Dynamics365 2025 wave2_Finance

こんばんは。室長こと、吉島良平(Microsoft MVP for Business Applications| Microsoft Regional Director) です。皆さま、お元気にお過ごしでしょうか?今日は22時くらいから書き始めました。今日は洗濯をしたのですが、70分で乾くという驚きの暑さでした。東京では警報がでていましたね。熱中症にはくれぐれも気をつけてくださいね。危険な暑さが続いています。それから、気付くと、明日で8月は終わりですか。なんとまぁ、時の経つことのはやさには驚かされます。忙しすぎて、“1日は8時間くらいしかないんじゃないか⁈”そんな気さえします。
そうそう!6月にマイクロソフト様の品川オフィスで開催したセミナーでご紹介させていただいフィリピン日産様の導入事例が記事化されていますのでご紹介しておきます。
脱サイロ化の処方箋、フィリピン日産が58ディーラーを巻き込みビジネス基盤を統一
フィリピン日産は、市場トレンドの変化に対応してパーソナライズされた顧客アプローチを実現するためのビジネス基盤として、シンガポールに本社を置くTechnosoft Automotive(テクノソフトオートモーティブ)の自動車業界向けソリューション「Technosoft Automotive Solutions」(TAS)シリーズを採用した。老朽化システムの単なる更新ではなく、「ビジネス効果を創出する」という明確な目的を掲げて経営層や社内のコンセンサスを得たことがスムーズな導入につながったという。テクノソフトオートモーティブ日本法人のTechnosoft Japanが2025年6月に開催したセミナーでは、日産グループASEAN地域の情報システム業務を統括する、タイ日産自動車 ASEAN IS/IT ゼネラルマネージャーの沖野健介氏が登壇。プロジェクトを成功に導いたポイントを解説した。
私自身も、多くの事に気付かされる導入事例(ディーラーマネージメントシステム、販社の基幹システム、デジタルマーケティングシステム)でした。プロジェクトを企画される方、管理される方は是非ご覧くださいませ👉導入事例👈オートモーティブ業界でお仕事をされている方も是非に。プロが書いた文章は、言葉選びが秀逸で、流石です!
さて、先週から以下の内容について、このDx365Life Blogでご紹介してきました。多くの方々に目を通していただいているようで嬉しく思っています。
今日はDynamics 365 Financeについて、Microsoft Learnの公開情報をもとに室長の理解で解説していきたいと思います。最後までお付き合いいただけますと幸いです。
D365 Financeよ、君はどこに向かっているのかい?
~2025 Release Wave 2の新機能から読み解く未来像~
Microsoftが2025年10月から2026年3月にかけて展開する「Dynamics 365 Finance 2025 Release Wave 2」では、グローバル規模での財務運営を支えるための革新的な機能が2025年10月~2026年3月にかけて多数追加されます。ここでは、主な投資領域と新機能を通じて、Dynamics 365 Financeが目指す方向性を考察します。
Dynamics 365 Finance |AIと自動化が導く“インテリジェント・ファイナンス”の世界へ
~財務部門の未来を創る:インテリジェンス、自動化、グローバル対応の三位一体~
2025 Wave 2でMicrosoftが提示するDynamics 365 Financeの進化は、財務部門を単なる記録管理の枠を超え、企業戦略の中核へと押し上げるものだと感じました。

≪Business Performance≫
財務が導く意思決定の未来:AIとデータで加速する戦略的ファイナンス
ビジネスパフォーマンス領域では、資産管理の新モデル「Acquire to Dispose(A2D)」により、資産の取得から廃棄までのライフサイクルを一貫して管理できるようになります。さらに、Copilotによる承認ワークフローの自動化や、生成AIによるガイダンス機能が加わることで、財務分析と計画がより迅速かつ直感的に行えるようになりそうです。データ更新頻度の向上も、リアルタイムな意思決定を支える重要な要素ですからね。それでは各々見ていきましょう!
