セミナ-開催報告|顧客との絆を、データとAIで再定義する — CRM革新が拓く自動車業界の未来

こんばんは。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?

“室長”こと吉島良平Microsoft MVP for Business Applications | Microsoft Regional Director)です。

明日、日本時間6月26日(金)午前8時—FIFAワールドカップ2026グループF第3節、日本代表vsスウェーデン代表のキックオフです。会場はダラス・スタジアム。第2戦でチュニジアに4-0と快勝し、勝ち点4で2位につける日本は、引き分け以上で自力でのグループステージ突破が確定します。

対するスウェーデンは1勝1敗(勝点3)。ヴィクトル・ギェケレシュ(アーセナル)、アレクサンダー・イサク(リバプール)という世界屈指の2トップを擁し、死に物狂いで勝利を狙ってきます。FIFAランキングは日本が16位、スウェーデンが36位。スウェーデンの強力2トップを冨安健洋・板倉滉・伊藤洋輝の3バックがいかに封じるか、そして伊東純也・中村敬斗のサイド攻撃がスウェーデンの守備陣をどれだけ崩せるか—眠れない前夜になりそうです。いや、意表をついて4バックだったりして?w

余談ですが、日本とスウェーデンの直接対決は実に24年ぶり。最後の対戦は2002年の日韓W杯直前で、三都主アレサンドロのクロスがオウンゴールを誘発しての1-1ドローでした。あの頃、ディーラー業界のシステム化はまだ「販売管理の電算化」レベルで、CDPなど誰も想像していなかった時代です。早いものですね。

試合、楽しみですね。勝っても、次の相手はブラジルになるみたいですね。まぁ、どうせやるなら強いチームが相手のほうでいいですもんね。テレビの前で正座して応援したいと思います!

さて、SAMURAI BLUEの決勝トーナメント進出への戦いに心を託しつつ—昨日6月24日、「Technosoft Japanとして約1年ぶりのオンラインセミナー」を開催しました。テーマは「顧客との絆を、データとAIで再定義する — CRM革新が拓く自動車業界の未来」。本日はその開催報告をお届けします。


1.セミナー開催の背景

今回のセミナー、実は準備に相当な時間をかけました。プレスリリースを4本出したこと、そしてセミナー本番のために、通常業務時間以降、深夜にコツコツと用意した5つのHTMLリファレンス。

私がTechnosoftに入って3年8ヶ月。Microsoftのビジネスアプリケーション自体は25年ほどやっていますが、オートモーティブ業界の「現場の言葉・プロセス・会計仕訳」に慣れるまでにはかなりの時間がかかりました。DMS、NSC、インポーター、ディストリビューター、PDI、フラットレート、吸収率……業界特有の用語、複雑な流通構造、国ごとに異なる商習慣—自分なりに整理してきた室長ノートが、前職時代も含め25年間で80冊を超えたのを機に、そろそろ諸々公開しとこうかということで、最近ブログ投稿数が増えているわけです。

今回のセミナーのために整備した社内向けリファレンス5点(Automotive Business Handbook・会計仕訳リファレンス・業界用語辞典・商習慣&税務/会計レフェレンス・プロダクトデモポータル)も、その延長線上にあります。「業界の共通言語をきちんと持った上でお客様とお話しする」という姿勢を、今回のセミナーでは徹底しました。

2.セミナーアジェンダ

6月24日(火)15:00〜17:00、オンラインで開催しました。ご参加の方々はOEM、インポーター・ディストリビューター、総合商社、オートモーティブ企業向けシステムコンサルティングなど、多岐にわたるバックグラウンドの方々でした。ご参加くださった皆さま、お忙しいところお時間をいただきありがとうございました。

