Microsoft AI Tour for Partners|Agentic AIが拓くビジネスの新次元

こんにちは! 室長こと、吉島良平(Microsoft MVP for Business Applications | Microsoft Regional Director) です。
どうも、花粉にやられたのか、喉と鼻の調子がイマイチです。皆さまは、いかがお過ごしでしょうか?花粉大丈夫ですか?
季節の変わり目で、体調を崩している方もいらっしゃるようなので、体調管理最優先でいきましょう!
昨日は六本木に行ってきました。田舎者には似合わない場所なので、実はとても苦手なエリアです。
じゃぁ、なんで六本木かというと、マイクロソフト主催のパートナー会があったからです。どうやら700名ほどの参加者があったようです。
ということで、本稿ではその内容を残しておきたいと思いますので、最後までお付き合いいただけると幸いです。
Microsoft AI Tour for Partners
2026年4月8日に東京・六本木 グランドハイアットで、【Microsoft AI Tour for Partners】に参加してきました。
Copilotの次、その先へ
Microsoft AI Tour for Partnersは、「AIは次にどこへ向かうのか」という問いに、極めて明確な方向性を示したイベントだったように思います。それは、AIを“使う”時代から、AIが“理解し、判断し、実行する”時代への移行でした。
これまでCopilotは、人の作業を支援する「賢い助手」でしたが、今回語られたのは、その次の段階─Agentic AI、つまり業務プロセスそのものの担い手としてのAIです。本イベント全体を貫くキーワードがFrontier Transformation(フロンティア組織への変革)でした。

3月に大規模に開催されたMicrosoft AI Tour Tokyoとは異なり、Microsoft AI Tour for Partnerは、パートナー限定イベントのため、Microsoft AI Tour Tokyoを、より日本のマーケットに適した内容にローカライズし、お互いの距離が近かったように感じました。
Microsoft AI Tour Tokyoでは、Zava社という架空の企業をグローバル共通のストーリーでフロンティア組織の説明を行いましたが、今回はなんと、浅野電機株式会社という、“ネタ”として非常に面白いものでした。

AgenticAIとは何か?
その前に….
最近、AIの説明に苦労することがあって、室長が纏めているものを皆さまに共有しておきます。
Agentic AI(エージェンティック AI)とは、ユーザーから与えられた「目標」に対して、AIが自律的に「計画」を立て、「実行」し、必要に応じて「修正」しながら完遂を目指すAIのあり方のことです。
従来の生成AIが「問いに答える(生成する)」のが目的だったのに対し、Agentic AIは「仕事を完遂する(行動する)」ことを目的としています。
違いは、AIの「自律性」と「行動のループ」にあります。
「生成AI(Generative AI)」vs「 Agentic AI」

Agentic AIが持つ「4つの要素」
Agentic AIは、単にチャットするだけでなく、以下のサイクルを自律的に回します。
1. 推論・計画(Reasoning & Planning):大きな目標を小さなタスクに分解する。
2. ツール利用(Tool Use):検索、メール送信、Excel操作など、外部ツールを自ら使う。
3. 記憶(Memory):過去の試行結果を覚えておき、次の行動に活かす。
4. 自己修正(Self-Correction):エラーが起きたら自分で原因を考え、やり直す。
具体的な活用イメージ
例えば、「来月の出張の手配をしておいて」と頼んだ場合
- 生成AI:出張先のホテル候補やフライト情報のリストを「作ってくれる」
- Agentic AI:カレンダーを確認し、最適な便を選び、上司に承認メールを送り、実際に予約までを「完了させる」
ビジネスの現場では、AIを「使う」段階から、AIに「任せる」段階へとシフトしているのが、このAgentic AIというトレンドです。
「自律型AI(Autonomous AI)」vs「Agentic AI」