資産の取得から廃棄までのライフサイクル全体を一貫して管理できる「Acquire to Dispose(A2D)」データモデルを提供します。資産の取得、減価償却、メンテナンス、評価、廃棄といった各プロセスを統合的に扱うことで、資産管理の精度と効率が大幅に向上します。企業は、資産の使用状況やコスト傾向を詳細に分析でき、メンテナンススケジュールの最適化や投資戦略の改善が可能になります。さらに、税務管理や減価償却計算にも対応しており、財務報告の正確性とコンプライアンスを強化に繋がります。
懸念点としては、A2Dモデルの導入には、既存の資産データの整備や、部門間の業務プロセスの見直しが必要になるため、初期導入時の負荷が大きくなる可能性があります。また、すべての資産カテゴリに対して一律に適用できるとは限らず、業種や業務特性に応じたカスタマイズが求められるケースもあるでしょう。さらに、データの正確性と更新頻度がモデルの信頼性に直結するため、継続的な運用体制の構築とガバナンスの強化が不可欠ですね。
Copilotがビジネスパフォーマンス分析の中でユーザーに対して生成AIによる支援を提供します。ユーザーはアプリケーション内で質問を投げかけるだけで、CopilotがMicrosoft Learnのドキュメントを検索し、関連情報を要約して回答します。これにより、ユーザーはアプリケーションを離れることなく疑問を解決でき、ITサポートへの依存も減少します。新規ユーザーは基本的な使い方を学び、経験者は新機能を発見することができるため、学習と業務効率が同時に向上しそうです。これ、とてもいいなと思いません?
懸念点としては、Copilotが提示する情報の正確性や文脈理解が不十分な場合、誤った操作や解釈につながるリスクがあります。特に、複雑な分析ロジックや業界特有の指標に関しては、生成された説明が簡略化されすぎてしまう可能性もあるため、ユーザーによる確認や補足が必要です。また、AIによる支援に依存しすぎることで、ツールの本質的な理解が浅くなる懸念もあるため、教育コンテンツとの併用や、社内ナレッジとの連携が望ましいでしょうね。情報を完全に信用しないというマインドは各自が持ち合わせておいたほうがいいですね。
ビジネスパフォーマンス分析におけるデータ更新頻度を高めることで、よりタイムリーで正確なインサイトを提供します。一般提供時には1日2回の更新が可能となり、将来的にはさらに頻繁な更新が予定されています。インクリメンタル処理により、変更されたデータのみを効率的に更新できるため、月末処理のスピードが向上し、リアルタイムな意思決定が可能になりますね。
懸念点としては、更新頻度が高まることで、データの整合性や品質管理の重要性が一層高まる点です。頻繁な更新が行われる環境では、誤ったデータが即座に分析結果に反映されてしまうリスクがあるため、入力・連携元のデータ品質を維持するための仕組みが不可欠です。また、更新タイミングに合わせた業務プロセスの見直しや、ユーザーへの通知・反映ルールの整備も求められるでしょう。
予算策定や承認プロセスにおけるワークフロー管理をCopilotによって自動化・最適化するものです。Copilotは、ワークフローの作成・管理をステップバbyステップでガイドし、ユーザーが複雑な設定を理解しやすくします。さらに、リアルタイム通知やリマインダーにより承認の遅延を防ぎ、業務の停滞を回避します。Copilotは、組織の目標に沿ったワークフロー設計を支援する推奨事項も提示し、戦略的な業務遂行を可能にすることができるかもしれませんね。
懸念点としては、Copilotによる自動化が進むことで、承認ルールや責任範囲の曖昧化が起こる可能性があります。特に、例外対応や特殊な承認ルートが必要な場合には、AIの提案が組織の実態と合わないこともあるため、最終的な人間によるレビューが不可欠です。また、承認履歴の記録や変更のトレーサビリティを確保するためには、ガバナンスと監査対応の仕組みを併せて整備する必要があります。
財務部門が単なる記録管理から脱却し、企業の意思決定を支える戦略的な役割へと進化することがターゲットなのでしょう。資産管理の新モデルA2Dにより、資産の取得から廃棄までのプロセスが一元化され、Copilotによる承認ワークフローの自動化が業務効率を高めます。また、生成AIによるガイダンス機能とデータ更新頻度の向上により、リアルタイムでの分析と計画が可能となり、財務部門が経営の羅針盤として機能する未来が描かれているように感じました。Dynamics 365 Financeも、Copilot Everywhere!