時間 担当 セッション
15:00〜15:05 吉島 開催のご挨拶/オープニング
15:05〜15:30 吉島 会社概要・製品概要・オートモーティブ業界におけるCRM領域の課題
15:30〜15:50 市川 データがつながらない世界でお客様を理解する方法
15:50〜16:00 市川 TAS最新CRM機能のご紹介
16:00〜16:20 市川・池山 データが語る顧客インサイト — CDP活用と360度顧客ビューの実践/名寄せ
16:20〜16:30 市川・星野 攻めのデジタルマーケティング — リードナーチャリングからリテンションまでCRMで一気通貫
16:30〜16:40 河内 数字で見る成果 — Power BIダッシュボードで実現するリアルタイムKPI管理
16:40〜16:50 池山 現場が変わる帳票改革 — Word帳票レイアウト機能によるドキュメント開発
16:50〜17:00 全員 質疑応答

そして冒頭(スライド3)で、申し込み時にいただいた事前質問9件を先出ししました。「この2時間でこれに全部答えます」という宣言からスタートする構成です。

事前にいただいたご質問:
「他社と比較した貴社CRMの競争優位性」「DMSのデータを活用したCRMの活動」「LeadsやSales Activity機能の使いこなし方」「業務におけるAIの活用」「AIを活用したRepeat率向上事例」「顧客名簿の共有に消極的なディーラーへの対応策」「これからのAI時代をフォローするCRMデータベースの項目のあり方と維持管理」「販売・営業を通じたあるべき姿のデータ」「お客様の課題解決に繋がるヒント」


3.会社概要・製品概要・業界課題、そして「ちょっとした未来」

担当:吉島良平(Technosoft Group COO) | 15:05〜15:30

冒頭で重たくなるので早々にカメラをオフにしてお話ししました(笑)。Technosoftグループは今、16ロケーション11カ国・総勢300名ほど。さらにマレーシア法人の設立を実行中です。インドネシア(25%)とフィリピン(50%)ではDMSのマーケットリーダー、ベトナムでは18.3%のマーケットシェアを持ち、オーストラリア・ニュージーランド、中東、ヨーロッパにも展開しています。

我々のミッションは「業務オペレーションを効率化し、車両オーナーとOEM・ディーラー間のコミュニケーションを促進させ、お客様へ最高のおもてなし体験を提供する」こと。TASはDynamics 365(CRM+ERP)の上にオートモーティブ業界向けのソリューションを乗せているもので、カバレージはデジタルマーケティング・CDP・SFA・フィールドサービス・コールセンターまで含みます。

ディーラーが直面している5つの戦略的な問い

この3年8ヶ月で様々なお客様との提案・導入に関わる中で感じてきた課題を正直に書き出しました。所有権は誰のものか。サービスの主導権は誰が持つか。納車後の関係構築は誰がリードするか。D2Cが出てきた今OEMの役割はどう変わるか。そしてエコシステムの中でディーラーはどう生き残るか—「生き残りをかけた戦略的課題」と書きましたが、これは脅しではなく事実です。

AIに読み込ませると、以下のようなスライドを作ってくれました。キャッチフレーズが「勝負はショールームの外で決まる」—「踊る大捜査線」っぽいな、と思いながら(笑)。でも的を射ています。

もし日本でこんなデータが見れたら?

私が今回のセミナーのためにあえて「データの所有権・コンセントを完全に無視して」作ったダッシュボードをご覧いただきました。日系OEM本社が海外に33のNSCを持つ想定で、各国の販売台数・CSIスコア・パフォーマンスランキング・リコール完了率・ディーラーセールスランキング、そしてAIが売上成長シナリオ・マーケティング効率化・アフターセールス改善提案を自動で出してくる世界です。

「もしこれがOEM様の日本本社で、各国のNSCを経由せず、世界中のディーラーのデータをタイムリー見れたなら、それは結構有益な情報なのではないか?

