全体で“高度化した整備への対応”が主要テーマになっていたという報道内容とも一致します。さらに TCJ、MCON Japanなどは、AI診断や高速ボディスキャン、非対面受付ボックスなど、「入庫〜納車までの流れを丸ごとデジタル管理」する提案を実装。工場の導線そのものを変え、アップセル機会の可視化まで含めた“整備プロセスDX”が具体的ソリューションとして揃い始めています。オートバックスデジタルイニシアチブも、多店舗の標準化をテーマに PitLogや安全性を担保する AXCS、販促に効くリテールメディアまでを統合し、「データが工場を回す」世界観を提示。この方向性は、IAAEで注目された省力化・効率化の流れとも完全にシンクロしていますね。

受付・予約・見積・DMS…“フロントとバックをつなぐ統合基盤”の重要性が浮上

整備 DXの一つ上のレイヤーとして、フロント業務の一元化が急速に広がっています。ヤマウチの totocoは、予約 → 工程 → 代車 → 通知をワンフローで管理し、LINE連携によるユーザー体験のスムーズさが特徴。プレミアソフトプランナーの GATCHは販売〜整備〜顧客管理の一気通貫化に加え、新しい GPMにより入庫スケジュールや実績を可視化し、MAまで内包して“店全体の動きを可視化する存在”に進化。プラスの車検プラス も、フロント/工場/接客をリアルタイム同期させ、短時間車検〜預かり車検まで SOP 化を促すなど、「店舗オペレーション全体の標準化」をテーマに進んでいます。IAAE の記事でも“整備現場の省力化技術の増加”や“業務効率の向上”が繰り返し報じられており、まさにその具体例と言えます。また、TecAlliance Japanや partslink24、工具ONEのように、裏方領域(適合・受発注・工具管理)をAPIで既存DMSと連携していく動きも加速。フロントとバックヤードが、クラウドとデータでシームレスにつながる基盤が完成しつつありますね。

EVバッテリー診断が“新カテゴリ”として本格立ち上がり

今年の IAAEで最も印象的な変化のひとつが、EVバッテリー診断の独立カテゴリ化です。Avilooなどが示した SoH(健康状態)診断は、「EV点検メニューの新収益」「保証精算の明確化」「予防整備の可視化」といった“ビジネスとしてのEV整備”を具体的に描き始めています。IAAEの記事でも EVバッテリー SoH 診断の出展が注目を集めるとして報じられており、“EV対応”が今年のキーワードであることが明確です。

板金・塗装も AI×データ化で“勘の領域”から脱却

板金・塗装のゾーンでは、AIによるカラー選定や、水性塗料の測色〜調色〜塗装を一気通貫で実演するブースが目立ちました。これは「経験と勘」に依存していたプロセスを、データとAIで時間短縮+品質均一化へと転換する試みで、IAAEの記事でも水性塗料や塗装ロボットをはじめ塗装領域のデジタル化が大きく報じられていました。

5|オートモーティブ・アフターセールスの未来図(2026–2030)

― データがつなぎ、EVが標準化し、人がアップデートされる時代へ

2026年のいま、アフターセールスの現場では、ゆっくりと、しかし確実に“流れ”が変わり始めています。整備の現場はこれまで以上にデータと向き合い、EV・ADASが日常業務の前提となり、働く人の役割そのものが見直されていこうとしています。それは単なる技術の進化ではなく、「自動車のある暮らし」を根本から再編する大きな動きです。ここでは、2030年までのアフターセールスにおいて何が“当たり前”になるのか、その核心を3つの視点から描いてみたいと思います。

すべてがつながるアフターサービス

受付から次回提案まで、データがひとつのストーリーをつくる。これからの整備は、ひとつの作業で完結しません。「受付 」→ 「見積 」→ 「作業 」→ 「検査 」→ 「引渡し 」→ 「次回提案」この一連の流れは、車両IDを軸にした“ひとつづきのデータ”として記録されていきます。特に、スキャンデータ・作業画像・トルク値などの作業証跡は、単なる作業記録ではなく、顧客との信頼をつくる「通貨」のような役割を担うようになります。これは、アフターセールスを「安心を可視化する産業」へ変えていく大きな流れです。 お客様は「見えない不安」を手放し、事業者は「確実性」を共有できる。整備という“職人技の領域”は、データによって再現可能な品質へと近づきます。