≪Core Financials≫
柔軟性と自動化で進化する財務基盤:複雑性を乗り越える新しい標準
主要な財務領域では、銀行口座のライフサイクル管理や自動照合機能の強化により、日常業務の効率化が進みそうな気配です。新しいジャーナルフレームワークと会計ルールのエンジンは、複雑な会計処理を柔軟に対応できるよう設計されており、法人間での外貨再評価や固定資産の分割・移転といった高度な処理も可能になるようです。これにより、財務部門はより戦略的な役割を担うことができるはずです。
銀行取引の自動照合結果を事前にプレビューできるようにすることで、照合の精度を高め、例外処理を効率化します。ユーザーは照合ルールを選択し、投稿前に手動で確認することができ、照合結果に含まれる例外をレビューする専用画面も用意されています。これにより、照合ミスのリスクを減らし、正確な財務記録が可能になります。
ただし懸念点としては、照合ルールの設定が複雑な場合、プレビュー画面での判断に時間がかかる可能性がある点です。特に、例外が多発する環境では、手動確認の負荷が増加することも考えられます。また、照合結果のプレビューに依存しすぎると、照合ルールそのものの見直しが後回しになる恐れもあるため、ルール設計と運用の両面での継続的な改善が求められていくはず。
これまでの銀行口座管理では、開設・変更・閉鎖といった各プロセスが分断されており、情報の更新や承認の履歴が一元的に管理されていないケースが多く見られました。特に、署名者の変更や口座情報の修正に関しては、手動での対応が中心で、監査対応や内部統制の観点で課題が残っていました。今回の機能強化により、銀行口座のライフサイクル全体を一貫して管理できるようになり、開設から変更、閉鎖までの各ステップに承認ワークフローが組み込まれました。これにより、口座情報の変更には適切な承認が必要となり、変更履歴や署名者情報も自動的に記録されるため、監査対応力が大幅に向上します。財務部門や経理部門は、口座の状態をリアルタイムで把握できるようになり、業務の透明性と正確性が高まります。
懸念点としては、承認ワークフローの設計が複雑すぎると、口座変更のスピードが落ちる可能性があります。特に、緊急対応が求められる場面では、承認の遅延が業務に影響を与えることも考えられます。また、署名者情報の管理においては、役職変更や退職などの人事異動に迅速に対応できる体制が必要であり、組織内の連携が鍵となります。さらに、口座情報の変更が他の財務システムに与える影響についても、事前に検証しておくことが望ましいでしょう。
この機能は、補助簿と総勘定元帳の照合をリアルタイムで行うエージェントを導入し、照合プロセスを自動化します。Copilotが差異を検出し、解決策を提案・実行することで、期末処理の負担を軽減し、継続的な照合状態を維持します。決算時に気付くのではなくて、リアルタイムで照合するというのがいいですよね。
これまでの勘定照合プロセスでは、補助簿と総勘定元帳の差異を手動で確認・修正する必要があり、特に月末や四半期末の決算時には膨大な作業負荷が発生していました。照合のタイミングが遅れることで、差異の原因特定が困難になり、財務報告の正確性にも影響を及ぼすケースがありました。今回導入された強化版のAccount Reconciliation Agentは、補助簿と総勘定元帳の照合をリアルタイムで自動化することで、こうした課題を大きく改善します。Copilotが差異を検出し、解決策を提案・実行することで、照合ミスのリスクを低減し、継続的な照合状態を維持できます。これにより、決算時に初めて差異に気付くのではなく、日々の業務の中で照合が行われるため、期末処理の負担が軽減され、財務の透明性と正確性が向上します。まさに「リアルタイムで照合する」という点が、業務の質を大きく変える重要な進化だと感じ、メリット感半端ないです。
懸念点としては、Copilotによる自動提案がすべての業務ルールや例外処理に対応できるとは限らず、特定の業種や複雑な取引においては人間の判断が依然として必要になる場面もあります。また、リアルタイム照合を前提とした運用に切り替えるには、既存の業務プロセスやデータ更新頻度の見直しが必要となるため、導入初期には一定の調整コストが発生する可能性があります。さらに、照合結果の履歴管理や監査対応の仕組みも併せて整備しておくことが望ましいでしょう。
これまで、顧客からの支払通知(リミッタンスアドバイス)を処理するには、手動での確認・入力が必要であり、入金データとの照合に時間がかかるだけでなく、ヒューマンエラーのリスクも高いという課題がありました。特に、複数の請求書に対する一括支払や、部分支払が含まれる場合には、照合作業が煩雑になり、債権管理の効率を損なう要因となっていました。
今回の機能強化により、Dynamics 365 Financeでは、AI処理を活用してリミッタンスアドバイスを自動で取り込み、支払データと照合できるようになりました。これにより、入金処理が迅速かつ正確に行えるようになり、債権管理の効率化が実現されます。キャッシュフローの可視性も向上し、財務部門はリアルタイムで資金状況を把握できるようになります。特に、取引量の多い企業にとっては、業務負荷の軽減と資金管理の精度向上に大きく貢献する機能なので、社内でも使いたいですw
懸念点としては、リミッタンスアドバイスのフォーマットが顧客ごとに異なる場合、AIによる読み取り精度にばらつきが生じる可能性があります。また、照合ルールの設定が不十分だと、誤った請求書とのマッチングが発生するリスクもあるため、初期導入時にはルール設計とテストが重要です。さらに、AIによる自動処理に依存しすぎると、例外処理や特殊ケースへの対応力が弱まる可能性もあるため、人的レビューとのバランスを取った運用が求められますね。コンサルタントはしっかりとここを理解してお客様先へ訪問しましょう!