Cadillac ANZの事例

GMのオーストラリア・ニュージーランド向けCadillacのサイト(https://shop.cadillacanz.com/au-en/)をご紹介しました。

スタイリッシュなD2CのeコマースUI/UXですが、その裏側で動いているのは我々のTAS(ブランド名YANA)のDMSです。車両の写真・価格・仕様・オプション—全てのマスターデータがTAS側に格納され、Webサイトにプッシュされています。AIチャットボットも含めて全部TASのものです。今、オーストラリア・ニュージーランドで稼働し、ヨーロッパ3カ国のプロジェクトも終わり、更にグローバルに展開が続いています。

マスターデータがきちんと作られていれば、フロントエンドはいつでも載せ替えられる。データが資産になっている状態とは、こういうことです。

バラバラ殺データ事件

ただ—その「マスターをきちんと作る」という前提が、自動車業界において最大の難所でもあります。以前このブログで書いた「マスターデータはDynamicsなスクラムだ」の話をここで持ち出しました。

例)OEM側のCRM・ERP(SCM中心)・会計、ディーラー側のDMS(新車)・DMS(アフター)・CRM(新車)・CRM(アフター)・会計—合計8つのシステムが、それぞれ独自の「主キー」で動いている。同じ顧客が「株式会社テクノソフトコンサルティング」「テクノソフトコンサルティング(株)」「テクノソフトオートモーティブ事業部」等と最大6通りの表記で別人格として存在している。

「ゴミを入れれば、ゴミが出てくる」

— Garbage In, Garbage Out —

この現実をまず直視するところから、今日のセミナー全体が始まります。2分ほどオーバーしてしまいながら(笑)、市川さんにバトンを渡しました。


4.データがつながらない世界でお客様を理解する方法

担当:市川嘉美(Principal Consultant) | 15:30〜15:50

「皆さんとは今日初めてお会いする方々だと思います」と始まった市川のセッション。1984年に自動車メーカーの情報システム子会社に入社。以来40数年間、自動車業界のシステム一筋。中国NSCへのシステム導入で約80社のロールアウトを管理し、インドDMSのOEMインターフェース開発で約20社のロールアウトも担当。2023年4月からTechnosoft Japanに参画し、日本向けローカライズをリードしています。余談として「先月、出雲大社に参拝してきました。今日のオンラインセミナーをきっかけに皆様とご縁ができれば」と話していたのが印象的でした。

第1章「CRMに限界?」— システム化の歴史を振り返る

1970年代
車両中心のシステム。生産管理・品質管理が主役。データの主語は「車」、お客様の属性・生活文脈・関係性は不要。
1980年代
販売店管理・DMSの時代。業務標準化とKPI統一が大テーマに。しかしDMSは車両・部品の受発注が中心で顧客情報はほぼ含まれず。
2000年代
CRMの時代。「車中心から人中心へ」。しかし実際のDMSの顧客データとはつながっておらず「誰が来店したのか、誰が買ったのか」には到達できず。
2010年代
MAとDMPの時代。デジタル広告最適化のツールが普及。しかしDMSとは直接つながっていないため「広告を見た人が実際に買ったのか」は依然として不明。
2020年代
CDPの時代。360度顧客ビューがキーワードに。しかし——「結局、DMSのデータをどう結びつけていくのかという問題はそのまま残っている」(市川)

「お客様のことを知りたいと言い続けて20数年。結局、誰が来店したのか、誰が買ったのか、メーカー側ではよくわからないということになります。そして最後の難敵——名寄せというラスボスに、幾度となく行く手を阻まれてきた。さて、我々の先に待ち受けているのはオアシスなのでしょうか、砂漠なのでしょうか」

第2章「メーカーとディーラーの世界観の違い」

ここが市川セッションの核心です。

メーカーが見ているもの
  • 平均的なデータからターゲットセグメントを分析
  • ブランドの世界観・イメージを重視
  • お客様の「素顔」は必ずしも必要ではない
  • 選択までの情報提供が役割
ディーラーが見ているもの
  • ご来店いただいてこそ、目の前のリアルな人
  • 来店していないお客様のデータは持ち合わせていない
  • 購入の瞬間に集中
  • ベテラン営業の「黒皮の手帳」の中に情報が眠る