これらの2つの単語には、背景とニュアンスに差があるように思います。
なぜ今「Agentic AI」という言葉が使われるのか?
これまでの「自律型AI」は、あらかじめ決められたルールや特定の環境下で動くものが主流でした。
対して、今注目されている「Agentic AI」には、以下のLLM特有の性質が含まれています。
- 推論の柔軟性:決まったプログラムではなく、言葉で与えられた曖昧な目標を自分で解釈し、解決策をひねり出せる。
- ツールの使いこなし:必要に応じて、自分でブラウザを立ち上げたり、APIを叩いたりして、デジタル世界を自由に行き来する。
- 対話を通じた自律性:ただ動くだけでなく、進捗を報告し、重要な局面では人間に確認を求めるような「社会的な立ち回り」ができる。
Microsoftや業界での使い分け
マイクロソフトをはじめとするIT業界では、最近はあえて「Agentic AI(またはAI Agent)」という言葉を好んで使います。
これには「Frontier Transformation」を目指す上で、以下の意図があるためです。
「丸投げ(全自動)」ではなく「協働」
「自律」と言うと人間が不要になる印象を与えますが、「エージェント」という言葉には、あくまで人間の意思を汲み取って動く「高度な代理人」という意味合いが強く、ビジネスシーンに馴染みやすいためです。
結論としてのイメージ
- 自律型AI:人間がいなくても「勝手に動くマシン」というシステム的な響き。
- Agentic AI:人間から目的を託され、自ら考えて「仕事を完遂する知能」という役割重視の響き。
Agentic AIとは、「指示待ちではなく、自ら考えてゴールまで走り抜けるニュアンス」、つまりは自走型AIですね!
「生成系AI(Generative AI)」「自律型AI(Autonomous AI)」vs「Agentic AI」

では、そろそろ現地で室長が書いたメモをベースに、纏めていきますね。
基調講演後は4トラックが用意されていたのですが、室長は以下のお部屋にこもっていました。
【Track 4: Breakout Session―Tech excellence in building AI Platforms with Microsoft】
1.Frontier Transformation
Frontier Transformationとは、AIを単なる効率化ツールとして使うのではなく、企業全体の仕事の進め方を再設計し、
Frontier Firm(最先端企業) の水準へ引き上げるための変革フレームワークです。

提示された成功フレームワークは、以下の4点に集約されていました。
- 従業員エクスペリエンスの強化
- 顧客エンゲージメントの変革
- ビジネスプロセスの再構築
- イノベーションの加速
そして、それを支える技術的アプローチとして、「仕事、人、プロセスのコンテキストをAIが理解する」「現場・開発・システムのすべてにAIを組み込む」「すべてのエージェントにガバナンスと管理を与える」というメッセージが、非常に一貫して語られていました。
2.パラダイムシフト:「動作する主体」から「理解する主体」へ
特に印象的だったのが、データとの向き合い方に関する整理です。

従来のシステムでは、AIはテーブルや数値を「構造」としては扱えても、それがビジネス上何を意味するのかは理解していませんでした。
結果として、文脈のない推論や、業務につながらないアウトプットが発生します。
これに対し、今回示された方向性は明確でした。
- データの「意味」を、人とAIで共有する
- リアルタイムなオペレーショナルアクションにつながるコンテキストを与える

AIはこれまで、人間の指示に従ってタスクをこなす「賢い助手」でした。
Agentic AIは、業務の文脈を自ら理解し、判断し、実行する「業務プロセスの担い手」へと進化したと言えるでしょう。
3.日本市場に広がる巨大なビジネス機会
今回のAI Tourでは、日本市場にフォーカスした具体的な数値が示されました。

中小・中堅企業市場
- 日本企業の99.7%を占める
- 雇用人口の70%、GDPの50%を支える
- 約350万社という顧客基盤
- FY26の市場規模は580億ドル規模
Agentic AIは、大企業だけのものではなく、人手不足や属人化といった課題を抱える中堅中小企業こそ、主戦場になるはず。
エンタープライズ市場
- すでに43%の企業がAIを活用
- 産業系AI需要は3倍に拡大
- サイバーセキュリティ関連需要は2倍
- FY26の市場規模は230億ドル
「AIを導入した」企業から、「AIに任せる」企業への移行期に入った、という印象を持ちました。
4.Work IQとCopilot Cowork
Microsoft 365 Copilotの進化として語られたのが、Work IQとCopilot Coworkです。