複数の法人にまたがる買掛金・売掛金の外貨再評価を一括で実行できる機能です。従来は法人ごとに個別処理が必要でしたが、中央管理により時間と労力を大幅に削減できます。外貨建ての買掛金(AP)や売掛金(AR)を再評価する際は、法人ごとに個別処理を行う必要がありました。これは、複数の法人を持つ企業にとって、手作業による処理の煩雑さ、為替レートの一貫性の欠如、月末・四半期末の締め処理遅延、財務報告の整合性リスク等の課題を生んでいました。今回の機能拡張で複数の法人にまたがる外貨建て債権・債務を一括で再評価できるようになりました。中央管理された為替レートの適用(企業全体で統一された為替レートを使用することで、評価差額の整合性を確保)、一括処理の自動化(複数法人のAP・ARを対象に、再評価仕訳を自動生成)、仕訳のトレーサビリティ(各法人ごとの評価差額が明確に記録され、監査対応も容易)、Copilotとの連携(再評価の対象選定や仕訳のレビューをAIが支援し、業務効率をさらに向上)等の拡張があります。
懸念点としては、中央管理された為替レートがすべての法人の業務実態に適合するとは限らず、地域ごとの規制や会計方針との整合性を慎重に確認する必要があります。また、一括処理による自動化が進むことで、個別の例外処理や特殊な取引への対応が難しくなる可能性もあるため、柔軟な設定と人間によるレビュー体制の併用が求められます。さらに、Copilotによる提案がブラックボックス化しないよう、意思決定の根拠を可視化する仕組みも重要ですね。経理部門、がんばれ!
これまでのジャーナル(仕訳帳)作成では、元帳勘定のみを対象とした仕訳を作成する場合でも、標準のジャーナルテンプレートを使用する必要があり、不要なフィールドや設定が含まれてしまうことがありました。また、複数法人にまたがる取引を一つのジャーナルで処理することが難しく、法人ごとに個別のジャーナルを作成・管理する必要があり、業務の煩雑さと非効率性が課題となっていました。今回の新しいジャーナルフレームワークの導入により、元帳勘定のみを対象としたジャーナルを簡潔に作成できるようになりました。これにより、不要な項目を省いたシンプルな入力画面で、勘定科目ベースの仕訳を効率的に登録できるようになります。さらに、複数法人にまたがる取引を一つのジャーナルで処理できるため、グループ企業間の取引や共通費用の配賦などにおいて、生産性と柔軟性が大幅に向上します。ジャーナルの一括作成や承認ワークフローとの連携も可能となり、財務業務の標準化と自動化が進みます。
一方で、懸念点としては、複数法人をまたぐジャーナル処理において、各法人の会計方針や税務要件との整合性を確保する必要があります。特に、通貨・税区分・会計期間の違いがある場合には、ジャーナルの設計とレビューに慎重さが求められます。また、新しいフレームワークの導入に伴い、既存の業務プロセスやユーザー教育の見直しも必要となるため、初期導入時には十分なトレーニングとガイドライン整備が重要になってきます。コンサルタントの方々は、ここφ(..)メモメモしておいてください。大事です。
これまでの会計ルール設定では、ジャーナルの種類や処理内容に応じて複数のルールを個別に管理する必要があり、ルールの重複や不整合が発生しやすい環境でした。特に、複数法人や複数通貨を扱う企業では、ルールのバージョン管理や変更履歴の追跡が困難で、監査対応や業務の透明性に課題がありました。今回の新しいジャーナルフレームワークに対応した会計ルール設定機能により、投稿ルールの一元管理が可能となり、ルールの整合性と運用効率が大幅に向上します。ルールにはバージョン管理が組み込まれており、変更履歴を明確に記録できるため、監査対応力が強化されます。また、ルールの適用範囲や条件を柔軟に設定できるため、複雑な業務要件にも対応可能です。Copilotとの連携により、ルール設計の支援や最適化の提案も受けられるため、会計処理の精度と戦略性が高まります。
懸念点としては、ルールの一元管理が進むことで、誤ったルール設定が広範囲に影響を及ぼすリスクが高まる点です。特に、ルールの変更が即時反映される環境では、事前のレビューや承認プロセスが不可欠です。また、Copilotによる提案が業務実態に合わない場合もあるため、AIの支援を活用しつつ、人間による最終判断を組み合わせる運用が望まれます。さらに、ルールの複雑化により、ユーザー教育や運用ガイドラインの整備も重要な課題となります。
これまでの固定資産管理では、資産の一部を別の資産として分離したい場合、元資産を手動で減額し、新たな資産を別途登録する必要がありました。このプロセスは煩雑で、仕訳の整合性や減価償却の継続性を保つために多くの手作業と注意が求められ、特に資産の再配置や部分売却が頻繁に発生する企業にとっては大きな負担となっていました。今回の機能拡張により、固定資産の一部を新しい資産として分割することが可能になりました。ユーザーは取得金額を指定した割合で分割するだけで、元資産と新資産に対して自動的に調整仕訳と取得仕訳が生成されます。これにより、資産の再分類や再配置、部分売却などのシナリオに柔軟に対応でき、資産管理の精度と効率が大幅に向上します。減価償却の継続性も維持されるため、財務報告や監査対応においても安心して運用できます。