「メーカーは選択までの情報提供、ディーラーは購入の瞬間に集中するため、その思いはかみ合わない。顧客データを統合する意味は何なのか、もう一度考えてみる必要があります」

第3章「なぜメーカーとディーラーの顧客データは結びつかないのか」

「DMSの顧客情報には、車に関係する人々がすべて記録されているわけではない」
セールスが行う活動の中で、家族や周りにいる車の利用者との接点データは、記録されずに捨てられてしまうケースがある。そしてその情報は、ベテラン営業担当の「黒皮の手帳」の中にアナログ情報として眠っていく。

さらに、DMSは1台イコール1人という前提で設計されているケースが多く「所有者は父・手続きは母・使うのは息子」という日本の現実に対応しきれていない。

第4章「”個”から”関係性”の時代」

データ連携が整っていない今でもできること(市川の3つの主張)
  • 主張1:見えていない人たちを可視化する — 実際の利用者、購入の決定者、受益者—DMSの顧客情報の影に隠れているこれらの方々を可視化できる仕組みを作ること。
  • 主張2:見えた人たちの関係性を把握する — 車がどういう顧客関係性の中で選ばれ、使われているのかの文脈がデータから理解できるようになれば、「データが揃えば、ここからはAIの出番」。
  • 主張3:維持するためのルールを作る — 鮮度が保たれなければ意味がない。データの鮮度を保つ役割を担う人が評価される制度が必要。

「管理するから理解する。その鍵はDMSが持っている。将来的には、AIエージェント同士が情報をやり取りして、メーカー・ディーラー・お客様の三方よしの時代が近い未来にやってくるのではないかと期待しています」


5.TAS最新CRM機能のご紹介

担当:市川嘉美(Principal Consultant) | 15:50〜16:00

「父は車の名義、手続きは母、利用するのは息子—日本では決して特殊な事例ではない」という問題提起からスタート。今回のTAS日本ローカライズアップデートのポイントは3点です。

アップデートポイント ①

「見えない家族」を可視化する
コネクション機能—家族・職場・友人・紹介者の関係性を「コネクションロール」として登録・紐付け。趣味娯楽マスターを標準で新設し、お客様同士を趣味・嗜好の観点からも結び付けられる。BtoCがメインのディーラー業務に合わせて基本画面を再設計しました。

アップデートポイント ②

日本の商習慣と法規制への対応
道路運送車両法に合わせたメンテナンスリマインダー機能を修正。「初度登録日から3年後(初回車検)・以降2年ごと(継続車検)」サイクルに対応したマスターを標準提供。ボタン一つでSales Activityへ連携できます。

アップデートポイント ③

営業現場の「手帳」をCRM統合する
コンタクトボード・日報機能でその月の活動量を店長・販売員単位で可視化。汎用抽出機能—職業・趣味・誕生日などの複合条件でターゲットリストをその場で抽出し、新たな活動計画を作成できます。

⚠️ ここでTeamsが落ちるアクシデントが発生。一時はシーンとなりましたが、復帰して次のセッションへ(笑)。

“皆さま、大変失礼致しました💦” by 市川


6.CDP活用・360度顧客ビュー・名寄せ

担当:市川嘉美(Principal Consultant) + 池山博子(Senior Functional Consultant) | 16:00〜16:20

6-1 CDP活用と360度顧客ビューの実践

ポイントとしてご覧いただいたのはCLV(顧客生涯価値)・CRV(顧客紹介価値)・CIV(顧客影響価値)の3指標。これらが顧客画面(Customer 360)でワンビュー確認できることと、活動実績が連携されて店長・担当者間で共有できることです。