Work IQは、断片的なプロンプトを処理するのではなく、ユーザーの実際の仕事、過去の流れ、組織の前提条件を理解するインテリジェンスレイヤーです。

その上でCopilot Coworkは、
マルチタスクを自律的に洗い出し
「計画し」
「実行し」
「進捗を可視化する」
という、「同僚」としての振る舞いを実現します。
重要なのは、すべてがエンタープライズセキュリティとガバナンスの枠組みの中で動作する点です。
5.次世代AI基盤:Fabric IQとFoundry IQ
Agentic AIを支える中核基盤として、Microsoft Fabric IQとMicrosoft Foundry IQが明確に整理されました。

Fabric IQ(Connected Intelligence)
- 分析データ、時系列データ、地理情報データの統合
- セマンティックモデルによる意味付け
- OneLakeを中心としたデータのグラウンディング
Fabric IQは、AIの“記憶と理解”を司る基盤です。
Foundry IQ(Agent Factory)
- AIエージェントによる情報アクセスと制御
- エージェントの構築、量産、最適化
- コスト、品質、セキュリティの可視化
Foundry IQは、AIを“実務で使い続ける”ための工場とも言える存在です。
6.Dynamics 365と自然言語でつながる業務
Dynamics 365とCopilot Studioを連携させた在庫確認デモは、非常に象徴的でした。

「A0001は何個在庫がありますか?」
この質問に対し、エージェントが自律的に判断し、Dataverseの仮想エンティティを介してERPデータにアクセスし、リアルタイムに回答します。
利用可能在庫数量を拾う事が大切ですね!
これは単なるUX改善ではなく、業務システムの学習コストそのものを消滅させる変化 だと感じました。
7.Agentic Appによる自律型リスクチェック
Power Apps上で動作するAgentic Appの事例では、Agentic AIの実務適用像が非常に具体的に示されました。

- 非構造化データからの自動レコード作成
- 高額取引やPO欠落の検知
- ハイリスクベンダーの自動判定
- 問題行のハイライトと理由コメント付与
- SharePoint格納、Teams通知
- 例外発生時の人へのエスカレーション
- すべての処理はログとして記録、追跡可能

「自律」と「責任」を両立させる設計思想が強く印象に残りました。
8.産業DXの最前線:オントロジーと物理AI
製造業の事例として紹介されたのが、オントロジーと物理AIの融合です。
Fabric IQを用いたオントロジー設計により、製品ID、販売、インプレッションといったデータの関係性をAIが理解できるようになります。
これにより、「今注目されている製品は何か」といった問いに、意味のある回答が可能になります。
さらに、音声エージェントとリモートロボティクスの事例では、
操作はAI、判断は人、理由(WHY)を教えることで推論能力を獲得する。
というHuman in the Loopの進化形が示されました。TeachingからReasoningへ。

この変化は、現場DXのあり方そのものを変えていくはずですね。
9.AIエージェント時代の制御とNew Trust

AIの制御は、次のフェーズに入っています。
- プロンプトエンジニアリング
- コンテキストエンジニアリング
- ハーネスエンジニアリング
行動制約、状態管理、回復設計を前提とした精密な制御が前提です。
また、Microsoft Agent 365により、非人間(エージェント)のID、アクセス権、実行ログを一元管理する New Trust の枠組みが示されました。