懸念点としては、分割比率の設定ミスや、分割対象の資産に関連する補助情報(例:保険、メンテナンス契約、資産グループなど)の引き継ぎに注意が必要です。また、分割後の資産が異なる会計処理や償却ポリシーを持つ場合には、適切な再設定が求められます。さらに、分割操作が頻繁に行われる環境では、資産台帳の複雑化を防ぐための運用ルールやレビュー体制の整備も重要になるということです。
これまで、固定資産を法人間で移転する際には、移転元での除却処理と移転先での新規登録をそれぞれ手動で行う必要がありました。取得原価、減価償却累計額、帳簿価額などの財務情報を正確に引き継ぐには、複数のステップと部門間の調整が必要で、業務負荷が高く、ミスのリスクも伴っていました。特に、グループ企業内で資産の再配置が頻繁に行われる場合には、処理の煩雑さが大きな課題となっていました。今回の機能拡張により、固定資産を企業間で移転するプロセスが大幅に効率化されました。取得原価、減価償却累計額、帳簿価額などの財務情報を正確に移転できるだけでなく、移転先での資産登録と移転元での除却処理が自動化されるため、業務のスピードと精度が向上します。これにより、資産のライフサイクル管理が法人をまたいで一貫して行えるため、財務報告の整合性と監査対応力も強化されます。
ただし懸念点としては、法人間で会計方針や減価償却ルールが異なる場合、移転後の資産評価や償却処理にズレが生じる可能性があります。また、税務上の取り扱いや移転価格の設定についても、国や地域によって異なる規制があるため、事前の確認と調整が不可欠です。さらに、移転処理の自動化に伴い、仕訳のトレーサビリティや承認プロセスの整備も重要となるため、運用ルールの明確化が求められます。
これまでのプロジェクト管理では、在庫品をプロジェクトに直接紐づけて使用することが難しく、資材や商品を使用する場合には、都度手動で原価計上や請求処理を行う必要がありました。その結果、原価管理が煩雑になり、収益認識のタイミングにもズレが生じることがありました。特に、製造業や建設業など、物品の使用がプロジェクト成果に直結する業種では、業務の非効率性が課題となっていました。今回の機能拡張により、プロジェクト業務において在庫品を直接使用できるようになり、見積、契約、請求処理に在庫品を組み込むことが可能となりました。これにより、在庫品の使用がプロジェクト原価に自動的に反映され、収益認識も正確に行えるようになります。資材の使用状況がリアルタイムで把握できるため、原価管理の精度が向上し、プロジェクトの収益性分析もより信頼性の高いものになります。営業部門と財務部門の連携もスムーズになり、業務全体の効率化が期待されます。
懸念材料としては、在庫品の使用がプロジェクトに紐づくことで、在庫管理とプロジェクト管理の両方に影響を与えるため、データの整合性を保つための運用ルールが重要になります。特に、在庫評価方法(例:先入先出法、移動平均法)とプロジェクト原価計上のタイミングが一致しない場合には、財務報告にズレが生じる可能性があります。また、在庫品の使用が複数プロジェクトにまたがる場合には、配賦ルールの設計にも注意が必要になってくることですね。
全体的に日々の財務業務の効率化と複雑な会計処理への対応力が強化されているように思いました。銀行口座のライフサイクル管理や自動照合機能により、運用の手間(工数)が大幅に削減されるとともに、新しいジャーナルフレームワークと会計ルールのエンジンが、複雑な取引や法的要件に柔軟に対応してくれそうです。外貨再評価の企業間対応や固定資産の分割・移転機能も加わり、グローバル企業の複雑な財務構造にも対応可能な基盤が整備されてきたと感じています。
≪Globalization Studio≫
世界210地域対応の財務運営:ノーコードで実現するグローバルコンプライアンス
Dynamics 365 Financeが提供する多国籍対応機能の広がりと、電子インボイス・税制対応・帳票管理の標準化を強調しています。特に、LATAM(アルゼンチン・ブラジル)、ヨーロッパ(ポーランド・イタリア・スウェーデン)、アジア(シンガポール・トルコ)など、地域ごとの法規制に対応する機能が網羅されています。これにより、グローバル展開を目指す企業にとって、財務運営の障壁が大きく取り除かれることになります。