活動画面のデモ
  • 6月24日をクリックして本日の予定に絞り込み
  • 小林健太さんの活動予定を開き、タイムラインに面談メモを入力
  • カテゴリ「商談」・サブカテゴリ「代替促進」で完了
  • 面談中に取れた次回アポイントを登録 → グラフに即時反映
顧客情報画面のデモ
  • 基本画面で職業・趣味・面談できる日程を確認
  • コミュニケーション画面で過去の活動と今後の予定を確認
  • 「車両と関係者」セクションで保有車両・家族・紹介者を確認
  • 販売紹介セクションで新車・中古車・サービス履歴を確認

デモの最後、小林さんとの面談中に話題に出た「ワールドカップ2026でサッカーが好きになった」という情報を、その場で基本画面の趣味欄に登録して締めました。タイムリーな話題ですね(笑)。

6-2 名寄せ機能の紹介

「顧客データの名寄せは、どこの会社でも特に重い課題になっていると存じます」という一言から始まった池山のパートです。

Step 1
重複検出ルールの設定。電話番号・メールアドレス・名前—何を「重複の判断基準」にするかを事前に自由に定義可能。
Step 2
検出 → マージの判断。「難しい漢字の藤澤さん」と「簡単な漢字の藤沢さん」が同じメールアドレスのケースを実演。マージ元は物理削除ではなく非アクティブとして裏側に保持。監査ログも残ります。
Step 3
AIによる自動統合(Customer Insights Data)。CRM・ERP・ECサイトなど複数システムにまたがるデータを集約し、顧客ごとに統合プロファイルをAIが自動生成。表記ゆれや入力ミスがあっても同一顧客をAIが自動検出・統合。目視チェック作業が不要に。

7.攻めのデジタルマーケティング

担当:市川嘉美(Principal Consultant) + 星野勁 (Senior Consultant) | 16:20〜16:30

星野が実際のCustomer Insights Journeysの紹介を担当しました。「TASとCustomer Insightsが同じ顧客情報を参照している」—これがポイントです。一般的なMAツールは別システムで動いているため、メールを開封した情報がCRMに戻ってこない。TASでは構造的にその断絶が起きません。

このお客様に「車の準備はお済みですか?」という件名でメールを送ります。目的は夏の大会・遠征シーズンに向けた長距離前点検、汚れに強いフロアマットなどのアクセサリー提案、そして現在ミニバン乗りのお客様にはSUVへの乗り換え提案。冬になれば、スキー・スノーボードが趣味のお客様にスタッドレスタイヤのキャンペーンを案内する—同じ仕組みで応用できます。

また、セグメント作成時に自然言語でコンディションを入力するとAIが条件を自動生成する機能も現在Customer Insightsの標準として備わっています。A/Bテスト機能、ヒートマップ機能も紹介しました。

「せっかくDMSに蓄積されている顧客情報を、無駄にしないでください。デジタルマーケティングという機能は今まであんまり使われていないということがないように、ぜひ活用していただきたいと思います」(星野)


8.Power BIダッシュボードでリアルタイムKPI管理

担当:河内一輝男(Techinical Consultant) | 16:30〜16:40

河内のセッションは、ほぼ全編が実際のPower BIダッシュボードの画面でした。TASで開発したPower BIテンプレートのデモです。

デモで見せたレポート群
  • 販売員ごとのリード獲得数・車種別リード数・ホット/ウォーム/コールドリードの月次推移
  • クリックするだけで他のビジュアルが連動してフィルタリングされるインタラクティブなレポート
  • アポイント・商談・テストドライブ・アフターセールスのデータ、ストア別・販売員別詳細
  • 収益データ、サービスアドバイザー・テクニカルアドバイザーのランキング
  • データ入力追跡レポート—業務ごとに、いつ・どこで・何件・誰が入力したかを追跡

「システム導入の際の効果測定、トレーニングやUATのマスタ・伝票登録の可視化、日々タイムリーに入力できているディーラーと、そうでないディーラーの特定と、必要に応じたサポート—こういった目的で使えます」(河内)