AIを業務に任せるための「信頼の設計」が、ようやく現実味を帯びてきたと感じます。
パートナー企業が取るべき「次の一手」:アクションプラン
このMicrosoft AI Tour for Partnerで示されたメッセージを受け、パートナー企業は何から手を付けるべきなのでしょうか?
第1に、データの「意味」を整備することです。Microsoft Fabricを中核に、サイロ化したデータをOneLakeへ統合するだけでなく、業務コンテキスト(Work IQ)を前提としたオントロジーを定義し、AIが「理解できる状態」を作ることが出発点になります。これは単なるデータ移行ではなく、AI活用の土台作りそのものです。
第2に、ユースケース特化型PoCの実施です。全社展開を急ぐのではなく、ITサポート、調達リスクチェック、在庫確認といった具体的な業務を対象に、Copilot StudioやFoundryを活用した小さな成功体験を作ることが求められます。この段階でHuman in the Loopを組み込み、現場からのフィードバックを設計に反映させることが、次の展開速度を大きく左右します。
第3に、セキュアな全社展開基盤の確立です。Microsoft Agent 365とDefenderを軸に、エージェントのID管理、アクセス制御、実行ログをガバナンスの枠組みで統合します。PoCで作ったエージェントを“使い捨て”にせず、ハーネスによって製品レベルへと引き上げ、安心して広げられる状態を作ることが、パートナーに求められる役割になります。
おわりに:Frontier Firmへのロードマップ
今回のMicrosoft AI Tour for Partnerで示された数々のメッセージを振り返って、強く感じたのは、
私たちが立っている地点が「AI導入の入口」ではなく、“業務をAIに任せ始める直前”の地点にあるということです。
チャットが便利になった、要約が速くなった。その延長線に今回の話があるわけではありません。
Agentic AIは、ITの話である前に、仕事の設計の話でした。
どの業務を、どこまで、自律的なエージェントに任せるのか。
そのために、どんなデータの意味付けと、どんな制御を用意するのか。

Frontier Transformationとは、何か新しい技術を導入することではありません。
AIと同じ前提条件を共有した上で、仕事の構造そのものを描き直すことです。
PoCを作ること自体は、もう難しくありません。
これから問われるのは、そのPoCを事故なく、迷子にせず、業務の中に定着させられるかどうか。
その設計を語れない限り、Agentic AIは“デモ止まり”で終わります。

室長纏め|フロンティアトランスフォーメーション(FX)とは何か?
マイクロソフトが提唱する「Frontier Transformation」は、単なるIT導入や従来のDX(デジタルトランスフォーメーション)の一歩先を行く概念です。
簡単に言うと、「生成AIを単なる効率化のツールとしてではなく、組織の在り方そのものを再定義するエンジンとして活用し、停滞を打破して非連続な成長を目指す変革」を指しています。
この概念の核となる3つの柱と、従来のDXとの違いを、整理して解説しておきたいと思います。
1. Frontier Transformationの3つの柱この変革は、以下の3つの領域を統合的に進化させることを目指しています。
AI時代の新たな働き方(Work Transformation)
CopilotなどのAIを全社員が使いこなし、日常的な定型業務から解放されることで、人間がより創造的、戦略的な業務(高付加価値な仕事)に集中できる環境を構築します。
ビジネスプロセスの再構築(Process Transformation)
既存の業務フローにAIを当てはめるのではなく、「AIがある前提」でプロセスをゼロから設計し直します。例えば、顧客対応、サプライチェーン、製品開発のサイクルをAIによって劇的に短縮・高度化します。
独自のデータ資産の活用(Data & AI Infrastructure)
企業が持つ独自のデータ(自社特有の知見や顧客データ)をAIと組み合わせることで、競合他社には真似できない独自の付加価値やビジネスモデルを創出します。
2. 従来のDXとの決定的な違い「Frontier Transformation」がなぜ「フロンティア(新天地)」と呼ばれるのか、その違いは以下の通りです。

3. なぜ今、これが必要なのか?
マイクロソフトがこの概念を強く推進している背景には、「AIのコモディティ化(普及)」があります。
生成AIが誰でも使えるようになった現在、単にAIを導入するだけでは差別化要因になりません。
AIを原動力にして、組織文化や意思決定の仕組み、そしてビジネスモデルそのものを「フロンティア(未開拓の領域)」へと変革できる企業だけが、
次の時代の勝者になれるというメッセージが込められていると室長は理解しています。
Frontier Transformation(FX)とは、「AIを組織のDNAに組み込み、これまでの限界を超えた新しいビジネスの地平を切り拓くこと」と言い換えられます。
これは単なる技術的な移行ではなく、経営戦略そのもののアップデートを迫るものと言えるのではないでしょうか?
DX365Lifeでは、これからも
「現場で何が起きるのか」
「どこで躓くのか」
「それでも、どう一歩を進めるのか」
という視点から、この「次の一手」の続きを追いかけていきたいと思います。
と“前向き”な発言をしながらも、今パソコンの“前”では、Dynamicsのマルチエージェントに躓いています….ヘルプミーw

以上、室長でした。