ここではDynamics 365 Finance 2025 Wave 2におけるグローバリゼーション関連機能を個別に見ていきたいと思います各機能は、地域ごとの法規制対応、帳票管理、税制変更への柔軟な対応をターゲットとしているようです。戦略的なGlocalアプローチという事ができるでしょう。
Dynamics 365 Financeは、アルゼンチン向けに税務・帳票・電子インボイス対応を含むローカライゼーションを拡充しました。国家・州政府向けの申告レポート(VAT、SICORE*、SIFERE**、SIRCAR***など)や、ARBA(ブエノスアイレス州)対応の帳票出力機能が含まれ、企業の税務コンプライアンスを支援してくれます。いつか導入を手掛けてみたい国の一つです。
*SICORE(Sistema de Control de Retenciones)は、アルゼンチンの歳入庁(AFIP)が提供する、主に所得税と付加価値税に関する源泉徴収の管理システムです。
**SIFERE(Sistema Federal de Recaudación)は、アルゼンチンの州税(特にIngresos Brutos:売上税)に関する申告・納税を統合管理するための連邦レベルのシステムです。企業が複数の州で事業を行っている場合、それぞれの州に対して個別に申告する必要がありましたが、SIFEREを使うことで一括申告が可能になります。
***SIRCAR(Sistema de Recaudación y Control de Agentes de Retención)は、州政府が指定する源泉徴収代理人(Agentes de Retención)による税の徴収と報告を管理するためのシステムです。主に売上税(Ingresos Brutos)に関連し、企業が取引先に対して税を源泉徴収し、その情報を州政府に報告する際に使用されます。
****ARBA(Agencia de Recaudación de la Provincia de Buenos Aires)は、アルゼンチン・ブエノスアイレス州の税務当局です。州内の税金の徴収・管理・監査を担う機関であり、企業や個人に対して様々な税務サービスを提供しています。
ポーランドの支払条件レポートに一般仕訳の決済情報を含めることで、より正確な支払状況の把握が可能になると書いてあったのですが、何故今までなかったのか?こっちのほうが気になりました。
ポーランドのKSeF(国家電子インボイスシステム)に準拠した電子インボイス機能が提供されます。Dynamics 365 Financeは、Azure Key Vaultを活用してセキュアな通信を実現し、XML形式での請求書送信・受信を可能にしています。
トルコ向けのローカライゼーションでは、CBRT*為替レートの取り込み、連番管理、電子インボイス、E-Ledger生成など、現地税制に対応した機能が提供されます。当社のトルコ拠点でも喜びの声が上がっていました。
*Central Bank of the Republic of Turkey(トルコ共和国中央銀行)の略称です。
シンガポールの「InvoiceNow」インフラに対応したPEPPOL形式の電子インボイス送信機能が追加され、GST登録企業の法令遵守対応ができます。とても重要な改善です。
2025年以降義務化されるJPK_KR_PD形式に対応したポーランド向け年次税務報告機能が追加され、XML形式での提出が可能になります。先日ポーランド人の知人と話をしていたときにもこの話がありました。
ブラジルの税制改革に対応するため、CBS・IBS・ISの新税に関するフィールドや検証ルールが電子インボイスに組み込まれます。
ブラジルのCBS*・IBS**・IS***など新税制に対応した電子インボイスレイアウトが導入され、XMLスキーマの更新や新しい検証ルールが適用されます。
*CBS(Contribuição sobre Bens e Serviços)連邦政府が管理する新しい付加価値税で、現在のPIS(社会統合プログラム)とCofins(社会保障財源)を統合する形で導入されます。企業が販売する商品やサービスに対して課税され、全国共通のルールで運用されるため、税務処理の簡素化と透明性向上が期待されています。
**IBS(Imposto sobre Bens e Serviços)州および市町村が管理する付加価値税で、ICMS(州税)とISS(サービス税)を統合する形で導入されます。CBSと同様に、全国統一のルールで運用されるため、地方税の複雑さを解消し、企業の生産性向上に寄与します。
***IS(Imposto Seletivo)健康や環境に悪影響を与える製品に対して課される選択的消費税です。たとえば、タバコやアルコールなどが対象となり、消費抑制を目的としています。これは、社会的・環境的な政策目的を持つ税として設計されています。
イタリアのFiscal JournalをPDF形式で印刷できる機能が追加され、法定帳票の電子化と保存が容易になるはず!