TASに入力されたデータが、世界中のどの拠点からでも日本にいながらリアルタイムで確認できる—これがPower BI × TASの組み合わせの本質です。


9.Word帳票レイアウト機能によるドキュメント開発

担当:池山博子(Senior Functional Consultant) | 16:40〜16:50

市川のTeamsトラブルで約5分押していましたが、池山が丁寧に説明してくれました。TASの日本向けローカライズ帳票は全20種。新車販売・中古車販売・アフターサービスの3領域にわたり、注文書から車検承諾書・アドバイスシートまで現場で毎日使われる書類を網羅しています。

従来の帳票開発
  • SSRSやPDFライブラリを使った開発工数が発生
  • 細かい罫線・フォント・レイアウトの調整のたびにIT部門に依頼
  • 小さな修正でもリードタイムがかかる
Wordテンプレート機能
  • TASからWordファイルをダウンロード
  • Wordの感覚でデザイン編集(プログラミング不要)
  • TASの項目とマッピング
  • アップロード → 即時反映

現場担当者が内製化できることが最大のメリット。統制が取れて入力ミスもゼロになる。高度なデザインにも対応できる。これが現場が変わるということです。


10.Q&Aセッション:9問への回答

担当:吉島良平(Technosoft Group COO) | 16:50〜17:00

最後のセッション、私が再びマイクを持ちました。事前質問9件を3つのテーマに整理してお答えしました。

テーマ①:DMSデータ × CRM活用(実務直結)

すべてはデータを起点にしたCRM運用から始まります。まずマスターをしっかり作り上げ、正しく伝票を入れていく。それができれば、DMSの車検記述・整備履歴・走行距離をトリガーに、営業担当者向けのタスクを自動生成できる。「車検3ヶ月前に営業担当のToDoリストに自動で入る」というのが典型例です。

あるべきデータ項目は:VIN・購入日・モデル・走行距離(テレマティクス)・整備履歴・家族構成・ライフイベント(免許取得・子供誕生)。これらを乗り換えスコアの基礎データとして蓄積することが、AI活用の前提になります。ただし、NSC・インポーター・ディストリビューターとして、ディーラーへのインセンティブの仕組みも再考する必要があると感じています。データを入れることの対価が見えないと、現場は動きません。

テーマ②:AI活用 × Repeat率向上

Microsoftのワンプラットフォームでデータを集める方が、AIの利活用においてかなり有利です。Dynamics 365 Copilot × Salesとして:商談メモの自動生成・次のアクション提案・顧客メール文書の自動生成・入力負荷削減 → データ品質向上の好循環。

乗り換えスコアリングフロー

車検期日 × 走行距離 × モデル年式 → 乗り換えスコア算出 → Copilotが個別オファーを起草 → 営業担当が1クリック送信 → 成約 → データ更新 → 次サイクルへ

AIエージェントがリアルタイムでオペレーションをサポートしていく時代には、月末にまとめて入力されたデータではエージェントが機能しません。何かしらのトレードオフをしながら、前半・中盤・後半で入力してもらうための施策をしっかり組み上げていく必要があります。

テーマ③:ディーラーの協力獲得 × 競争優位性

ここが一番重要で、テクノロジーだけでは解決しない領域です。データと組織の両方の設計が不可欠。

施策 内容 期待効果
データ共有インセンティブ CRMデータ入力率をKPIに組み込み、入力率の高いディーラーへリード配分を優先 自発的な入力促進
共有利益の提示 NSCが提供するAIスコア・乗り換えリストはCRMデータ入力の対価として提供 Win-Winの関係構築
同意管理の整備 顧客からの明示的同意をCRMに記録し、法的根拠を整備 ディーラーの法的リスク低減
データスチュワードの設置 データ品質を監視・是正する専任担当をNSCに置く 「押しつけ」感の払拭

「リード情報が獲得できない」

この事をよく、NSC/OEMの皆さまから、聞かされることがあります。

以下、セミナーではお話しなかった内容です。

これらは技術で解く問題ではなく、「組織変革の問題」だと感じています。

「顧客は俺のもの」という営業文化(オートモーティブ業界に限った話ではない)