EVとADASが当たり前の仕事になる

純正スキャンの選定力と校正精度が競争力の中心へ。数年前まで“特殊作業”だった EVとADASの整備は、2026年のいま、すでに日常業務の中心に入りつつあります。IAAE2026でも、スキャンツールの特設コーナーには国内メーカー12社が集まり、整備業務の高度化を象徴していました。 この流れが加速すると、次の3つが競争軸になります。 「“どの純正スキャンをどう組み合わせるか”という選定力」「ADAS校正を標準化し、ばらつきをなくす品質管理力」「品質をKPIとして定義し、SLA(サービス品質基準)として言語化できる力」整備の“目に見えない精度”が、数値として比較できる時代に変わっていきます。
つまり整備工場は「ソフトウェアと物理を同時に扱う専門サービス業」へと進化していくはずです。

人材の再設計が始まる

AIと教育DXが、“できる現場”を普通にしていく。IAAE2026でもっとも共通して語られていたテーマのひとつが、「省力化」と「定着」です。 整備・受付・見積といった日々の判断は、AI のサポートによって標準化され、ムラが減り、“人の経験差”が損益を左右しにくい働き方に変わろうとしています。具体的には、「作業の段取りをAIが提示する」「異常値や不具合兆候をAIが先に気づく」「教育・育成は動画やデジタル教材で高速に反復できる」といった流れが自然になります。これは、人手不足を補うための対症療法ではなく、「少人数でも高い品質を維持できる組織をつくる」ための根本的な仕組みづくりです。教育が標準化されることで、「粗利率の改善」「作業時間の最適化」「クレーム減少」など、経営の指標に直結するDXが進んでいくでしょう。

2030年、アフターセールスはどんな景色になっているか。それは、「整備の品質」が個人の腕前ではなく、「データ」 ×「道具」 ×「 チーム」で作り上げるものになる世界です。そこでは、データは信頼の証拠となり、EVとADASは特殊ではなく日常のメニューになり、人は“道具の拡張”を活かす側としてアップデートされます。つまりアフターセールスは、「人手でがんばる産業」から「仕組みで成果を出す産業」へ静かに、しかし確実に移行していくのです。DX365Lifeの視点で言えばそれは、“整備業がもっとスマートで、持続的で、働く人の生活まで豊かにする未来”の始まりでもあります。

6|改めて考えるTechnosoft Automotiveのコアコンピテンシーと今後の展望

― インポーターディストリビューター&ディーラー運営を“点”ではなく“面”で支える統合力ー

IAAE2026から感じた今後の業界トレンドを元に、弊社の立ち位置を改めて考えてみます。

Technosoft Automotive の強みは、新車・中古車販売・整備・部品・E-Commerce・財務・管理会計/固定資産管理・CRM/マーケティング・データの可視化・分析までを Microsoft Dynamics 365と Azureを基盤に統合し、ディーラー運営を“点の機能”ではなく“面の仕組み”として設計できる点にあります。単一の DMS・インポーターディストリビューターシステム に留まらず、ERP/CRM/マーケティング・Agentic AI・Excel/WordなどのOffice製品との連携まで一体で扱える構造は、顧客体験と業務生産性を同時に高めるための「オペレーションOS」として機能します。

DMS・NSC(ディストリビューター側)・デジタルマーケティングを統合し、分断していたデータと業務プロセスを再設計した弊社の多くの事例は、OEM⇔Dealers⇔サービス工場における統合オペレーション現実解を提示できていると考えます。Azureのセキュリティと定期アップデート、Power Platformによるローコード拡張、将来的な Copilot/生成AI の取り込みまで見据えた“長く使える基盤”としての設計思想が評価の土台です。

<日本マイクロソフト株式会社様にて、過去開催した弊社セミナー>

日本市場においては、ローカライズ対応(法規・会計・商習慣)に注力しており、既存の会計システムや周辺サービスと API連携でつなぐ方針を明確化しています。「1にも2にも3にもローカライズ」というスタンスは、海外製ソリューションがつまずきやすい箇所を着実に解きほぐし、“使い続けられる”仕組みとしての信頼を積み上げています。

― つながる業務、測れる品質、育つ人材を“静かに強く”標準化するー

今後3年の焦点は、“点在する現場データ”をプラットフォームに収斂させ、次の来店提案まで一気通貫で活かすことが重要になるでしょう。整備履歴・診断ログ・部品在庫・請求・顧客コミュニケーションが車両IDと顧客IDで自然につながることで、「受付」→「作業」→「検査」→「引渡し」→「次回提案」までの連続性が生まれます。Dynamics 365を核にした CRM/ERP/マーケの横断活用は、そのまま 再来店率・粗利率・作業品質KPIへの反映を容易にします。