Dynamics 365 Finance内で「Print the Italian Fiscal Journal as a PDF」機能が標準で提供されるようになり、法定帳票の出力がシステム内で完結できるようになりました。これにより、帳票の一貫性と信頼性が向上し、税務監査対応や提出業務が大幅に効率化されます。PDF形式での出力は、保存・共有・提出のいずれにおいても利便性が高く、特にイタリア市場における法令遵守を重視する企業にとっては、非常に有用な機能です。
ただし、Fiscal Journalの内容やフォーマットは国の税法に強く依存しており、帳票テンプレートのカスタマイズやローカル要件への適合が必要となる場合があります。また、PDF出力された帳票の保管・配布に関しては、適切なセキュリティ設定やアクセス制御が求められます。さらに、Fiscal Journalの生成に関わるデータの整合性やタイミングにも注意が必要であり、運用設計の段階で十分な検証が不可欠です。
スウェーデン向けに会計データの標準化された転送機能が追加され、税務申告や監査対応が効率化されるようです。
電子インボイスサービスとの接続に汎用コネクタを使用することで、国やサービスプロバイダーごとの接続設定を簡素化し、拡張性が向上します。
今回のアップデートにより、Dynamics 365 Financeの標準機能として、WordやExcelで作成された帳票を直接PDF形式で出力できるようになりました。これにより、外部ツールを使わずに、システム内で完結した高品質な帳票出力が可能となり、業務の一貫性と効率性が大きく向上します。請求書や支払通知書、財務報告書など、PDF形式での配布が求められる帳票においては、特に有用な機能です。また、帳票テンプレートの管理と出力がDynamics 365内で統合されることで、ワークフローの簡素化や自動化にも貢献します。
ただし、いくつかの懸念点があります。まず、既存のWordやExcelテンプレートがすべてPDF変換に対応するとは限らず、レイアウトの崩れやフォントの不一致などが発生する可能性があります。また、大量の帳票を一括でPDF変換する際には、サーバー負荷や処理時間の増加が懸念されます。さらに、PDFとして出力された帳票の配布や保存に関しては、適切なアクセス制御やセキュリティ設計が求められます。特殊な帳票レイアウトや処理ロジックが必要な場合には、引き続きカスタム開発が必要になるケースもあるでしょうね。お客様側も、ベンダー側も注意してくださいね。ここもめますよ!
これまで、Electronic Reporting(ER)においてEnum型フィールドをGroupBy集計に使用するには、いくつかの工夫が必要でした。たとえば、Enumの値を一度文字列や数値に変換してから集計処理に組み込む、あるいは事前にデータソース側で分類処理を行うなど、レポート設計が複雑化しがちでした。これにより、設計者の負担が増すだけでなく、処理パフォーマンスにも影響が出るケースがありました。今回のアップデートにより、Enum型フィールドをそのままGroupBy集計に使用できるようになったことで、レポート設計の簡素化が大きく進みます。設計者は、データ変換や補助的な処理を挟むことなく、Enumの分類項目を直接集計軸として活用できるようになります。これにより、設計ミスのリスクが減り、開発・保守の効率も向上します。また、余分な変換処理が不要になることで、集計処理のパフォーマンスも改善される可能性があります。
いくつかの注意点もあります。Enumの定義が変更された場合、レポートの集計結果に影響が出る可能性があるため、Enumの管理とレポート設計の整合性を保つことが重要です。また、複数のデータソースにまたがるEnumの扱いについては、依然として設計上の配慮が必要となる場合があります。この機能追加は、Electronic Reportingの柔軟性と実用性をさらに高めるものであり、特に業務レポートや監査用帳票など、分類集計が多用されるシナリオにおいて大きなメリットがでる可能性があります。要チェックと言えますね。