データを出すと、OEM/NSCに顧客を奪われるという恐怖感がある。これはインセンティブで解決できない感情的・文化的な問題です。

「入力する時間がない」という現実(悲しい言い訳)

現場の営業は日報・商談記録・システム入力と三重苦の状態で、データ品質向上を求めるなら入力負荷を減らす設計が先、という逆転の発想も必要でしょうね。

「プライバシー・法的リスク」への不安

誰がどこまで使っていいのか不明確なまま「出せ」と言われても、現場は動けないものです。

「データを入れると自分が楽になる」という体験を先に見せする事は重要です。

市川と池山のセッションで、車検リマインダーが自動でTo-Doの活動になる機能は好例だったと思います。

「出力が先、入力は後からついてくる」という設計思想は大切です。

実は、責任の所在については、いつも悩みます。

OEM・NSCにできること
– 同意管理をCRMに標準組み込みにする
– 同意なしではデータが使えない仕組みを技術的に強制する
– ディーラーが法的リスクを負わない契約構造を作る

ディーラーにできること
– 来店時・納車時に同意取得を商談フローに組み込む
– 「なぜデータを使うのか」を顧客に説明できる言葉を持つ

本質的な問題として、日本では「誰が責任を取るか」が曖昧なまま運用されているケースが多いように思います。その結果として、ディーラーが怖くてデータを出さない、という消極性につながっているのではないでしょうか。

責任の明確化は、「データ共有の前提条件」であって、インセンティブより先に解決すべき課題なのだと思います。

最後に、弊社CRMの特長について、数名の方々から事前に質問をいただきましたので、こちらも回答させていただきました。

観点 一般CRM Technosoft Automotive Solution (TAS)
設計思想 機能を繋ぐ発想 データ・AI・業務が一体で設計
データ統合 DMS/NSCとCRMが分断。個別連携が必要 DMS / NSC / CRMが統合前提
業務プロセス テンプレートなし / 開発が必要 DMSを参照しあらゆる顧客体験を構築可能
会計連携 個別IF開発が必要 Dynamics 365 Financeと標準連携
AI活用 別製品・別実装 Copilot / Customer Insights / TAS AI 標準内包
グローバル展開 国産CRMメーカーは難しい DMS / NSC / CRMをパッケージ展開

終わりに|室長より一言

2時間、途中Teamsトラブルもありましたが(笑)、市川・池山・星野・河内というメンバーが一丸となって走り切ってくれました。裏方として、準備をサポートしてくれたメンバーにも感謝しています。

ご参加いただいた皆さまから、これだけの事前質問をいただけたこと自体が、今まさにこの業界で皆さんが向き合っているリアルな課題の重さを物語っていると思います。

「車を売る商売から、データで顧客と長期関係を築く商売へ転換しないと、ディーラーは生き残れない」

この一言を言い続けることが、私たちの役割だと思っています。スクラムは組み直すたびに強くなる。次のセミナーでまたお会いしましょう。

それでは、また次回。Let’s Enjoy our DX365Life!

dx365jp
  • dx365jp
  • 24年ほど、Microsoft Dynamics ERP(NAV/AX)+CRMの導入コンサルティングに従事し、日本を含む34か国において導入コンサルティングを経験してきました。グローバル環境における“プロジェクト”と“マーケティング”を生業としております。

    最近は、【CRM/MKTG(攻めのDX)⇔ ERP(守りのDX)】+【ローコード】というDX365な活動に奮闘中です。Microsoft Dynamics 365 ビジネスで地球を90周中です。#DX365 #DynamicsIoT

    Microsoftの運営する外部技術者グローバル組織「Microsoft MVP(*日本165名/世界3023名)・ Microsoftのトラスティッドアドバイザーである「Microsoft Regional Director (*日本4名/世界189名)」として、複数のITコミュニティーにて活動中。(*2022/07/06時点)

    プロフィールはこちら→bit.ly/Dynamics365JP