車両やサービステンプレートだけでなく、EV/ADAS時代の“証跡データ”の扱いも、差が出る領域です。バッテリー SoH、ADAS校正、診断プロトコルなど新種のデータを、KPI→SLA(サービス品質基準)へ落とし込み、現場で運用できる粒度に整えます。Azure上でのデータ管理と、Power Platformによる現場 UI の素早い作り分けは、品質の“見える化”と“回せる運用”を両立させます。必要十分な標準化を前提に、現場裁量を残す。そのバランスを取りにいきます。

同時に、現場AI(Copilot/生成AI)の“実務落とし”を粛々と進めます。点検記録の要約、異常兆候の抽出、顧客向けメッセージの自動生成、ワランティ/会計の事務負荷軽減といった、“10分×何百回”の小さな時短を積層させる設計です。これは華々しいデモ以上に、定常業務の歩留まり改善として効きます。Microsoftエコシステム上でのネイティブ連携は、導入・運用・保守の総コストを静かに下げ続けるという意味でも効率的です。

日本市場では引き続き ローカライズの深耕 が成否を分けます。既存会計や監査要件の尊重、帳票・税務・個人情報保護の厳密さ、ディーラーネットワークの多様性を前提に、“置き換える”のではなく“調和させる”統合を積み重ねます。中長期では、ディーラー/ディストリビューター/OEMを横断する共通データモデルを“協調領域”として静かに拡張し、業界全体のアップデートを底上げする基盤構築を目指していきます。日々進化して、お客様のお役に立ちたいと考えています。

7|【まとめ】変化の波を恐れず、次のアフターセールスをつくるために

IAAE2026の初日を振り返って強く感じたのは、アフターセールスの領域がいま大きな転換点にあるということでした。会場に集まった技術やソリューションは、単に新しい機材やアプリが増えたという話ではなく、「整備・鈑金・塗装・ディテイリング・フロント業務・データ連携」という、これまで別々に存在していた世界が一気に近づき、同じ方向へ歩き始めたことを示していました。

テクノロジーはときに派手に見えますが、今日の会場で目立っていたのは、むしろ“現場に寄り添う静かな革新”でした。トルク管理や動画記録、スキャンデータの統合、AI よる調色や段取り支援など、どれも「人の不安を減らし、判断の質を上げ、働きやすさを支える」ものばかり。そうした積み重ねが、結果として整備品質を守り、顧客の信頼をつくり、店舗経営を安定させる基盤になっていくのだと改めて感じました。

また、経済産業省の講演で示された産業の大きな潮流─GX・DX・国際環境・EV化─は、一見すると遠いテーマにも思えますが、実際には整備現場のあらゆる判断に直結する“地続きの話”です。産業全体が変化する中で、私たちがどの視点で、どの部分からアップデートを始めるのか。IAAEの初日は、そのヒントを多方面から示してくれた一日でした。

今日、会場で見た数々の技術や取り組みは、まだ点の集合かもしれません。しかし、それらがつながり始めたとき、アフターセールスは「人手で頑張る産業」から「仕組みで成果を出す産業」へ、静かに、しかし確実に変わっていきます。これは脅威ではなく、新しい価値をつくるためのチャンスだと思います。これからも、現場のリアリティと、技術の可能性と、産業全体の動きを丁寧につなぎながら、皆さんと一緒に次のアフターセールスを考えていければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。それでは、今日はこのくらいで。Let’s Enjoy our DX365Life!

dx365jp
  • dx365jp
  • 24年ほど、Microsoft Dynamics ERP(NAV/AX)+CRMの導入コンサルティングに従事し、日本を含む34か国において導入コンサルティングを経験してきました。グローバル環境における“プロジェクト”と“マーケティング”を生業としております。

    最近は、【CRM/MKTG(攻めのDX)⇔ ERP(守りのDX)】+【ローコード】というDX365な活動に奮闘中です。Microsoft Dynamics 365 ビジネスで地球を90周中です。#DX365 #DynamicsIoT

    Microsoftの運営する外部技術者グローバル組織「Microsoft MVP(*日本165名/世界3023名)・ Microsoftのトラスティッドアドバイザーである「Microsoft Regional Director (*日本4名/世界189名)」として、複数のITコミュニティーにて活動中。(*2022/07/06時点)

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