これまで、Electronic Reporting(ER)を用いて大規模なデータセットを処理する際、クエリのタイムアウト設定はシステム既定の値に依存しており、設計者が柔軟に制御することは困難でした。特に、複雑な帳票や大量データを対象とするレポートでは、タイムアウトによる処理中断が発生しやすく、業務に支障をきたすケースも少なくありませんでした。そのため、パフォーマンス調整やエラーハンドリングの観点から、より細かな制御が求められていました。今回のアップデートにより、ER実行時のクエリタイムアウトを手動で設定できるようになったことで、設計者はレポートの特性やデータ量に応じて、最適なタイムアウト値を指定できるようになりました。これにより、処理の安定性が向上し、タイムアウトによる予期せぬ中断を回避できるようになります。特に、月次・年次の集計レポートや、複数のテーブルを結合するような複雑なクエリを含む帳票においては、非常に有効な機能です。
一方で、タイムアウト値の設定には慎重さも求められます。過度に長いタイムアウトを設定すると、サーバーリソースを占有し、他の処理に影響を与える可能性があります。また、根本的なクエリ設計の最適化が行われていない場合、タイムアウトの延長は一時的な対処に過ぎず、パフォーマンス改善にはつながらないこともあります。したがって、タイムアウト設定はあくまで補助的な手段として活用し、並行してクエリの見直しやデータモデルの整理を進めることが重要で、よくはまりガチなので留意してくださいね。
Intrastat報告における為替レートの適用方法を柔軟に定義できるようになり、複数VAT登録番号を持つ企業でも一貫性のある報告が可能に。欧州では必須の機能です。
これまで、各国の複雑な税制に対応するためには、Electronic Reporting(ER)や税エンジンの設定を手動で行う必要があり、特に新しい国や税区分への対応には専門知識と多くの工数が求められていました。税コード、税率、適用条件などを個別に定義し、それを帳票や取引処理に結びつける作業は、ミスのリスクも高く、運用負荷の大きな領域でした。
今回のアップデートでは、税マスターデータに基づいて税機能を自動生成できる機能が追加され、ノーコードでの税制対応が可能になりました。これにより、税コードや税グループ、適用ルールなどがマスターデータから自動的に構成され、設計者や業務担当者は複雑な設定作業を行うことなく、迅速かつ正確に税制対応を行えるようになります。特に、頻繁に税制が変更される国や、複数国にまたがる取引を扱う企業にとっては、大きな業務効率化とコンプライアンス強化につながる機能です。
一方で、マスターデータの整備が不十分な場合や、例外的な税処理が必要な業種・業態では、引き続き個別の設定や検証が求められる可能性があります。また、自動生成された設定が業務要件に完全に合致しているかどうかを確認するためのレビュー工程は、今後も重要なプロセスとして残るでしょう。
このように、税制対応の自動化は、ERPの柔軟性と拡張性をさらに高めるものであり、グローバル展開を進める企業にとっては非常に心強い進化です。発想としても非常に優れており、今後の他領域への応用も期待したいところです。
Dynamics 365 Financeがグローバル展開を支える財務プラットフォームとしての役割を強化しています。ポーランド、シンガポール、ブラジルなどの電子インボイス対応や、ExcelからPDFへの変換機能、イタリアにおけるFiscal Journalの印刷対応など、各国の法規制に迅速に対応できる機能が追加されてくるようです。さらに、TAXマスタに基づく自動税機能生成により、ノーコードでの税制対応が可能となり、グローバルコンプライアンスの実現可能性が近づいてきた印象です。
D365 Financeよ、君はどこに向かっているのかい?
Dynamics 365 Financeは、企業の財務部門が「データに基づく意思決定」「業務の自動化」「グローバル対応」を同時に実現するための、次世代のAIファイナンスプラットフォームを目指しているように感じました。単なるERPの枠を超え、企業の成長戦略を支える「財務の未来像」を体現していくのではないか、これが室長としての回答です。
次回予告:現場と営業が一つになる|Copilotが導くサプライチェーンの再定義
財務の未来を見据えた今回の特集に続き、次回は「営業」と「サプライチェーン」の融合に焦点を当てます。Dynamics 365 Supply Chain Managementがどのように営業活動を支援し、需要予測・在庫管理・納期遵守を通じて顧客体験を変革していくのか。CopilotやAIによる意思決定支援、サステナビリティ対応、そしてグローバルサプライチェーンの最適化に向けた最新機能を深掘りしていきたいと思います。どうぞお楽しみに♪
それでは、今日はこのくらいで。Let’s Enjoy our DX365Life!
